【感想・ネタバレ】水道を救え―AIベンチャー「フラクタ」の挑戦―(新潮新書)のレビュー

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Posted by ブクログ

必需品や公共的サービスで、各戸への物理的な配送を必要とするものはどれも、昭和の終わりごろまでは、ほぼ永久的に拡大トレンドが続くという根拠なき想定を設備投資における暗黙の前提としてきた。ところが、経済と人口の拡大傾向は既に終わり、現状維持と縮小を、新たに前提とせざるを得なくなり、最大時のネットワーク設備をそのままこれから先も維持することは、ほぼ不可能となっている。あとは、必要な分をどれだけ効率的に維持するかだ。
本書の著者の加藤が推進する「フラクタ」のように、座して手に入るような情報だけでDXを謳い保全の効率化を図るのは、定期交換方式のようにともすれば過剰となりがちであった保全コストを自動的に削減できるという点で一定の効果はあるだろう。しかし、水道事業は設備の固まりであることに間違いはないが、忘れてはいけないのは実際に「面的に拡がりをもつネットワーク状のリアルな」設備が核心であるということだ。いくつかのノードにおける水圧、計量から推測される漏水、設備台帳、土地形状、道路交通量などなど、AIが使えるデータはいろいろあるだろうが、「各流路設備のリアルな点検」を保全体系にうまく取り込まないと、AIが見るデータ空間と実際の設備はどんどん乖離していくだろう。おそらく失敗する。AIとDXは、リアルに踏査するデータを適切に更新することで初めて機能する。天気予報と同じだ。本書からは、その点が読み取れない。

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2022年12月04日

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