【感想・ネタバレ】完本 中国再考 領域・民族・文化のレビュー

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2024年04月25日

宋代と清末の二つの時代がそれぞれ「中国意識」と「現代中国」の形成に大きな影響力を持っていたことが分かる。中国は統一と崩壊と内乱を繰り返しているだけで発展していないとする見方をとる人も多いが、漢唐の時代と宋では質的に全く異なる「中国」が誕生していたようだ。しかし話はそこで終わらず、宋の後には元や清とい...続きを読むった異民族王朝が漢人の居住範囲を遥かに超える大帝国を作り出す。これが現代中国の内部に民族問題を生み出すきっかけになった。
清末には満蒙回蔵などは放っておいて漢族だけの中国を打ち立てる向きもあったようだが、それは清朝の国土の分裂を意味し、結局新生の中華民国は清朝の版図を基本的には受け継いでいる。民国時代はそうした「辺境」を「中華に納める」試みがなされていた。国民政府は台湾に移転して共産党が中国を統治するようになったものの、ウイグル人、チベット人、モンゴル人への人権弾圧問題は今日まで続いており、日米欧などの西側諸国からは厳しい目が向けられている(そして厳しい目を向けているのがまさにかつて中国を分割した国であることが事態を複雑にしている気がしてならない)。

天下主義についても軽く触れられているが台頭する中国が西洋由来の秩序を敵視しているのは確かでこの敵視が世界をどこに連れていくのか、不安でならない。

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Posted by ブクログ 2024年02月07日


中国の複雑さを、中国人自らが語った文章。全体的にフェアな書きぶりであると個人的には感じられ、中国にもこのような冷静な議論があるという事実に感銘を受けた。
中国は帝国と近代国家の顔を交錯させている国である。その勃興に伴い、西側中心の既存秩序、周辺諸国と衝突を繰り返す中国の今の本質を、中国人自ら歴史...続きを読むから解きほぐし分析している点に価値がある。
中国はそもそも一つなのか。中国では漢民族中心主義(国境を意識する近代国家)と、多民族主義(天下が果てしなく広がるイメージの帝国)が相互に顔を出す国である。また、その領域も歴史的に増減幅があった(周辺諸国の一つである日本にとってみれば、その増減幅が死活的な脅威となるわけであるが)。よって「古来より固有の領土」という言い方は、周辺諸国との軋轢を生むだけである。しかしながら「確かに中国」といえる範囲、文化はあり、それを過度に過小評価するのもまた事実に反するものである。
このような中国を目覚めさせたのは、日本であり、日本が中国を分断させようとすればするほど、中国のナショナリズムは高まりを見せた。そして目覚め、勃興した中国は、既存のルールにNOを言い出すようになり、帝国としての顔をのぞかせ、膨張の傾向を見せるようになった。習近平の掲げる「中国の夢」は帝国としての中国の復興、中心としての中国の立場を取り戻す意味であることは想像に難くない。
このような中国といかに向き合うかは、我が国が背負った歴史の贖罪といえようか。

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