【感想・ネタバレ】小説 西海屋騒動のレビュー

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Posted by ブクログ

いつも何かを求めていた。
自分の出自を知ることになり、家を出た。
兄の持ち物がいつも欲しくてたまらなかった。
家族の中で孤独を常に感じていた。
理吉は、胸の中に大きなブラックホールを飼い慣らしていたのだった。

強いものに惹かれ、自分がそれに成り代わる。
殺人を繰り返し、血で汚れた人生となる。

伐とした内容なのだが、作者「谷津矢車」の筆の力で鉄の匂いの充満する物語が、愛情を常にほっし続けた人生の幕引きを、情緒たっぷりに仕上げている。

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2021年06月28日

Posted by ブクログ

初代燕枝が新聞に連載した原作を元にした書き下ろし
この落語は聞いたことがない。

軽井沢の脇本陣の次男理吉は空虚感を持て余し、10歳で博奕に手を染めて勘当されて高崎の居酒屋の奉公人となるが、そこの主夫婦は理吉の実の母親を殺して奪った金で店を始めていて、娘”お柳”を博奕の借金で売り飛ばそうとしたため、理吉は主とヤクザを殺し、娘を連れて逃げるが、籠かきにだまされて追い剥ぎにあい、お柳は行方不明になる。
魯心という僧に救われ、半年後に江戸の西海屋に奉公するが、やり手の番頭慶蔵の悪辣な片腕となる。主人を殺して遺児を追い出した慶蔵に憧れ、その女”お連”を寝取ったものの露顕し、理吉はお連をつれて房総に逃れ、黒旋風という二つ名のヤクザとして頭角を現し、9年ぶりに江戸へ戻って廻船問屋の主に収まる。
しかし、お柳と再会しために店を失って追われ、お柳と逃げる途中で身を寄せた庵にいたのはお柳の母親で、主人殺しを責められたために殺すが、母親をかばったお柳も殺してしまう。
大坂に逃れたあと、大磯に黒旋風が営む宿屋の噂を聞いて行ってみると、慶蔵が黒旋風になりすまし、お連と一緒にいた。ちょうどそこへ西海屋の遺児武松が仇討ちに来て慶蔵を討ち果たし、ついてきた魯心から理吉の父親を殺したのは自分だと告げられ、自分のように生き直せと言われるが、理吉は自分に刀を突き刺す。

幕末の閉塞感のなか、満たされない思いの人々が、人を殺して血みどろで欲望へ走る物語。救いがなさ過ぎる。
美人画の松浦シオリの装画が、美しくて悲しい。

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2021年03月18日

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