【感想・ネタバレ】エレクトリック・シティ:フォードとエジソンが夢見たユートピアのレビュー

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Posted by ブクログ

プロフィール写真の著者は、スティーヴ・ジョブズのように片手を顎にあてたポーズをとっている。医化学系ジャーナリストとあるが本書を著すきっかけを聞いて以降、段々考古学者に見えてきた。

自動車王フォードと発明王エジソンがタッグを組み、労働者フレンドリーな都市を創ろうとしていた事を知った著者。跡地に足を運んだ際、遺跡を発見した時のようなロマンを覚え調査を開始することに。(「近現代なのにもう遺跡扱い?」と冷笑しかけたが、よくよく考えれば100年以上も経っている…)

アラバマ州にあるマッスル・ショールズという街がユートピアの舞台。
しかし元は先住民が住んでおり、そのまた約100年前に彼らは追放されている。単身追放先から戻った女性の話は、また別の本で詳しく聞きたいくらいに驚いたし彼女と子孫の勇気には感極まった。
2人が目をつける前から街は産業が盛んで南北戦争からの復興、硝酸塩工場や巨大ダムの建設計画と、ユートピアへの下準備は整っていた。

2人の、特にフォードの半生はユートピア計画と連関しているように見える。(エジソンは全体的に影が薄かった)
彼は農家の出身だが、純粋に機械いじりが大好きで農業ではなく機械工の道を選んだ。T型フォード開発後は事業のプロモーションといったビジネススキルも発揮するようになる。不学のせいで、反ユダヤ主義といった偏狭な思想をお持ちなのは残念だったが…。(そのせいか、ヒトラーから敬われていたことも)

いつの時代の人物かすら知らずにいたが、彼の功績や人柄をこの一冊で熟知できるとは思ってもみなかった。(その代わり彼が得意とする工学系の話は熟知しきれず…汗)
自動車王と言うからてっきり某不動産王みたいな人を想像していたが、蓋を開けてみれば超庶民派だった。田舎暮らしを愛し、自動車以外にも彼を育んだ土地や人々への恩返しにと、農業機械を開発。
マッスル・ショールズを再起させる救世主としても人々から慕われ、大統領へ押し上げようとする流れまであった。(本人はそこまで乗り気でなかったところが某不動産王と違う…笑)
フォードが身を退いた後も土地開発は継続されたようだが、結局ユートピアにはなり得なかった。

不発に終わらなければ、歴史をも変える出来事になっていたのかもしれない。著者は膨大な新聞や手記の山を掻き分け、知られざる人々の存在までも照らし出してくれた。ノンフィクションなのに臨場感があって、正直読み切るのがもったいない。
この「電撃的」な出会いをひと足先に体験、日経新聞で紹介してくださった鈴木透氏(慶應大学教授)にも感謝せねば。

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2022年08月12日

Posted by ブクログ

題材としては興味深く、電力事業が経済や政治に与えるインパクトとその後の世界を変えていく力があることを、改めて認識。
フォードやエジソンのユートピアがいまだに議論しても新鮮な内容になり得る点は、今のビジネスにうまく取り込んでいきたい。

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2023年11月26日

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