【感想・ネタバレ】防衛大学校 知られざる学び舎の実像のレビュー

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Posted by ブクログ

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 2019年日経の世論調査:日本で最も信頼できるのは、自衛隊(60%)、裁判所(47)、警察(43)。信頼できないのは、国会議員(56)、マスコミ(42)。同年読売新聞では、信頼できるのは、自衛隊(78)、裁判所・病院(67)。三浦朱門氏の防衛大学校卒業式祝辞:戦い好まば国亡び、戦い忘れなば国危うし。多くの防衛大学校卒業生は、生まれ変わっても防大に入りたい、と口をそろえる。他者のために生きるプライドを秘めた人材を育成する学び舎を校長として奉職した国分良成が語りつくした書「防衛大学校」、2022.8発行。

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2022年10月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 氏の防衛大学学長就任当時(2012年4月)は、中国による尖閣海域への侵犯行為がケタ違いに活発化したころと前後しており、日本の安全保障が大いに脅かされていた。故に、中国とのパイプを有し、中国問題の専門家である著者が任命されたのだろうと勝手に憶測していた。

 が、そうした内容は一切語られてはいない。
 むしろ、慶應大学法学部学長だったことから、防衛大学校の創設に当時かかわった小泉信三慶応大学学長および、初代学長槇智雄という福沢門下生の流れのほうが色濃かったのかと本書を読んで思った。もちろん、慶應閥でありながら、中国現代政治の専門家である著者は、その時期およびその後の東アジア情勢を鑑みベストの選択だったのだろうかと拝察する。
 また、2011年の東日本大震災や、その後の異常気候による自然災害頻発のご時世に、各地で活躍する自衛隊の復興支援が国民に広く支持される傾向にあったころに、この防衛大学長の役を引き当てた著者の強運も思わざるを得ない。

 と、まぁ大学時代の恩師の著作なだけに、防衛大学校そのものを語る内容よりも、その内実に触れる著者の立場、その思いや行動に興味がいってしまってしょうがなかったが、非常に面白く読めた。

 給料が支給されながら学べるとか、全寮制で卒業するまで外出はほとんど出来ない等の話しは、自分の学生時代もそのも後もよく聞いた話ではあるが、それだけではない、学生生活や防大の実態がより実感の伴うかたちで紹介されていた。また、卒業後の彼らの職場となる自衛隊についても、改めて、そうなのか?なるほど!と思わされる記述も多かった。

「防大はもともと理工系しか存在せず、文系が導入されたのは1974年(昭和49年)である。現在でも学生の8割弱が理系」

「陸軍士官学校は3度の戦争を行ったが、戦後の自衛隊は一貫して平和を守り続けた。これは誇りであり、防大は陸軍士官学校を超えたと思う」(同じ61年間の歴史の中で、という話)

「彼らは街に出る前に、あるいは新幹線や航空機に乗る前に必ず私服に着替えており、そのための時間と場所を確保するのが副官たちの重要な仕事の一つ」

「まだに自衛官は医療関係者、役所職員、警察官、消防士などのように「エッセンシャルワーカー」として認定されておらず、コロナ対応の仕事の現場でも自衛官のワクチン接種は後回し」

「2023年度(令和5年度)には、480名中女子の募集予定が70名から一挙に100名になる予定で、21%にはね上がる」

 などなど。閉ざされた学び舎の中での話ではあるが、一般の大学より、よほど時代の波、世相に晒されているような気もする。

 比較的、明るく前向きな話に終始しており(著者の為人がそうなので)、いわゆるイジメや上級生と下級生の関係性などには深くは立ちいっては行かない。そこはあくまで学長としての立場、高所大所から見た防衛大学の姿ということで、スマートに描かれている印象は受けた(そこが物足りない、実態は伏せられていると指摘する向きもあろうかとは思う)。

 防衛大学入門書としては、極めてよく書けており、非常に読みやすく、あらゆることがストンと腹落ちする見事な一冊だった。

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2022年11月02日

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