あらすじ
何もしなくても「手数料」を得られるシステムを構築した国家が覇権を握る。出アフリカから現代までの「プラットフォーム」経済全史。
覇権国家とは、何もしなくても収入が得られる国である。
多くの国は、覇権国家が形成したシステムを使用しなければならない。
それは、いわば「ショバ代」であり、国際的な経済活動に参入するために国家はショバ代を払わなければならない。それが有史以来続いてきたシステムである。
そのシステムは、資本主義の形成によって明確な形をとるようになった。近世のオランダによって明確になり、近代のイギリスによって完成した。アメリカの覇権はイギリスのそれの変形版である。
一方、中国は一帯一路により、これまでとは違った覇権を形成しようとしているように思われる。だが、それは世界の「物流」の中心となることを目指した政策である。「自動的」に利益が得られる仕組みを作り出せてはおらず、覇権国家としての中国は成立し得ないのではないだろうか。ただ、ロシア・ウクライナ戦争以後、ロシアとの「ユーラシア覇権国家連合」形成により、その結論は変わりうる可能性がある。
手数料と資本主義という枠組みから世界史を捉えなおし、覇権国家の成立条件について論じる。
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Posted by ブクログ
ジャレドダイヤモンドやユヴァルノアハラリを彷彿とさせるようなスケール感で、タイムトリップしたかのような読書。勉強になる。ただ、タイトルの手数料とか物流とかの話を切り口にしているかというと必ずしもそうではなく、基本的には経済史である。ただ、それが良かった。
プラットフォームとは、言い換えると構造的権力。覇権国が築いたプラットフォームを使用することに対し、他国が手数料を支払う構図。この覇権を歴史的にどの文明がどういう政治力学で手にしたのか、そして手放していったのか。栄枯盛衰が語られる。
イギリスは結局のところ、世界最大の海運国家としての地位を用いて構造的権力を行使した。更に世界の電信の大半を敷設することにより、それらの手数料を得るシステムを構築した。このプラットフォームにより、イギリスはコミッションキャピタリズムの国として影響力を行使した。植民地政策だけでは無い、覇権構造の勝者という事だ。シンボリックにイギリスを語る。そこから一気に遡る。
人類の起源は700万年前、アフリカの中北部、サヘラントロプス・チャデンシス。高度な文明としては、メソポタミア文明が世界最古。シュメール人は世界で最初に灌漑システムを導入した。運河を使い、一方の川から水を汲み上げそれを農地に。塩害もコントロールし農作物を生産し時の覇権を得る。
メソポタミア文明とエジプト文明がアッシリアによって統合されオリエント世界。ヨーロッパ文明の成立。民主主義発祥のギリシアはポリス。フェニキア人がアルファベットを改良し、今日まで続くアルファベットの素を作る。アルファベットは人類最大の発明の一つとして、フェニキア人の商業ネットワークを通じて多くの地域に普及。
中国では、春秋戦国時代に諸子百家と呼ばれる思想家集団が出現。儒家、墨家、陰陽家、名家、法家、道家。哲学者ヤスパースは、思想的に人類が大きく成長した紀元前500年頃を枢軸時代と呼ぶ。この頃、孔子や老子、インドではウパニシャッド哲学が生まれ釈迦が仏教を創始、イランではゾロアスター教、ユダヤ教、ギリシアではソクラテスやプラトン、ピタゴラスらが活躍。
やがて、活版印刷の改良が、文字を一般人へ。一般化され、広く使われる仕組みが覇権を取る。ハードウェア、ソフトウェアいずれにせよ、影響力の大きな発明こそ、人類を進化させてきた事がよく分かる。そして、今はデジタルの覇を競う時代にある。軍事武力による実力行使は旧世代の力学であり、経済によるプラットフォームの王冠を勝ち得た国こそ支配力を持つのだろう。