【感想・ネタバレ】台北野球倶楽部の殺人のレビュー

あらすじ

時刻表を駆使したアリバイ崩しと台湾現代史に刻まれた悲劇をめぐる人間ドラマが松本清張を彷彿とさせる傑作ミステリー。
第6回金車・島田荘司推理小説賞受賞作。

昭和十三年、日本統治下の台湾・台北市。台北駅からほど近い喫茶店「グランドスラム」では野球愛好家の集まり「球見会」の定例会が開かれていた。
日本でプロ野球が発足してまだ三年目。当時もっとも注目されていたのは東京六大学野球で、この夜も話題の中心は早慶戦ともう一つ、台湾の高雄商業学校のエース兼四番バッター大下弘だった。球見会には六大学のOBが参加していて、彼らは大下を自分たちの出身大学にスカウトすべく鍔迫り合いを演じていた。
そんな折、球見会の会員二人が別々の列車内で不審な死を遂げた。この会の唯一の本島人(台湾人)会員・陳水金は台北の北鉄新店線萬華駅で、慶應OBの藤島慶三郎は高雄駅で台北から乗車した寝台列車の中で発見された。
台北南署の刑事・李山海とその相棒の北澤英隆は高雄署とも協力し事件の謎を追う。果たして二人の死には、「明日の球界を背負う逸材」大下弘のスカウト合戦が関係しているのか、それとも……?

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Posted by ブクログ

第六回金車・島田荘司推理小説賞受賞作。台湾を中心としたグローバルなミステリー賞に日本人の作家の名を冠した賞があることに驚き。日本でこのジャンルの黎明期は、エドガー・アラン・ポーをもじった江戸川乱歩がパイオニアとして切り開き、戦後はエラリークインズミステリーマガジンという舞台で揺籃されてきたイメージがあり、常に米英の作家を仰ぎ見て育ってきたカルチャーだと思い込んでいましたが、東アジアでは日本の作家がポーやクイーンみたいな存在になっている?みたいな感じで、なんだかうれしくなりました。本作の著者は相当、松本清張を読み込まれていると思いました。松本清張が単なる謎解きではなく時代に翻弄される庶民の人生がテーマであるように本作も謎解きの面白さだけではなく。実は台湾と日本の歴史の谷間の底知れぬ闇が主人公なのであります。たまたまなのですが、ちょっと前に呼んだ中公新書「帝国日本のプロパガンダ」で台湾の霧社事件を知っていたことがこのミステリーの面白さを深めてくれたような気がします。日本の歴史からは零れ落ちていて、しかし日本の政策によって起こる事件を取り上げている本作が日本語で読めるのは島田荘司賞という賞のおかげですし、松本清張や島田荘司がグローバルなコンテンツメーカーであったことを知れたのはよかったです。島田荘司が選評に書いている推理小説の4段階(科学→アート→社会→新しい2期)の変化が資本主義社会の変化とシンクロしていることが、いま日本の作家が国境を超えることが出来ている理由なのではないか?と思いました。

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2022年10月25日

Posted by ブクログ

広島が誇る島田荘司氏の華文推理賞の作品。(過去に錚々たる作品がある)
昭和13年の台湾を舞台にしたミステリ。オーソドックスで読み始めてすぐに松本清張の世界を連想させた。社会が犯罪を産んでいた世界を。

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2022年09月17日

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