あらすじ
21世紀以降、ますます存在感を強めている「新興国」。特にブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国は「BRICS」と呼ばれ、リーマンショック後の世界不況を立て直す牽引役として期待された。一方、中国は海洋進出を進め、ロシアはウクライナに軍事侵攻を行う。力をつけた新興国は世界にどのような影響を与え、どこへ向かうのか? 本書は29ヵ国を新興国と特定し、経済成長、政治体制、軍事行動を分析する。
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Posted by ブクログ
基本的な内容は「新興国自身はどう発展するか」という点で、経済発展や所得関連で分類していて、今後の新興国を考える上で色々と示唆に富む内容だと感じました。
経済発展についても「一次産品輸出が多い」「国内市場が大きい」「技術生産力が高い」の3つに分類していて、東南アジア諸国がもっぱら技術生産力に入ってるのは興味深かったです。
Posted by ブクログ
「自由主義的国際主義」と「国家主義的自由主義」この言葉は「本音と建前」(法的見せかけは自由主義だが、実際は国家の利益優先とする独裁主義を言う。現在中国、ロシア、トルコ、イスラエルなど都合に合わせた表向きと裏事情で「国家主権主義」を巧みに弁明利用している国家である。特に近年は「権威主義的国家」として独裁的判断の下、国家利益主義を主張し、国連、国際原則・ルールを完全無視した軍事行動を取っていることが脅威だ。方やそれを軍事的に支援し、戦争を煽る行動の国家も、今後更なる他国領土への一方的な侵略を正当化していく可能性はある。そのため日本は「国防・防衛」的にも自国の軍事力を高めることは必須であり、隣国との相互経済発展を考慮しながら交渉していくべきだ、と感じる。
Posted by ブクログ
新興国を定義し経済面、軍事面から詳しく解説している。
民主主義と権威主義の説明で需要と供給の観点から説明しているのが分かりやすい。インドや南アフリカが軍事力を持ちながら民主主義を維持するのはガンジー、ネルー、マンデラなどの指導者がいたことだというのには、1人の人間の偉大さを感じた。毛沢東がそれに近い人であったならどんなに良かっただろうとしみじみ思った。
上海協力機構が力を伸ばし、ウクライナにとどまらず世界中できな臭い状況になってきて、しかも日本は中露と隣り合わせという位置、この本によってかなり現状が整理され勉強になりました。
Posted by ブクログ
新興国と言えば、アメリカ、日本、イギリスやEU各国、特にドイツやフランスの様な先進国と比べ発展段階にある、言わば「次に先進国となる国」(候補)と言った意味合いで捉えることができる。一時期は発展途上国と言った呼び名もあったが、現在ではその呼び名も、経済的にも工業的にも、もっと遅れた段階にある様なイメージで受け止められるため、新興国は発展途上国と先進国の間にありながら、世界経済を牽引し、かつ次の先進国になり得る要素を持つ、時間軸的な意味を多く含んでいる様に思える。言ってみれば、本当に先進国になるかは現段階では未知の部分もあるが、次の先進国が生まれるとすれば、その中から出てくる可能性が非常に高い、といった具合に受け止めるのが良いだろう。先進国の行き場を失いつつあるマネーが流入するならそのいずれかであり、若干博打的な要素を持ちつつ、巨大な利益を得る可能性に賭ける人も多いだろう。そう言えば、一時期南アフリカのランド債というのが流行ったが(今も需要があるかもしれないが)、南アフリカも投資先として名高い「BRICS」の「S」の一角である(当初は南アフリカを除く複数形としてのBRICsであったが、SouthAfricaも正式な一員となった)。なお、既にこの新興国の中でも、韓国やシンガポールは国民の所得は日本のそれを超え、裕福であるだけでなく、世界経済に大きな影響を与える位置にまで上り詰めている。中国は国単位で見ればGDPはアメリカに次ぎ世界第2位である。
前述の通り、投資先として有望である事は間違いないが、結果的に我々の予想通りになるか否かはわからない。だからこそ、人々(特に投資を考える一般市民であっても)は投資先として十分たり得るかの熱い眼差しを向ける。
本書はそうした「新興国」に世界の中から29カ国を位置付けで、さまざまな視点で分析を加える事で、現在の国家としての成熟度や、将来に向けて発展の兆しを生み出す政治体制、社会制度などのあらゆる視点を数値化し、データを基にして分析を加えていく内容となっている。社会福祉に対する国の予算配分、軍事費の割合、多党制や一党独裁などの政治体制、エネルギー資源の輸出量など、その数値は多岐に渡る。そしてその国々が持つ歴史にも若干ながら触れる事で、将来の国の振る舞い方などを予測する参考にもしている。さまざまな視点で分析された結果、何処の国が次の先進国であるかの答えを示すものではなく、それ自体は読者である我々に回答を委ねる。
かつて、日本より遥かに栄えた(それも、近代に入りそれほど古くない過去に)アルゼンチンやチリが、既に先進国経済とは大きく引き離された現状に留まっている。発展は永続的ではなく、国の指導体制や国民一人ひとりの意識で簡単に乱高下するものだ。何よりロシアがウクライナに侵攻したり、中国が南シナ海や台湾を狙う様に、対外関係にも大きく左右される。そうした各国の思惑を地政学的に分析し、尚且つ本書の様な数値データを用いて、更に解析を進めて予測する。先の見通しが難しい時代になっている事は間違いないが、世界のグローバル化は自身の生活にも少なからず影響を及ぼしている。
本書の様な書籍から、世界の潮流をある程度把握し、日常への備え、不労収入獲得?に活かしてみても良いかもしれない。
Posted by ブクログ
著者は、はじめに先進国よりも早いスピードで経済成長を遂げ、世界経済の動向に無視できないほど影響力を持つ国々を「新興国」と定義したうえで、計29ヵ国の政治、経済、社会の特徴に注目する。それが、現在世界をけん制する国々および日本に、どのような影響を及ぼすのかをデータを駆使して考察するのが本書全体の流れである。
まず新興国の経済についてだが、その多くが天然資源の輸出、産業の技術力向上と高技術品の世界への輸出を通じて、経済成長を遂げたことが判明した。なかでも、製造業の原料やエネルギー源として需要が大きいことが発展に繋がったことがわかる。
また政治については、大きく民主主義と権威主義の二つの体制が見られるが、新興国では1980年以前から民主主義体制を維持した国々は珍しいことがわかった。これは東南アジアを中心に開発独裁が行われた歴史を見ると、たしかに納得できる。それだけではなく、行政の特徴を比較すると、政治体制、政治制度以上に、良質な官僚機構が経済成長を続ける鍵だとわかった。
さらに、中国とロシアの台頭で、「国家的自国主義」がますます拡大し、日本を含む「自由主義的国際主義」と競争すると著者は予測する。そこで、経済を中心にこれらの国々と関係を維持しつつも、新興国の指導者は経済的利益を得ようとふるまう姿勢が求められる。
最後に、世界秩序が変わりつつある昨今、日本がすべきことは、日本は新興国との貿易のやり取り、また「自由主義的国際主義」を堅持するために、国家間との協調がますます重視されることがわかる。