あらすじ
2010年秋以降、全国各地で鳥インフルエンザの感染事例が報告されている。鳥型から人型にウイルスが突然変異する可能性も高まっている。病原性の強いH5N1型の新型インフルエンザである。しかし、国民には2009年春の豚インフルエンザの流行で世界的流行(パンデミック)は済んだとの楽観的な印象が残っている。本書はこうした楽観論を戒め、2011年の秋冬に向けて急ぎ対策を講ずるべきだと説く。今後も毎年冬季に恒常的に強毒型鳥インフルエンザが日本で発生を繰り返すことも懸念されるという。それはシベリアの北極圏の営巣地帯に強毒型ウイルスが定着したことが報告されているからだ。いまわれわれに必要なのは、ワクチンや抗インフルエンザ薬の備蓄、発生時の行動計画の策定、さらには個人、家庭でできる対策である。「想定外」ではすまされない、科学的な裏づけによる想定された危機に対処するための最新情報を網羅した。
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Posted by ブクログ
H5N1型ウイルスの危機は去っていない。2009年に弱毒型の新型インフルエンザが流行して,日本人の間では危機感が薄れているが,強毒型は全く別物。十分な対策が望まれる,と警鐘を鳴らす。
当時は報道が過熱気味で,いろいろ情報収集をしたものだがもう一度確認の意味で読んだ。鳥インフルエンザをめぐる現状・歴史,発症の機序,強毒型と弱毒型との違い,対処法までまとまっていて有意義と思う。
インフルエンザウイルスが複製して感染性をもつためには,HAタンパク質の特定部分が切れる(開裂)ことが必要だが,弱毒型はその開裂に関与する酵素(プロテアーゼ)が呼吸器と消化管にしか存在しないので,そこでしか感染拡大が起こらない。強毒型は全身で増殖可能でこれが致死率を上げる。
著者は対策として,プレパンデミックワクチンを(7割の)国民に接種することを推奨しているが,政策として取り入れられてはいないようだ。感染が確認されてから製造を始めるパンデミックワクチンでは,流行に間に合わないため。それにしても,スペイン風邪でも弱毒型だったということだし,怖いな。
Posted by ブクログ
2009年に新型インフルエンザが流行し、問題意識が高まったが、結局は弱毒性だった。しかし、本来のH5N1の鳥インフルエンザの恐怖は去っていないということを明確に訴えたい2011年発刊の本。
2013年4月、中国でH7N9型の鳥インフルエンザが大量発生し、死者も多く発生している。しかしながら、それに対しての正しい知識を持っている人は意外に少ない。
本書では、インフルエンザウイルス、その発生と強毒化の過程や種を越えた感染、人間の免疫獲得、ワクチンの効果などがコンパクトにまとめられている。類書に比べて、やや図解が少ないかなと思った。
その後H5N1型で(H7N9でも基本的な考えは一緒だと思う)危険性を指摘していた。危機は迫ってきている面もあるので、リスクに対しては十分な対策をとってほしいと思った。