【感想・ネタバレ】僕は美しいひとを食べたのレビュー

あらすじ

人を喰うことは、常に神を喰うこと

私たちは神への深き愛ゆえに、神との融合を求めて聖餐を催し、その血肉に見立てたパンと葡萄酒を体内に取り込んで恍惚とする。だとすれば、兄弟たる人間へのフィリアゆえにその肉体を貪る行為も、貴き愛と呼べるだろう......
なぜ男は「美しいひと」を食べたのか。全篇にちりばめられた、古今東西の食人にまつわる膨大な逸話の引用から浮かび上がる、「真実の愛の行為」としての食人の姿とは。この、妖しい輝きを発する告白体の小説こそ、カニバリズム文学のイデアへの最接近を果たした奇書と呼んでも過言ではない。

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Posted by ブクログ

主人公が愛人の女と共に過ごし、女は彼に自分を食べてほしいと頼み自殺する。そして主人公は約束通り彼女を食べる。
話としては単純なのだが、これが枠物語になっていて主人公が彼女に世界各地の食人話を語るという構成になっている。

解説にかなり大量のページが割かれていて、作者の生い立ちやなぜこの本を書いたのかという動機にまで深く考察されているので、読み応え抜群である。

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2024年07月05日

Posted by ブクログ

西洋人と東洋人のあいだに生まれた「僕」と、西洋人でありながら中国で生まれ育ったイザベルは惹かれあい、夜ごとに古今東西の食人文化を語り明かした。ウィットに富んだカニバリズム薀蓄トークの果てに、イザベルと「僕」が選んだ愛のかたちとは。


イザベルの死の謎にまつわる導入をササッと終えたあと、澁澤の手帖シリーズかと思うくらい、おもしろカニバリズムエピソードが上流階級の男女の小気味いい寝物語というテイで延々と続く。原題は「僕は白い中国人を食べた」だったといい、「白い中国人」とは中国育ちの白人であるイザベルを指すのだが、恋愛(不倫)関係以上にこの周縁的アイデンティティによって語り手とイザベルが強く結びついているというのが本書のキモだ。
この小説における食人文化はヨーロッパから見れば「未開」の「野蛮」な生き方をシンボリックに表しており、イザベルと「僕」との会話のなかでは徹底的に肯定される。「僕」の先祖が食べられたという話すらもカニバリスト視点から語り、ブラックな笑いに変えているところは特に印象に残った(テンペストを下敷きにしたエピソードで、この二人は完全にキャリバンの味方なのだ)。カニバリズムを嬉々として語る二人のやりとりは、「文明的」な態度で自分たちを締めだす西洋社会への密やかな復讐だったということが読み進めるうちにわかってくる。
そして、本編と同じくらい面白いのが訳者による著者紹介。恥ずかしいことに私はクーデンホーフ光子という女性を知らなかったので、著者ハンスの来歴に驚くことばかりだった(EUの父と呼ばれている弟のリヒャルトも知らなかった!)。著者の人生を小説に重ね見るのはそんなに好きではないけれど、解説を読んだあとは語り手「僕」の優雅な物腰の裏にある切実さがより迫って感じられるような気がした。自身も複数のルーツを持つ訳者のハンスに対する思い入れの強さが伝わってくる文章だった。

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2023年10月28日

Posted by ブクログ

タイトルと装丁に惹かれて読破しました!「食べてしまいたいほど好き」をこれまでに体現している本は今まで読んだことがなくとても新鮮な気分でした。
ただドラマパートが思ったより少なかったのが...

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2023年10月06日

Posted by ブクログ

徹頭徹尾、食人の話と言う点で好き嫌いが分かれるとおもいます。
グロテスクの中にエロティシズムがり、奇書の名にふさわしい一冊です。

驚いたのは著者が、あのクーデンホーフ光子の長男だと言うことでしょうか。

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2023年05月10日

Posted by ブクログ

カンニバルについての歴史本のようなもの。
正直どこまで本当かは分からないが、
今と昔の感性の違いや人を人と思わなかった奴隷制度があった時代には、残虐性とも当時思われなかったような行動をしているのもなんとなくは想像がつく。
一緒に生きるのではなく、あなたに食べて欲しいと思うような感性にはなかなか理解しがたい部分があった

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2025年05月18日

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