【感想・ネタバレ】太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年02月11日

2023年新潮ドキュメント賞受賞作

新潮ドキュメント賞とは、ジャーナリスティックな視点から現代社会を深く切り結び、その構成・表現において文学的にも良質と認められる作品に授与されるノンフィクションの賞です。

2022年に受賞した「嫌われた監督」が大変面白かったので、この賞を取る作品は読んで間違いあ...続きを読むるまいと信じて読みました。ちなみに「嫌われた監督」はプロ野球で唯一、三冠王を3回取った落合博満氏を対象とした作品です。監督業においても圧倒的な成績を収めた落合氏は、「名選手は名監督にあらず」というスポーツ全般に言われている定説をぶっ壊したものすごい人です。

余談が過ぎましたが、余談ついでに言っておくとこの新潮ドキュメント賞の選考委員が大物ぞろいです。保坂正康氏、櫻井よしこ氏、池上彰氏など錚々たるメンバーです。

本題です。

良質なノンフィクションはやっぱいいですね。よく錬られた展開にぐんぐん引きこまれました。著者の三浦氏は朝日新聞記者でルポライターです。本書の舞台はザイール国(現コンゴ民主共和国)で1960年代後半から鉱山開発に派遣された日本人たちと現地妻とその子どもたちのなんとも言えない悲しいストーリーです。

2010年以降にフランスやイギリスのメディアが報道映像で、日本人を糾弾しました。日本人鉱山労働者が現地女性と多数の子をもうけたばかりか、一部の赤ちゃんが日本人医師の手で殺されたという疑いが伝えらました。

ツイッター(現X)でこのことを知った著者は赴任地である南アフリカのヨハネスブルクから旧ザイール南部の街ルブンバシへ通います。現地で知り合いになった日本人協力者と共に日本人とザイール人から生まれた32人の子どもとその家族を訪ね歩き話しを聞きます。そして、日本人による乳児殺害は、現地記者が金欲しさに流したデマだったとの結論づけます。

著者たちの調査結果をイギリスメディアにぶつけると謝罪こそしなかったものの記事が削除されました。
なぜ、デマが報じられたのか。アフリカの場合、少数の特派員が広大なテリトリーをカバーします。このため紛争、事件の第一報はAPやロイターなど世界的な通信社に頼らざるをえないそうです。そのAP、ロイターも各国に特派員はおらず、通信員や地元記者を使います。彼らの中には、ニュースを買ってもらうため、誇張やウソを流す者もおり、乳児殺しのデマはまさにその産物だったのです。

デマはデマとしても日本人の父をもつたくさんの子どもたちが置き去りにされたというのは紛れもない事実でした。

中国残留孤児については昭和の頃に盛んにテレビ報道されていましたので一定以上の年齢の方は知っているのでしょうが似たようなことがアフリカにもあったとは衝撃でした。

1970年代〜1980年代にザイールに数年間暮らした20代〜40代の日本人鉱山労働者は10代の地元女性と親しくなり、中には結婚までして、新居から鉱山に通う人もいました。任期を終えて日本に戻る際にはザイール人妻や子を日本に連れていく日本人はいませんでした。長年仕送りする人や、別れ際に号泣し、去っていった人もいました。

現地に暮らし、残された子どもたちに寄り添ってきたシスター佐野さんは著者に「父親に会って、お金がほしいという人はほんの一部にすぎない」と話す。多くは、ただ父親に会いたいという「人の子であれば誰もが持っている普遍的な愛」だと言っています。

著者は日本に戻り、父親捜しを始めるのですが難航します。父親を知っている人にまで行きつくが今の家庭を壊しかねないという理由で協力を断られたりします。

 またある父親はすでに亡くなっていたとの情報を得ました。その父親のコンゴの息子に再会したとき、著者は会うなりすぐ聞かれます。「僕のお父さん、見つかった?」。迷いながらも亡くなっていたことを告げると、40代の息子はみるみる涙をため、泣き続けました。

妻や子どもを置き去りにした日本人鉱山労働者たちはどのような思いでいたのでしょうか。おそらく一人一人に葛藤があったはずです。
<人は正直に生きられない、組織や常識といった目に見えないものに絶えず縛られ、生きたいように生きるという、そんな簡単なことが思うようにできない。あるいは「彼ら」も同じ気持ちだったのか>(「太陽の子」)

いろいろと考えさせられる作品でした。それにしても著者の執念とも言える取材にはただただ頭が下がるばかりです。普段小説しか読まないブク友の皆さんにも自信をもっておすすめできる一冊です。

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Posted by ブクログ 2024年02月07日

読書記録74.
太陽の子

戦後の経済成長期
資源を求めコンゴでの鉱山開発の後に残された太陽の子に纏わるルポ

コンゴ女性の置かれる状況
児童婚、宗教観

『正しい行為』がもたらす事
 正しさとは…

著者様の満州や福島に関わる作品や本書から関心を持ったムクウェゲ医師の取組みについても深めたい

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Posted by ブクログ 2023年10月20日

コンゴに置き去りにされた残留孤児の存在を、まったく知らなかった。新聞記者さんらしい、完結で読みやすい、でも人物や著者の愛嬌も伺える文体でまとめてあり、4-5時間で一気に読んでしまった。今を生きる問題。どうか一人でも会えてほしい。

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Posted by ブクログ 2023年10月18日

アフリカに何年も閉じ込められたらそりゃそういうことは起きるよなと、そしてその後日本に帰ってからの行動ってのも必ずしも責められないと感じる。
BBCってまともな組織なんだなと、最後は気持ちよく終わったのが良かった。

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Posted by ブクログ 2023年10月15日

一気に読めた。
海外特派員記者が、どのように仕事をするのかわかったことが1番面白かった。
アフリカは、物理的にも気持ち的にもとても遠い。知らなさすぎて、関心も持てない時間を過ごしてきたが、もっとアフリカについての本を読んでみようと思う。

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Posted by ブクログ 2023年09月18日

70年代コンゴでの日本企業による鉱山開発に伴って赴任した日本人男性と現地女性との間の子どもが何人も毒殺された疑惑がある。そう伝える国際ニュースチャンネル「フランス24」による配信記事に疑問を感じた著者は自ら取材に乗り出す。

いろいろな人に当たって粘り強く取材を続ける姿勢、その中で生まれてくる信頼関...続きを読む係、そして個々の人生にスポットを当てて浮かび上がらせる文章。福島の原発事故の作品でも感じられた著者の力量がここでも発揮されていて、読んでいて胸を打たれた。

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Posted by ブクログ 2023年07月05日

その多大な労力と情熱と、人としての正しさを追い求める姿勢に対して☆5にしました。

内容は、私がこれまで全く知らなかった事実。衝撃を受けると同時に、人の性、日本という資源を持たない国の過去と、今後の在り方等々、様々なことを考えさせられました。

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Posted by ブクログ 2023年06月19日

面白いと言っては失礼かも知れないが、ものすごく引き付けられた。

戦後、日本を敗戦の泥沼から引き上げたのは朝鮮戦争による特需とそれを支えた石炭産業だった。鉄道輸送や重工業に欠かせない石炭の緊急増産対策が実施され、国内における石炭生産の増大がこの国を工業先進国へと押し上げる。しかし、その石炭は1960...続きを読む年代に入ると採掘コストの上昇などにより、エネルギーの主役を徐々に国内では生産できない石油に譲り渡していく。
国家がエネルギーの軸足を石炭から石油へと移したことにより、東北や九州などの地方では炭鉱の閉山が相次ぎ、無数の労働者が巷にあふれた。その生活の糧を失った労働者たちの送り先の一つとなったのが、資源国コンゴ(旧ザイール)。そして「日本鉱業」はムソシ鉱山を開発した。
しかしニクソンショックによる多額の為替差損、独裁者として悪名高いモブツ大統領による無謀な経済政策による経済破綻によって、鉱山経営に必要な物質や従業員の生活必需品が手に入りにくくなり、更には1975年の隣国アンゴラの内戦よる産出する銅鉱石の輸送性悪化、1978年の内戦、世界の銅価格の急速な下落等があり、ついに1979年撤退をすることになる。

それは単に"歴史"となるはずだったに違いない。
ところが2016年、著者のツイッターに「1970年代コンゴでの日本企業の鉱山開発に伴い1000人以上の日本人男性が現地に赴任し、そこで生まれた日本人の子どもを、日本人医師と看護師が毒殺したとの報道をしたことはあるか」との投稿がされた。

この本は、そのツイートの真相を調べた内容だ。
現地には、明らかに肌の色が違う人がおり、しかも日本人のような名前を持つ。中には当時のことを語る人や父親との写真を持つ人さえいる。
娯楽のない場所での気晴らしは、何処も同じかも知れない。しかも相手は未成年が多そうだ。
調べる中、現地に駐在していた日本人労働者とコンゴ人女性との間に生まれた50〜200人の子どもたちが置き去りにされたとみられることがわかった。
そして彼らは今も貧困と紛争の中で父親からの連絡を待ち続けている。大半がすでに40歳を超え、家族との対面は父親の年齢的にもタイムリシットに達しようとしている。
子どもたちは、決してお金をあてにしている訳ではない。
「父親に会いたい」という願いは人の子であれば誰もが持つ普遍的な愛なのだ。

それにしても現地妻が出来て、子どもが出来たとしても、その子どもを殺すことなんてあるのか?
フランス24やBBCのレポートが発端だと言うことだが、同じコンゴ人の報告を鵜呑みにしているだけで、事実確認はされていないようだ。逆に著者は、現地に住む人と協力して直接聞き取りを行っていき、真実に迫る。

日本鉱業でも、事実確認をしてくれたそうだが、現地妻や子どもが出来たことを話す人は居なかったと言う(しかし同時現地に赴任していた人の聞き取りでは、いたとの証言がある)。ただ人道的な見地で、サポートしていきたいとも言う。

貧しいアフリカの民を相手に行ったことは、恐らく事実だろう。派遣された労働者の中には家族がいた人もいるようだ。そして一様に置き土産を残し、帰国後はフェードアウトして、なかったものとしてしまう。
この国は元来、「過去」を振り返ることを好まない。「過去」が現在、そして未来へと絶え間なく継続しているために、それを検証することも、総括することもできず、結果、何度も同じ過ちを繰り返してしまう と言う言葉が共感を呼んだ。
そして恐ろしい経験を積んできた、現地に住むシスター佐藤が語る言葉、「私は決して強い人間ではないが、人々と共に生きることに夢中だった。大切なのは何かをすることではなく、人々と共に歩むこと」「人を殺したい人なんて本当はどこにもいないの。自分が殺されるのが怖くて、人は人を殺すのよ。だからね、まずはご飯を食べさせることなのね。それは生きることと同義だから。私はあなたを殺めたりしない、そう気づかせることが、何より大事なことなのね」
深いメッセージだ。

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Posted by ブクログ 2023年05月12日

資源のない日本が目指したアフリカのコンゴ。結果として現地に置き去られた日本人の父と現地の女性の間に生まれた子供たち。丹念な取材と記者としての矜恃が生んだ懇親のルポルタージュ。日本版闇の奥。

海外メディアが報道した日本人医師が混血児を殺処分していたという記事。衝撃を受けた一記者は旧ザイール、現コンゴ...続きを読むに飛び取材を開始する。

日本の負の部分を明かす作品の場合、得てして必要以上に日本政府や大企業を捏造してでも悪者に仕立て上げるヒステリックな一面が見受けられるが、本書の視点は至って公平。筆者の強い信念が感じられ作品に厚みと信ぴょう性を増している。

筆者が取材の過程で協力を仰いだコンゴに長く暮らす二人の日本人の生き様にも感動。

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Posted by ブクログ 2023年04月18日

日本はアフリカに置き去りにした秘密。
太陽の光のタイトルにある。今後に置き去りにされた子供たちの物語。
日本工業が今後に巨大な銅鉱山を建設し、数百名の日本人が派遣され、悪戦苦闘の生活を強いられ、その結果、全部を金剛政府に譲り渡して撤退した歴史的な事実の中に、たくさんの日本人の子供たちが置き去りにされ...続きを読むた事実に驚かされた。
中でも、フランス、イギリスの報道機関により、そこで生まれた日本人の子供を、日本人医師と看護師が特撮したことを報道されていることにはさらに驚いた。様々な人々が独立間もない混乱を極める、コンゴ、民主共和国、ザイール、で銅鉱山の運営をする中で、様々な困難に直面しながら、苦闘を続けた。その一端を理解することができた。
満州国、フィリピン、の残留孤児にほとんど似ていると言う指摘、銅鉱山から原発作業員に転ずる多くの労働者集団、これが日本の縮図なのかもしれない。作者の綿密な主題と真摯な取り組み、また現地でこの問題に取り組む日本人の方々の活動に感銘を受けた。

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Posted by ブクログ 2022年12月29日

ものすごく感情的になってしまうが、父親の日本人男性たちを許せない。名乗り出て欲しい。
もっともっと責める言葉を重ねたくなるのだがやめておこう。この本が広く読まれ、残留児たちにプラスになる方向に進んで欲しい。
三浦さんのルポはどれもこれもすべて素晴らしいと読む度に思う。

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Posted by ブクログ 2022年12月25日

アフリカ、コンゴに自国の利益だけを貪って、欲望の残骸を置き去りにした結果の不幸が、日本では知られずにいる。我々の身勝手さに罪の意識を感じるとともに、捨てられた子供たちが日本人の父親をしたっていることに心を揺さぶられる。
また、ジャーナリストの良心を感じるこの取材にも感動している。たくさんの人に読まれ...続きを読むるべき本だと思う。

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Posted by ブクログ 2024年02月08日

貧困がもたらす想像以上に悲惨な状況。
人の幸福や尊厳はあまりに軽く扱われ、運としかいいようのないもので命までも左右される。
日本で生きていると想像もできない環境だけれど、そこで生きている人たちはあっけらかんとした明るさを失わず生きている。

富や権力によって他者から何かを奪うことの罪は大きい。資源を...続きを読む持たない島国に住む日本人は、その罪の重さを認識して自制しておかなければ、きっと容易く同じ略奪を繰り返してしまう。

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Posted by ブクログ 2024年01月13日

世の中知らないことがたくさんあるなと改めて感じさせられた。ノンフィクションで泣いたのはじめてかも。
学校教育で扱ったほうがいい。

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朝日新聞辞めてフリーに!

2023年11月26日

図書館で月刊作るの記事を読んで、図書館でこの本があったので借りて一気に読みました。出だしがなかなかうまい。今後に進出していた。日本工業の労働者と現地の今後人女性との間で、子供が何十人か何百人かできたけど、残留孤児として。その生まれた残留孤児日本人の意思が殺害していた。処分していたと言う衝撃的な出だし...続きを読む。まぁ結局これはフランスやBBCの誤報だということがわかったんですが、世界各国に進出した先進国が兵士や駐在員だが、現地の女性と遊んだ結婚した恋愛した。それで子供ができた。まぁでもほったらかしで日本へ帰った母国へ帰った。今後の残留日本人孤児たちは苦しんでいる。何とか日本人のお部屋を探し出して合わせてあげたい。もっと言えば資金援助させたい。どうぞ日本工業の労働者たちは現在70代後半から80代。今更そんな。見逃してやれ。このサラリーマン朝日新聞記者は自分の名誉のため、今までにもたくさんの本を出して数々の賞受賞している。サラリーマンの身分で。ザ新聞で発表できないから、こうして他の出版社から本を出して。ものすごい自己顕示欲。当然のごとくアフリカに左遷されたり、現在は盛岡に左遷されている。なぜ朝新聞はこの今後の残留日本人個人たちのことを記事にしないんだみたいな。そんなの日本工業の現在のJX金属のマスキャンダルになるようなこと、新聞やテレビレベルではなかなか報道できない。単なるスポンサーがらみではない。まぁ常識だよな。

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Posted by ブクログ 2023年02月26日

色々取材すごいなあ。日本の私大の教授って人には腹立つなあ。日本人のお父さん、1人ぐらい名乗り出ても良いのになあ。

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Posted by ブクログ 2023年02月25日

まずは、日本の礎を築く中で、この本に出会わなければ知ることがなかった、現実を知ることが出来て良かった。
真実を明らかにすることが本当にいい事なのか?読み進めながら考えさせられた。自分なりの結論は出せないままだ。ただ言える事は、この本の内容を忘れないことが、大切だろうということ、それと、この本を誰かに...続きを読む紹介したいと思う一冊だということ。

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Posted by ブクログ 2023年01月04日

ほんとうの
ジャーナリストだなぁ
と 三浦さんの著作を読むたびに
思わせてもらう

江成常夫さんが満州棄民の人たちを
ルポルタージュされた「シャオハイの満州」を
思い起こしてしまった

時の権力者が自分の都合を最優先する
歴史的な経緯の中で
いちばん弱い立場のものが置き去りにされていく
その事実に光...続きを読むを当てて
きちんと 世に提言していくことは
とても大事なことである

三浦英之さんの著作を
読ませてもらうたびに
ジャーナリストの存在意義の尊さを
思わせてもらっている

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Posted by ブクログ 2023年09月24日

アフリカだけでなく、世界中で同じことが起きているのではないか。日本人が知らない振りをしているだけで。

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