【感想・ネタバレ】よき時を思うのレビュー

あらすじ

よき時、それはかつての栄光ではなく、光あふれる未来のこと。

いつか、愛する者たちを招いて晩餐会を――
九十歳の記念に祖母が計画した、一流のフレンチシェフと一流の食材が織りなす、豪華絢爛な晩餐会。
子どもたち、孫たちはそれぞれの思いを胸にその日を迎える。
徳子おばあちゃんは、なぜ出征が決まった青年と結婚したのか?
夫の戦死後、なぜ数年間も婚家にとどまったのか?
そしてなぜ、九十歳の記念に晩餐会を開くことにしたのか?
孫の綾乃は祖母の生涯を辿り、秘められた苦難と情熱を知る――。
一人の命が、今ここに在ることの奇跡が胸に響く感動長編!

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ネタバレ

あり得ないほど豪華な誕生日会

徳子お祖母ちゃんを見ていたら、教師が崇高な仕事だった頃を思い出す。
いつの間に、教師は何を言っても許される不満の捌け口へと化していったのだろう。
そして、その原因は……?

ここに登場する幾人もの教え子たちは、徳子先生への恩を決して忘れない。
生命の奥底で、感謝の念が静かに時を待っていたのだ。
時や場所を隔てても、お互いを思う美しすぎる愛が、まるで千穐楽のような90歳の誕生日会(晩餐会)へと螺旋のように絡み合いながら集まっていく。
そして、玉木シェフの読み上げる手紙は、私は何度も読み返し、何度も嗚咽した。
嗚呼、人に励ましと勇気を送る教師という仕事のなんと誇り高きことか!
そして、その愛情に応えて生き抜き、成長を遂げた子供達のなんと逞しく美しきことか!
嘘や騙し合いが蠢く悲しいこの世界にあっても、そこには希望の光がさしている。揺るぎない信頼の二字(虹)が輝いている。
「出世の本懐は、人の振舞にて候いけるぞ」と、穏やかに徳子お祖母ちゃんが語りかけてくるようだ。

人生の最後に光り輝く誕生日会は、来世への確かなSTARTにもなっていくに違いない。
またこの誕生日会は、
私は生きた、生き抜いた!
私は勝った!
という魂の宣言でもあった。
それはとりも直さず、90歳まて生き抜くぞ!という作者(現在77歳)の決意発表にも思えるのだが……

作者が後日談で、今までとは違って計算とか決まり事とかを全部抜きにして好き勝手に、筆任せに書き進めたといった趣旨の話をされていたが、確かに第3章は不思議な終わり方へと突き進んでいった感がある。

私が生まれた時には、お祖父ちゃんも、お祖母ちゃんも、既にこの世にいなかったので会うことも話すこともなく……。
だから余計に、こんな潔く賢い徳子お祖母ちゃんに会いたいなと思った。

最近よく耳にした「九十歳。何がめでたい」という映画のCM。
是非映画を観た後にその対比もしてみたいな。

#笑える #泣ける #深い

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2024年09月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

四合院造りに住む人達の物語りで幕を開けるが、その南側に叔母夫婦の代わりに住む綾乃の話から祖母徳子や家族の話へと移りまた四合院の大家で終わる。この四合院の醸し出す住み心地が何とも羨ましい。
物語の佳境は徳子おばあちゃんの90才を祝う晩餐会。想像できない贅沢な料理、ワインにため息です。また金井家の上質さ、仲の良さ、程よいセレブ感、夢のようです。

0
2023年04月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 オシャレで可愛い徳子おばあちゃま。 育ちの良さから品を、夫の戦死などから、凛とした強さを感じます。

 孫娘の綾乃さんからのプレゼントへの礼の文。
『・・・九十歳になって孫の綾乃が贈ってくれたゲランの香水を胸にぽつんとつける日がくるとは思いませんでした。
 つけて寝て、朝、目がさめたとき、起きるのが恥ずかしくて、さらに起きたまはぬ朝となりました。よき時を思いました。幾重にもお礼申し上げてます。 かしこー 』

 九十歳のおばあちゃまがゲランの香りに包まれて目覚め、まどろむ贅沢な時間・・・なんとも優雅で羨ましい。 そんな優雅で贅沢なシーンが度々登場しますが、京都を中心とした言葉や空気感により、柔らかく好意的に受け取れます。

 この小説は、なぜ?なぜ?なぜ?と、問いかける帯(なぜ出征が決まった青年と結婚したのか?等)に惹かれて手にしました。 
 その答えは、少し肩すかし・・・という感じではありましたが、それ以上に、人の人生の素晴らしさ、光と影、その影さえも今の幸せの源になっている徳子おばあちゃまに、パワーをいただきました。

 物語の始まりと終わりは、孫娘の住む四合院造りの家の家主・三沢兵馬さんのエピソード。 
それがまた、いいのです。 最後にちょっとしんみりとし、心が温まりました。 ここにも、不器用な男の人生があるんだなぁーと。
 

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2023年07月29日

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