あらすじ
記憶はどこにあるのか? 記憶違いはどうして起こるのか? かつて心理学の世界でも、記憶が「過去の忠実な記録」であるかのように扱われてきた。しかし、人によって物の見方が異なるように、同じ場所で同じことを体験しても、記憶の内容は異なることが分かった。今や、記憶の捉えられ方は180度変わった。私たちの過去は、「今、ここ」にいる自分自身の心の中にある。過去を変えるのに、タイムマシンに乗る必要はない。自分の視点が変われば、過去も変わる。過去の記憶を前向きに整えることで、明るい未来予想図が描けるようになる。明るい未来予想図を描くことができれば、モチベーションが上がり、ものごとが好転する。人生、困難なこと、辛いことがいろいろあるものだ。そんなときどう考えるかで、人間の幸不幸、飛躍か後退かが決まってくる。逆境をバネにし、飛躍に結びつける記憶の整え方を提示する。明るい未来予想図を描くための「記憶の超整理術」を示す。
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Posted by ブクログ
人の記憶は曖昧で不安定なものだ。ついこの間まで難なく覚えていた事なのに、何故か今日は思い出せない。テレビで見た俳優の名前を、あいうえお順に何処か引っ掛かる文字がないか順に辿っていって、何とか3文字ぐらいは候補に残るが、そこから先が思い出せない。そんな事は頻繁にある。歳を重ねるに連れ、記憶力が落ちるとも言われるが、幸い記憶に関する色々な書籍を見てきたから、加齢による衰えだとは思っていない(幸いにも)。要は経験や知識が増えてくれば、あまり使わないような記憶はアクセス速度が落ちても仕方ないし、もっと重要な事柄があれば、そうでないものは当然気に掛けなくなるから、記憶の引き出しから出せなくて当たり前だと考えている。つくづく、人の記憶や思考はパソコンの構造に似ているとも思う。よく使う単語やキーワードは、低速な記憶領域であるハードディスクにあるから、初回アクセスは遅い。一度使えばメモリ上に展開されてアクセスは高速になる。更に何度も使う記憶はキャッシュされるから、尚更取り出しは速い。ここに更にインデックス(索引)があれば、それだけでも大分アクセス速度はあがる。それで重たくなってきたら再起動という名のリセット。人間で言えば睡眠みたいなものだろうか。朝スッキリ目を覚ませば、また新しく記憶から取り出しが始まる。コンピュータとはよく出来たものだ。
本書は人の記憶の構造や特徴について非常にわかりやすく説明してくれる。何故記憶が曖昧になるのか、どうしたら記憶へのアクセスを高速化できるのか。特にテクニックを教えるわけではなく、心理状態や記憶の構造自体を明らかにする事で、忘れっぽい自分、記憶違いから発生するすれ違いなどの防止のヒントを提供してくれる。何故そうしたことが起こるのか、構造を理解した上で、それを実践するのはあくまでその先を考える自分。明日いきなり記憶力が蘇るかと言えば、そんなに即効性のあるテクニックは出てこない。だからこそ、日常的な考え方を変える事に結びつき、結果的に表面上のテクニックをかいつまんだだけよりも「記憶」に残る(一部テクニック的なものも紹介されるが)。
最近は新たなビジネスチャンスを掴むために、やたらと発想力が求められる。記憶力の良さは、確かに過去のネガティブな記憶や経験が邪魔して、新たな一歩を踏み出す事を躊躇させる一因になる。だが、何も無いところから新たな発想が生まれる事はない。何かしらの経験、知識の中から、断片的に繋ぎ合わせた結果、新しい発想が生まれてくる。この事からも分かるように、ネガティブな記憶を支配されるか、ポジティブな記憶から何かを生み出すかの違いだけだ。前向きな発想は前向きな心理からしか生まれてこない。気分が落ち込めば、いつもなら思い出せることも、悲しみが邪魔して思い出せない。
来週試験を控えている。面談試験ではあるが、極力明るい未来を楽しい心理状態で話してみようと思う。振り返れば嫌なことも沢山あったけれど、そのおかげで今の自分が出来上がったと思えば(元気に生きてる)、楽しい記憶に変えられる。有意義だったと言い切れる。
記憶は過去ではない。未来に起こることでもない。今の自分の中にある。そして今しか存在しないもので、全ては今の心理状態が作り出している。
Posted by ブクログ
新書としてとても良い本。
整理術というよりは、記憶を整理することが生きて行く上でとても大切であるという点をテーマとしているように感じた。乱暴かつ主観で要約すれば...
過去の意味を整理することは未来を描くことである。
想像力を生み出す心が真っ白な状態とは何もない状態ではなく、記憶が全て整理された状態。
記憶が整理された状態とは、自分の中でそれぞれの記憶が何を意味するかが明確となっていること。
(特にポジティブな側面について。)
日常的に記憶とその意味を呼び起こす習慣を持つことが非常に大切。
Posted by ブクログ
「記憶」のメカニズムを心理学的側面やカウンセリング面からとらえて、その仕組みを「これからの人生」に活かそうという自己啓発的要素の強い本。
各章末にポイントをまとめてあるのでとても読みやすくて便利。ぶっちゃけこのまとめさえ読めば他は読まなくてもOK。
記憶は単なる過去の記録ではなく、もっと能動的に過去を生み出す機能であり、さらに思い出している人の心理状態を反映するものであることがわかっている。
したがって、自分の心理状態や視点によって過去の記憶も意味合いが変わりうるという特性を持っている。
人間は思いのほか強く、悲劇的な体験、喪失体験からもプラスの意味へ転換できる力を持っている。なぜなら、そこでは逆境をバネにするための記憶の整理が行われているからである。
本書のサブタイトルは「忘れたい過去を明日に活かす」であるが、人間の脳機能はこの転換作業を高度なレベルで行っている。
Posted by ブクログ
「過去は変えられる」という言葉に惹かれて読みました。
記憶とは単なる記録ではない。記憶を語るうえで、「記録」の方法論ではなく、「現在」の視点からの「意味づけ」が過去の認識すら変え、未来展望を明るくする。
そういった経験から学ぶ「意味づけ力」の重要性を再認識できました。
著者は新領域「自己心理学」の提唱者。
様々な心理学者や一般的な事例を引き合いに出しながらわかりやすく解説。
本の中でも用語の解説は分かりやすく別欄を設ける心配りが感じられました。
「フラッシュバルブ記憶」や「流動性知能」と「結晶性知能」など、
いくつか実際の仕事の場面でも話のネタとして使えそうな観点がありました。
Posted by ブクログ
辛い思い出が多いからうつになるのではなく、気分がうつ状態だから辛い記憶が引き出される。
モチベーションを規定しているのが未来予想図。明るい未来を描ければモチベーションが高まる。
過去は変えられる=自分の視点が変われば過去も変わる。
記憶は、貯蔵庫ではない。記憶する人によって能動的に作られる。
関心のあることしか見ない。ショーウインドウにあるマネキンを見ている自分。マネキンか鏡に映っている自分か。
未来はまだここに存在しない。過去はもうここに存在しない。あるのは、過去についての現在、現在についての現在、未来についての現在、だけ。(アウグスティヌス)
記憶は思い出している今を映し出す。
未来展望がモチベーションを左右する。明るい未来展望が持てればモチベーションは維持できる。
回想記憶を肯定的に意味づけるように整理しておく。
「自己物語法」=自分の物語を自分で作る。悪いこともよいことも書きだす。年代ごとに折れ線グラフをつくる。
人生の良しあしはライフイベントではなく、どう意味づけるかで決まる。
自伝的記憶は3歳までさかのぼれる。エピソード記憶が可能になる年頃。
事前情報でも記憶がゆがむ。第一印象、見た目、事前の情、などで左右される。
逆の場合は、それに左右されないように注意する。
記憶は、なじみの場所に張り付ける方法。キケロが編み出した。
覚えたらすぐ寝る。
使わなくなると記憶が薄れる=記憶痕跡崩壊説。
度忘れは、検索失敗。忘れているわけではない。
毎晩、その日にあった出来事を記録すると整理できる。だれ、何、どこ、いつ、を記録する。
嫌なことは忘れやすい。思い出が美しくなる理由。
逆境から学ぶ=「困っても困らない」困難なときこそ学べる。
逆境に強い人は、挫折経験を前向きに整理することができる。
Posted by ブクログ
『記憶の整理術』
榎本博明
記憶には思い出すときに作り直されるという側面がある。ゆえに、思い出された内容は、今の心理状態や価値観を映し出している。心理状態や価値観が変われば、思い出すことも違ってくる。(p45)
過去の出来事は変わらないが、それを思い出す私たちのその捉え方は違うこともあるのだ。
未来予想図は、回想記憶をもとに描かれる。希望に満ちた前向きの未来予想図を描くには、これまでの人生を肯定的に意味付けることができるように、回想記憶を整理しておくことが必要である(p73)
回想記憶を肯定的に意味付けることは、私にとって困難な作業だろう。この卑屈さと向き合う必要がある。
自分が、どのような記憶が得意なのか
苦手なのか、つまり自分の強み・弱みをまず知っておいたほうがよい。このことは、自分の能力を活かす上で非常に大事なことだ。苦手なことを得意にしようと考えるより、得意な能力を伸ばしていこうとするのが、セルフ・マネジメントの要諦である。自分の強みをどのように活かすかを考えることは、ワクワクするものである(p99)
自分の強みを知る。さて強みはなんだろうか。
回想記憶が得意な人は過去の出来事を覚えているが、苦手な人は過去の情景にぼやけている。展望的記憶が得意な人は、予定通りの行動を滞りなくとることができる。(p99)
どちらも自分は鍛えなければならない。
だれの記憶にも歪みがあることを前提にして、自分の記憶も過信せずにチェックする謙虚さが大切である。無用なトラブルを防ぐためにも、きめ細かく確認し、メモをとるといったリスク・マネジメントが欠かせない。(p132)
自衛のためにメモは必須である。
どんな挫折経験であっても、どんなにイヤな出来事であっても、何かしら学ぶことはあるものだ。思い出すとイヤな気分になる、不安に教われる、絶望感に苛まれるからといって、フタをしてしまうと、それはトラウマになる。けっしてフタを開けてはならない、掘り起こしてはならない爆弾を抱えているようなものである(p227)
とても大切だが、それはとても大変なことだとわかる。訓練しなければ。
逆境から学ぶことができる人は、否定的なエピソードの中にも肯定的な意味を見つけ出すことができる。自伝的記憶を上向きに整理することができるのである。(p228)
そうなりたいと思う。
Posted by ブクログ
記憶をテーマにさまざまな観点から説明する。記憶は現在の自分が作っているものであるという考え方が新鮮だった。
・回想記憶を自己コントロールに活かす:思い出すと幸せになるエピソード、自信を感じられるエピソードなどをストックし、引出すことでアクセスをよくしておく。
・記憶は自分の感情がつくる。幸せな記憶をつくるには、楽しい気分、嬉しい気持ちに浸り、過去を振り返ったり、身のまわりのことに目を向ける。
・潜在記憶を活性化するには、読書をする、映画やドラマを見る、人と話す、場所を訪れる。
Posted by ブクログ
記憶は過去の記録ではなく、今の感情も含む。なるへそ。
記憶というものは感情にも左右されるので、他者との記憶のすれ違いが生じる。だから会議には議事録がいるんだな。
逆境から強い人は、経験から学ぶことができる人である。
記憶力を強くするために購入したが、騙された。でも面白かった。