【感想・ネタバレ】何かのために sengoku38の告白のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

2010年9月7日五泉9時過ぎに巡視船「よなくに」が日本領海内で違法に操業している中国漁船「閔晋5179」を発見、中国漁船は航送を開始し、増速しながら巡視船「よなくに」体当たりをし、その後も巡視船の停止命令を無視した上で逃走を続け、再度、巡視船「みずき」にまでも体当たりをしてきたため、午後1時ごろ海上保安官が中国漁船に乗り込んで停船させ中国人船長を逮捕したが、処分保留のまま「無罪放免のまま釈放」された事件の証拠映像の動画をアップロードしたため、犯罪者にされてしまった、一色正春さんの本です。

当時騒がれていましたが、余りにも平和ボケをしていたその当時のわたしには、この事件がどれほどの大きな意味を持つ事件なのか少しもわかりませんでした。
少しでも知りたくて読ませていただきました。

数多くの点で大変な意味を持つ事件でした。
中国をはじめとして周辺諸国が日本の対応を見ていたことは明らか。
明らかに犯罪を犯した中国人船長を無罪放免。
命懸けで体を張って日本人を守ってくれていた海上保安官たちのこと。
日本人漁民たちの安全。
日本人の安全よりも暴挙を働いた外国人に配慮し大切にするわけのわからない対応。

尖閣諸島、北方領土、竹島等の歴史やそこで起こってきている問題について日本人がどれだけ知っているだろうか。韓国は国の子供たちに、日本海の島を、小さい頃から民族団結の証のように教えているというのに。我が国の教育はいかがなものか。

周辺国だけではなくて、自称環境保護団体シー・シェパードの日本国船に対する明白な犯罪行為の攻撃行為等々、日本は力で押せばどうにでもなると世界中から舐められまくっている日本人。

日本人が信じる日本の常識では、世界中には通用しないことに気づかなければならない。そうでなければ、今後も同様のことが続く。

大多数の日本人が侵略の真実を知らされていない。相手国が国を挙げて侵略をしてくるとすれば、こちらも国を守るという国家国民の強固な意志なしでは対抗できない。そのためにも、国民皆が真実を知って一人ひとりが考え判断し、相手に立ち向かわねばならない。
国民一人ひとりが決意した国家が困難に当たり難敵を退けた事例は、現代においてもベトナムなど枚挙にいとまがない。
日本が置かれている状況を日本人は正しく理解しなければいけない。
周りをロシア、中国、北朝鮮、韓国という国に囲まれ、それぞれの国と領土問題等を抱えている現実を、いまこそ日本人は直視しなければならない。
日本は、今、まさに四面楚歌なのである。
一番大事なことは、現実を直視して、国民一人ひとりが自身の責任で考え判断することである。情報を隠蔽したり、事実から目を逸らしたりして、問題を先送りしていては何の解決にもならないばかりか、悪い方向に向かうばかりである。

9月7日の事件が起きたときにも、周辺に約150隻もの中国漁船がおり、そのうちの約30隻が領海侵犯をしていたのである。
その中国漁民が緊急避難等を名目に一斉に尖閣諸島に上陸しだしたら、現場の海上保安庁の巡視船だけでは対処できず、結果的に縞を奪われかねない。
実際、フィリピンが領有していた南シナ海の島で中国による同様の侵略行為が行われているのだ。
中国の実効支配は開始されており、これを奪還するには武力行使しか手立てがない状況に追い込まれた。フィリピンは手をこまぬいている間に建造物が完成してしまった。
竹島や北方領土もそうだが領土問題において実効支配がいかに重要かということである。

国民が明確な方針を示すためにも国民が色々なことを知り、そして様々な意見を述べていくことが大事である。国民に真実を隠したままでは、国民が事の成否を判断しようがない。

人が大勢死んでから、「なにぶん初めてのことですから」では済まされないのである。

彼等は相手が弱いとみると、嵩にかかって攻めてくるのだ。
いじめられっ子は、反撃しないからいつまで経ってもいじめられ、そしてそれが段々とエスカレートしていくのだ。いじめられるのが嫌だったら反撃しなければならない。

現在の日本全体が下り坂を下っているように感じている人は多い。政治が悪い」「社会が悪い」と言う人もいるが、それだけではないだろう。根本的な原因は、大人がやるべきことをやってこなかったからではないだろうか。お金や目に見えるものだけではなく、それ以上に大切なものがあるということを大人が子供に教えるべきなのだと私は考える。

【ビデオを公開した意味】
一色さんが子供たちと、すべての日本国民に対しての想いを述べられています。

多くの日本人の心の中で何かが変わっていくきっかけになったと信じたい。何かを考える、きっかけになったと。

若者よ、国を頼るな、むしろ国に頼られる人間になってほしい
学生時代には大いに勉強をして、自分の視野を広げていくこと。いくら勉強しても無駄になることなどないし、悔いが残ることもない。

今の日本という国がおかしくなっていることを、なにか現状をを変えなければいけないと皆が思っているが、それが漠然としていて、暗闇の中を明るい未来をさがしながら手探りで歩いているようだ。
今、社会システムを変えなければいけない時期に来ている。それは容易なことではないが、一人ひとりが今こそ私利私欲を捨て、この国の未来のため、子供たちのために、この国のシステムを根本的に変えていかねばならない。
相当な覚悟が必要であるが、日本には日本のやり方がある。みなが自分自身で、この国を変えていくにはどうすればいいのかを考えなければいけない。
自分一人がやっても何も変わらないと思えば、そこまでである。
むしろ、自分だけでもいいと考えるならば少しは変わるかもしれない。

一色さんは、世間では私のことを英雄であると持ち上げる人もいるが、私はそんな立派な人間ではない。
むしろ、立派な人間になりたいと思って生きているただの人間である。
私たやったことに対して、立派だとか、義挙だとかいう人がいるが、私は日本国民として、ただ当り前のことをやっただけのつもりである。
自分自身のためではなく、子供たちの未来、日本という国、その他のいろいろなもののためである。
国の借金も、他国に謝り続けるのも、我々の世代で終わりにしなければいけない。
世の中を変えていかなければいけない。
それが、我々大人が次の世代に対して背負っている義務である。
自分だけがよければいいという考えは、もう捨てよう。
人間、自分のためにだけ生きるのもいいが、なにかのために生きるのはいいものである。
この本を読まれた皆さんが、明日から少しでも、そういう気持ちで生きていけば、なにかが変わるかもしれない。

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2022年08月16日

Posted by ブクログ

気持ちはよくわかる。しかし、今の日本人は考える力や機会を失っていて、一色さんの思うような議論にならなかったのだと思う。本人目線からすると、途轍もないことを告発するとしても、国民からするとたくさんある事件、スキャンダルの中のone of themなのでしょう。本書に書いてあるような思いを知らせた上で告発した方が効果的だったような気がします。
一色さんの告発には大賛同。これがなかったら、民主党のアホさ加減も露呈されなかったのだけど、これって対外的にどれだけ活用できているんだろうか?宣伝ベタな日本なのは相変わらずなのかな。
昨日の産経で安部さんがやっと公開するって出てたよな。頑張ってほしい。

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2014年02月15日

Posted by ブクログ

 2010年9月に尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件の映像を「sengoku38」としてYoutubeに流した元海上保安官の一色さんが、ビデオ流出に至るまでの経緯、葛藤などを語っています。

 公開して全く問題ない映像を突然“国家機密”とした政府、領土問題ではなく「情報管理の甘さ」「動画流出の動機」など論点をずらして報道するマスメディア、国防を語るだけで軍国主義、右翼と判断するような偏った教育など…幕末ものの本が好きでよく読んでいるのですが、当時国のために戦っていた人々は今の日本を見てどう思うのでしょう。

「組織の命令が明らかに間違っている場合、個人はどうすれば良いか」

 こちら、本書の中で著者が書いていた事ですが、絶対である組織の命令に反し安定した公務員という職、家族の未来を賭してまで、あのような勇気ある行動を取れる人がいるのかと心から驚き、尊敬しました。

 丸腰をアピールしていれば泥棒にはあわないなんてのは、きっと夢の国のおはなしかな、と。「サムライってまだ日本に存在したのか!」と嬉しい気分になりつつも、色々と考えさせられました。

 日本人なら、是非一度読んで欲しい本です。

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2012年03月01日

Posted by ブクログ

「私には「国民が知れば国益を損なう」という理屈は、国民に対する不信感や愚民感の表れのような気がする。「国民は馬鹿なので(中略)知らせる事は出来ない」自分たちを選んでくれた国民には正しい判断など出来ないと。

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2011年06月19日

Posted by ブクログ

安定した職を投げ打ってでも自分の深い思いを実行に移した彼に敬意を表したい。
世の中は金とか名誉だけではないのです。

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2011年05月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

当人の言葉で語ってくれるこの本はとても信用できる。どっかのマスコミとか専門家の客観的で信用できない話とは違う。この本でも語っているが、事件当時は情報管理にスポットが当てられていて、著者の意図とは程遠かったのだと今にして残念に思う。彼が伝えたかった事、そして各々が考えなきゃいけないことを教えてくれた。平和ボケ日本人には良い本じゃないかな。あと本書内で多く感謝の言葉を述べているのは、著者の人間性がでてて自分は好きだなぁっと。

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2011年05月08日

Posted by ブクログ

彼の手記をまとめたもの。
報道と対にして、きちんと両側から情報を集めて、この問題を考えた方が良いと僕は思う。

「喉もと過ぎれば、熱さ忘れる」では、いけない。
報道のあり方って、どうなの?と考えていきたいと思う。

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2011年04月08日

Posted by ブクログ

読んでいる途中、こわくて眠れないことがありました。
理路整然とわかりやすく読みやすく書かれた文章は心に染み入ります。同じサラリーマンとして、何のために一生懸命働いているのかとわからなくなったとき、著者の行動がものすごく理解できます。
著者は自分の欲望のために事を行ったということではなく、逆に多くのものを失っています。自分と自分の家族を犠牲にして、国民に何かを理解してほしいと願っています。また、危険にさらされながら命がけで漁をしている石垣島の人たちを思いかかれた箇所は、偽善的なところは全くなく、涙があふれます。
一読していただき、是非この国のことを考える契機にしてほしいです。

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2011年03月14日

Posted by ブクログ

まさに「外患内憂」の一言に尽きる一冊。
名もなき一海上保安官の憂国、勇気、葛藤、苦悩の記録。
多くの国民が疑問と不満と憤りを覚えた、中国漁船による尖閣諸島での違法操業に対する日本政府の対応。法治国家、主権国家であることを放棄したような政府の不可解な姿勢に対し、自らの法知識と立場を冷静に捉え、問題の本質を国民に知らせるべく勇気を振りしぼって行動している。
問題の本質からはずれた扱いをされることを懸念し、マスコミを利用せず、第三の選択としてインターネットを用い、広く世間に知らしめるという当初の目的を完遂している。

秩序を守る海上保安官として以外にも夫として、父として苦悩し、それでも正義を信じ、自分の信条を押し付ける為ではなく、国民が考えるきっかけとしての行動であることが良く伝わってきた。
これはほんの少しでも国防、外交、領土問題、または単純に尖閣諸島の違法操業に関心があれば必読の書である。
そして彼の意見に耳を傾け、それぞれが判断すべき問題である。

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2011年03月14日

Posted by ブクログ

尖閣諸島における中国漁船と海上保安庁の巡視船の衝突ビデオを投稿した元・海上保安官、「sengoku38」こと一色正春氏による告白手記である。尖閣諸島問題の話題がやや下火になったタイミングでの出版に、この問題を風化させたくないという著者の執念を感じる。

◆本書の目次
これ、わしがやったんや
中途採用で海上保安官になった
そもそも尖閣諸島とは
事件の始まりの事件
中国人船長逮捕
東シナ海ガス田の濁った海面
私が尖閣ビデオを目にした日
世界に対して面子を失った日本
侵略を開始した中国
なぜビデオが国家機密なのか
私がやらねば
ビデオ公開前夜
11月4日、実行
ビデオ公開翌日
私が行った罪証隠滅行為
私がやりました
取り調べは続く
海上保安庁から脱出
考えるということ
ハンドルネームの意味は・・・
海上保安官人生が終わった
公開の意味
終結

モノローグ形式で語られる出来事の真相は、非常に理路整然としており、日本のジュリアン・アサンジのようなキャラクターを期待すると肩透かしをくらう。しかし、その普通さが物語るのは、組織の中で普通に生きるということが、いかに難しいかということでもある。そういった意味において、本書は著者が身を呈して投げかけた組織論とも言える。

著者が主張しているのは、機密漏洩と称されたビデオが、はたして本当に国家機密なのかどうかである。その個人の問いかけに対し、組織としての回答は曖昧で、責任の所在も不明瞭な様子が描かれている。そもそも、現場の最前線にいる保安官に、「発砲した後に撃った弾を戻せというような命令が発せられると考えている人間と、撃てば英雄になれると考えている人間では、結果はおのずと見えてくるであろう。」などと思われるようでは、日本というのは「組織の体」をなしているのか、疑問を抱いてしまう。組織の原理や定型に潜む危うさは、無知を上回るものなのである。

与えられた命題を突き詰めると、「組織の命令が明らかに間違えていると思ったとき、個人はどう振る舞うべきなのか」というところに行きつく。簡単には答の出る問題ではないし、自分に置き換えても、その時になってみないと分からない。しかし、その時が訪れてしまった著者の体験は、広く共有され、議論されるべきものであるだろう。

ちなみに、著者は本書でハンドルネーム「sengoku38」の意味を、最後まで明らかにしていない。次の一手を用意しているということなのだろうか。刮目して見ていきたい。

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2011年02月18日

Posted by ブクログ

一色氏がビデオ流出するに至った経緯と彼の思いが克明に描かれている。これを読んでいると日頃から感じている日本の病んだ組織体制を改めて痛感する。省益あって国益なしではなくむしろ彼の言う通り『国益あって省益なし』でなければいけない。国家の隠蔽体質に快刀乱麻を断つ筈が(もしくは問題提起程度にしろ)、黒い影に操られたマスコミの的のズレた報道によって彼の目的は果たされず、その後震災もあってうやむやになっていることはとても残念。
Sengoku38の意味はここでも解明はされない。がっかり。

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2012年05月27日

Posted by ブクログ

sengoku38という人物に焦点が当てられ、問題の本質があまり語られることなく、この事件への社会的関心が薄らいでしまったのは問題だと思った。

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2012年04月01日

Posted by ブクログ

尖閣諸島沖にて、海上保安庁巡視船に衝突してきた中国漁船を録画したビデオを公開、波紋を呼んだ、元海上保安官、一色正春氏ご本人の記録。
公開に至った経緯や、考え、また公開後受けた取り調べが詳しく分かり、日本人として共感に値するところも多い。
この事件の、一色氏からの視点であり、他多数関係者や、政治的思想などはほとんど含まれていない。
著者はこの事件について、読者自身に考えてほしいと訴える。

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2011年06月24日

Posted by ブクログ

ニュースで見ている時には、何を考えて公開したのか、いまいちつかめていなかった。面白半分でやったのか、もっと考えていたのか。
でも、これを読むと本当に、私と同じような、一般市民の一人が、一生懸命考えて出した結論だったというのが分かってよかった。
読み物としては、文章は稚拙な部分がいっぱいあるし、掴みにくいところもあるし、これだけを読んでいて、この人が思った考えがどこまで考えすぎなのか分からない。でも、苦渋の決断だったんだというのがよくわかった。
尖閣諸島の問題について、あまり深い知識もなくマスコミの騒ぐままに見ていたけど、もっと考えなくては、と思わされた。
しかし、この人の考えすぎじゃないかは、あまりに無知なので判断は出来ない。どうなんでしょ、と思うけど、領土問題に対する意識は変わったかな。
ちょっと中盤つらかったけど、読んでよかった。

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2011年06月05日

Posted by ブクログ

■尖閣中国漁船衝突問題
1.衝突事件を起こした中国漁船の船長の逮捕容疑は、犯罪を立証しやすい漁業法等ではなく、立証が難しい「公務執行妨害」であった。こうしたことから、この事件については、当初から何らかの配慮が介入っがあったのではないかと思われる。
2.中国人は18~35歳の男性は、軍または民兵組織に属している。つまり尖閣にくる漁船員は全て民兵といっても過言ではない。
3.当初の海上保安庁には、ビデオを公開するのが当たり前だという雰囲気があった。それが、いかなる理由かはわからないが、誰かが突然に国家機密に指定したのである。
4.今回の事件は、私が政治的主張をするために起こしたものではない。ただ、あのビデオを見てひとりひとりが考えて欲しかったのである。

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2011年05月11日

Posted by ブクログ

一番知りたかった「なぜsengoku38という名前なのか」ということに触れて欲しかった。
本人は「謎」を残しておきたかったと書いてるが。

全体を通して、ビデオ公開に至るまでの葛藤が描かれている。
なかなか真意が国民、政府、メディアにわかってもらえなかったと察する。

文章が下手で、所々読みづらい。
そこは素人だからしょうがないが。

海上保安官という仕事、尖閣諸島などの領土問題についても多少知識は深まる。

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2011年05月02日

Posted by ブクログ

これも、また考えさせる本である。
尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件にて、youtubeにビデオを投稿したsengoku38さんの告白本。

官僚自身がその組織体系を「仕方ない」と思っているのなら、非常に残念。権限が、とか、激務で時間が、
とかそういう言い訳を誰が聞きたいんだろう?
なにか、本質的に、「日本の良き未来」を考えてますよ、みたいなアピールをしても良いと思うんだ。

その観点からすると、一色さんがしたことは、非常に価値のあることだと思う。

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2011年04月29日

Posted by ブクログ

尖閣諸島沖で起こった、中国漁船と海上保安庁との衝突事故。
中国漁船の船長が釈放・帰国する中、衝突事故の様子が撮影された動画が、YouTubeにアップされた。
一体、誰が、何のために。
世間を騒然とさせた張本人による告白本。


「尖閣諸島沖で、中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突した。中国側は、漁船が衝突されたと主張している」

そのニュースを初めて聞いた時、日本の人々はどう考えたのでしょうか。
私は咄嗟に、こう考えました。

「日本の海上保安庁が、故意にそんなことをするはずがない」

事故であれば別ですが、『絶対』と言っていいくらいに、そんなことをするはずがない。
我ながらあまりにも楽観的な考え方ですが、自分はそれくらい日本の海上保安庁を信頼していました。

そしてやがて、中国人船長の逮捕から保釈、帰国。
それを見ても、中国側が「日本が悪い」と主張していても、自分はどうしても「日本は悪くないのだ」という思い込みが強かったです。
確かに中国人船長がほとんど問題もなく帰国出来ていたことに、若干の疑問はありました。しかし、何か裏での協定があったのかもしれない。
何の根拠もありませんでしたが、日本の政府なら自分の有利な状況になるように情報を隠ぺいする事くらいはするんじゃないか、と思っていました。

そこに唐突に出現した、Youtubeの動画流出問題です。
自分も43分全てを見た訳ではありませんが、それでも興味深い動画でした。
でも、そこにあった「やっぱり日本は悪くなかった」という思いでした。
それは「してやったり!」という気持ちではありません。分かり切っていた状況を、動画によって裏付けられた。興味深くはあったけれど、そこまで衝撃的ではない――だって、分かっていたことなのだから。

ニュースで騒然となり、「国家機密を流した犯人は誰だ!?」という流れになる。自分はその流れに、逆らうことなく乗ってしまいました。
何故なら、「分かっていることを改めて証拠付けること」よりも、「国家機密を守り、日本の政府の信頼を守ること」のほうが重要に思えたからです。
そしてそういう認識は共通のものであると思い込んでいたが故に、『犯人は愉快犯である』という説にも頷いてしまいました。

自分のニュースの認識は、以上でした。
しかし、この本を読んで、改めて考えされられました。
当たり前だけれど、作者は自分よりもずっと、日本のことを考えている。

正直、尖閣諸島の重要性、自国領土であるという主張は、まだいまいちピンときません。
多分それは、自分が『国益』というもの自体に対して、ピンときていないからだと思います。
日本人の一人として、政府には自分の生活に制約が出来ないように政治を行ってほしい。ただ、その「制約が起きないように」という範囲には、「積極的に国益を得てほしい」という内容は含まれていません。
愛国心がない訳ではないつもりですが、そこまで主張を行うべきだ、とするほどに国益が必要だとは感じていないのかもしれません。

だが、それを巡って実際に国際問題が起きている。
武器こそ使っていないものの、ある意味、武力行使で。

もちろん、作者の主張をそのまま鵜呑みにしていい訳ではないと思います。意見の食い違いが生じた場合、両者の意見を聞くのが基本ですが、今回の場合は作者の相手が大きすぎて、一体どこにその『意見』があるのかが分からなくなってしまっています。
だからこそ、作者の『意見』のインパクトが一層強く感じます。(作者としては、『意見』より『事実』を伝えたかったのでしょうが)
また、明確な相手先の意見がないからこそ、作者本人も不完全燃焼に終わっているのでしょう。
一体、何を考え、何のために、今の対応を取っているのか。
秘密にしなければならないこともありますが、その判断が本当に正しいのかどうか。
それすらも明確でない状況に、不安や不満を持ち、行動することはむしろ真っ当なのだろうと思います。

自分は日本に対して、暴力的な分野限定ですが、世界に顔向けできないようなことはしないだろう、という絶対的な信頼を置いています。(過去のことは分かりませんが、現時点においては)
信頼を置いているからこそ、あえての主張はする気もありませんでした。黙っていても世界は分かってくれるほど、その信頼は強いだろうと。
だが、日本以外の国の全てが、そう考えてくれる訳ではない。
自分の自国を信頼しすぎ、主張すらもしなければ、世界からの信頼を失う可能性がある。
そのことを、改めて考えされられました。

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2011年03月16日

Posted by ブクログ

ニュースであの映像を見たときの怒りを思い出した。
尖閣諸島事件をさらう本として良い。
事件の対応に納得できる時がくるのだろうか。

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2011年03月04日

Posted by ブクログ

尖閣でのPRC「漁船」巡視船ブチかまし、超法規的に犯罪者を解放した某法治国家が、ご主人さまに褒めてもらえるどころか、オンドレ舐めた事しくさって土下座して払うもん払わんかい、と恫喝された事件。
その、現場ビデオを、我が身を顧みずYoutubeで公開し、辺り一面のクズっぷりを天下に曝け出して下さった一海上保安官の著。

あの頃は正直、どんな理由があれ、公務員が法規に従わないとは、と思った。
あの頃は正直、尖閣と竹島の区別もあんまりついてなかった。
流石に、台湾と香港と韓国の区別はついてたかな?

ただ、当時の民主党政権の足腰立たんくらい大慌てになってたのは覚えてる。

この人がいなければ、今よりなお、酷いことになっていたであろうことは、想像に難くないと思うのだ。

ものすごく、ものすごく、言いたいことを抑えて書いておられる。
日本が守るものはなんなのか。
日本が日本であるということはどういうことなのか。

先人に顔向けできるのか。

公務員とは、政府ではなく、国民の幸せのために働く。

その一言が重い。
いわんや、政治家をやな。

嫌な言い方だが、葉隠。
方法は間違っていても、正しいを思うことをやって、堂々と腹を切る。
その覚悟がなければ、公務員ではない。

ただそれが怖いのは、それが、間違った正義感、檻の中の独善ではないか。

本件に関して言えば、我々は、感謝すべきであろう。

一部のマスコミが、恥入ったらしいんだが、あんま覚えない。

本としては、熱い思いを語る部分、関係者への謝意を語る部分が重畳で損なっていたように思った。誰か、ライターが聞き取ってまとめた方が良かった気がする。

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2024年04月04日

Posted by ブクログ

真実を伝えることで、世の中の人に尖閣諸島問題について考えてほしいとの思いから、動画をアップロードしたと説明している。
愉快犯でもなく、衝動的な行動でもなく、著者なりに判断しての行動であったことが分かります。
日本の外交が弱腰であること、一般人の防衛、安全保障に対する意識について問題提起をしている。
勇気のある行動であったと思います。すくなくとも自分にはできない。

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2011年05月07日

Posted by ブクログ

真実というものは事実に複数の角度からアプローチしないと
なかなか見えてはこないものである。
世に情報はあふれているが、
選り分けてみると一次情報は案外少ない。
憶測、カット&ペースト、
はたまた限りなく「ねつ造」に近い情報。
自分の頭で考え、判断するためには生鮮材料が必要になる。

元海上保安官、
一色正春『何かのために sengoku38の告白』を読む。
一色が昨年12月に海上保安庁を退官していたことも
僕は見逃していた。
尖閣諸島のビデオがYouTubeに流失した事件で
あれほどの情報量が巷に流布していたことを考えると
まるで比較にならない扱いだ。
一方、一色が国家公務員の職を離れたことで
こうして著書を通じて自分の考えを
世間に伝えることもできるようになった。

一色がなぜ尖閣ビデオを流したか。
国を憂い、未来を憂い、
海上保安庁の誰もが閲覧できていた映像が
あるときを境に国家機密になる不条理を憂いている。
職務に熱心だった男が自分のクビを賭けて
映像公開に踏み切った心情がよく理解できた。

そもそも一色はC社(おそらくCNN)、
A社(おそらくアルジャジーラ)のどちらかに
尖閣ビデオを託そうと考え、
結局C社に素材を送るが公開されなかった。
また自分が逮捕されたときのことを想定して
なぜこうした行動に出たかをビデオメッセージにして
読売テレビ記者に預けていた。
自分の逮捕と同時に放映してもらう条件である。

C社ですら公開できないのであれば、
大手メディアに頼るのは無理だろう。
一色は意を決して漫画喫茶のPCからYouTubeに投稿する。
後はみなさん、ご存知の通りだ。
いったん、YouTubeで公開された後は、
NHK始めほとんどすべてのマスコミがその映像を再利用した。
一色はこう疑問を表明する。

  それはテレビ局が自らの手でニュースの情報源を探さないで、
  インターネットからの情報からニュースを作っていることに
  ほかならないからである。本来、あの衝突事件で中国漁船が
  何をしたのかを、自らが取材して正しく国民に伝えるのが
  メディアの役割ではないのか。
                 (同書p.128より引用)

僕はこの本を読みながら、
国家と個人とメディアの三角関係について考えていた。
メディアが国家の側についてしまえば、
個人にはほぼ勝ち目はなくなる。
中国に対してどんな外交行動を取るかより、
海上保安庁の機密扱いの問題と、
情報漏洩の犯人捜しに論調がすりかえられていったのは
いつものメディアのやり口のように僕には思えた。
一色は自分の考え、迷惑をかけた関係者への謝罪、
応援してくれた人の感謝については率直に書くが、
ハンドルネーム、sengoku38の意味だけは黙して語らなかった。

尖閣事件を忘却の彼方に追いやらず、
もう一度自分でその意味を考え直すために、タイムリーな出版。
朝日新聞出版の仕事である。

(文中敬称略)

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2011年03月05日

Posted by ブクログ

尖閣ビデオを流出させた著者。
You Tubeに投稿するきっかけ、投稿前後の行動などについて書いている。
元々本も出そうと考えていたらしい。

本書を読んでみると、たんに国防に関することだけではなく、多くの問題が集約されていることが分かる。
日本政府のリーダーシップの欠如、日本の組織の意思決定の遅さ、公務員という仕事の矛盾、マスメディアの腐敗と衰退。
そして特に戦後日本を繁栄させてきた55年体制が限界にきていること。
日本国民がひとりひとり真剣に考えなければいけないだろう。

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2011年02月23日

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