【感想・ネタバレ】無垢なる花たちのためのユートピアのレビュー

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Posted by ブクログ

短めの小説がいくつか入ってたけど、私は最初と最後の作品が心に残った。

特に最後の作品。
今の時代の女性の生きづらさをファンタジーをまじえて表現されていて、少し苦しい。

作品ごとに文体が変わったりするので、新鮮。
どれもこれも、言葉の紡ぎ方が美しく、とても透明感を感じる文章だった。

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2023年02月01日

Posted by ブクログ

ひとつひとつの物語が、まるで私だけのために書かれたかのように、私の記憶や、心の奥にしまわれていた想いを思い出させる。

このような感想を抱くのは私だけなのだろうか?ふとそんな疑問を抱き、この感想を書いている。

もしあなたも同じような感想を抱いたのならば、この本は本物の奇跡でできているのかもしれない

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2023年01月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編集6篇
どの作品も美しく繊細な言葉と表現、詩人の感性と骨太の論理性が共存し共鳴している。
表題作の無垢な少年たちを乗せた方舟の天上へ昇っていくイメージは荘厳だ。そしてその内実のおぞましさとのギャップが怖ろしい。また「卒業の終わり」のディストピア世界、アトウッドの世界に似て女性へのあり方を突き詰めている。ラストにほのかな希望が見えるのでほっとした。
そしてどちらも思春期の引っ込み思案で友情以上の深い愛の描写が良かった。

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2022年11月05日

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ネタバレ

【連想】
誰それからの影響がある(はずだ)とか、知らぬ者に言われるのは、作者本人にとって傍迷惑なものだろうが、以下、ただの素人が連想したものの覚書。
凡人には、既知の似た作品をとっかかりにしながら感想を深めていくというやり方しかない場合もあるのです。とエクスキューズ。

稲垣足穂。
長野まゆみの作品群。
皆川博子の少女短編。
山尾悠子のいくつか(「傳説」とか)。
篠田節子「仔羊」。
岩井志麻子「女學校」。

カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」と映画版。
ルシール・アザリロヴィック「エコール」「エヴォリューション」。

萩尾望都「トーマの心臓」。
鳩山郁子の作品群。
PEACH-PIT「ローゼンメイデン」。
市川春子「宝石の国」。
石黒正数「Present for me」「天国大魔境」。
施川ユウキ「ヨルとネル」「銀河の死なない子供たちへ」。
ゲームだが、「FF9」のガーデン。

【一冊通しての感想】
川野芽生という作家を始めて見聞きしたのは、山尾悠子界隈。2018年とか2019年とか。
すげえ才気走った人がいるんだなと感じていたら、あれよあれよという間に活動の幅も広がり作品数も増え、歌集に続き小説集へと至ったわけだが、
この人は信頼できると思ったのは「夜想#山尾悠子」の「ラピスラズリ」評。素晴らしかった。
で、音声メディアや雑誌やSNSやで期待を高めた上での、本作。
素晴らしかった。
このペースで行けばきっと、傍流発でメインストリームに躍り出る、凄まじい作家になると思うし、野心に満ちている。楽しみ。
そして内容的には、やはり作者本人には迷惑な表現になるだろうと知りつつ敢えて書いてしまうが、皆川博子や山尾悠子や、さらに時空を遡ればヴァージニア・ウルフやルイーザ・メイ・オルコットやエミリー・ブロンテらが直面しては爪痕を残しながらも押しとどめられてきた穴ぼこから、強烈なジャンプを見せるはず、というか本作に収められた短編はすべてそう……回りくどい書き方をしたが、簡潔にいえばフェミニズム。
でもそれだけとは言い切れないのでは、とも思う。
ただその人がいるだけで心の平穏があるべきなのに、そうではない外界が、ある。
女性ならではとか言いたくないが、そういう歴史があり、そういう現状があるからこそ、書いている女性作家も多いだろう。
しかし作者がアセクシャルに言及している件があり、単に女対男という構図ではない。
もはや女対男という構図に回収しきれない戦いの場が、この世代の作者にはあるのだ。
作者がロリィタ短歌に関わりながらも、単純な少女趣味に回収されないよう気を配っているあたり、大変クレバー。
と、つい上から目線で書いてしまったが、こうやって慎重に生きなければならない世界を作ったのは誰よ、という告発が、作中に盛り込まれている。
上にも書いた通りだが、戦略的にならなければならない状況を作り上げてきたのは誰よ、と。
私も自覚があるが、いわゆる「マンスプおじさん」が跋扈する出版業界(編集長とか!)で、頑張らなければいけないサバイバル作家生活なのだ。
でも作者は負けないと思う。
かわしたり、歯向かったり、しながら作品を重ねてくれると思う。

【一作ずつの感想】
■無垢なる花たちのためのユートピア
まずは花尽くし。
確かPodcastフクロウラジオで米地さんんだったと記憶しているが、個人が感じる屈託や鬱屈を言語化したものよりも宮沢賢治の鉱物を図鑑式に列挙する姿勢のほうが読んでいて嬉しいと言っていた。
まったく同意。
作中人物のネーミングに法則性を持たせるのは「ドラゴンボール」でも同じだが、本作の花尽くしには作者の美意識が透徹している。
連想したのは「宝石の国」。鳩山郁子。
冬薔薇が好きだ。
■白昼夢通信
この作品、ラジオドラマで聞きたい。
朗読は中尾幸世で。
■人形街
少女に着目するか、初老の司祭にフォーカスを当てるか、は読者の年齢や性別や特性によるだろう。
もちろんどちらの視点にも寄り添える読者になるのが理想だろうけれど。
■最果ての実り
SF式仕立てでここまで美しい描写ができるとは。
■いつか明ける夜を
正直とらえどころのない作品だと感じた。
山尾悠子「傳説」も、地蟲というからには宮崎駿「風の谷のナウシカ」も思い出したが、かなり視覚に拠った描写だと思った。
■卒業の終わり
この短篇集、最初と最後が最も力作というか、ある意味で対になっている「勝負作」だと思う。
外界からの隔絶という感覚は、10年以上学校に通った多くの日本人に共通する感覚だし、その壁を出る前と出た後のギャップの感覚もまた、共感を呼ぶはず。
うっかり百合だとか無垢だとか幻視してしまいがちな中年男性としても、感じ入るもの多い。
中年男性すら巻き込む磁場を、20代の女性作家が作ってくれているのだから、なるべく邪魔にならないように読み続けたいと思う。
そんな中に描かれる、メールの文面の、短い重みよ。

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2022年09月09日

Posted by ブクログ

様々な世界観と雰囲気を持つ、それでいて作者の一本芯の通ったような、ロジカルな作風(文体ではなく世界観などの構成が)の幻想奇譚短編集。
全部で6篇ある。
全体的な感想としては、とても良い物語を読んだ!と全て読み終わってからしみじみ感動した。です。
ぜひぜひ作者さんには次回作を書いてほしい、書き続けてほしい…!そして文庫化希望です!
傍に本書を置いて何度も咀嚼して読みたい。

一番手で表題作の「無垢なる花たちのユートピア」でもう鷲掴みにされた。まさしく表題作にふさわしい。
続きの気になる終わり方だったが、これ以上彼らの物語を知り過ぎてしまうと余韻やメッセージ性が薄れそうなので確かにここで終わらせるのがいいよなぁと思いながら、やっぱり花の名前を与えられた彼らの運命が気になる…!
石井さんによる解説で、この「無垢なる花たちのユートピア」と対になるのが最後にある「卒業の終わり」であるとあったが、まさしくと言った感じだ(ちなみに私はこの2篇が本短編集の中でタイで一番好きだ)。
この2篇は幻想的に描かれながら、現代に生きる私たちに対して身近な無意識の価値観とエゴによる問題を痛快なまでに突きつけてくる。
詳しい感想は後に書こうと思うが…

「いつか明ける夜を」は、解釈がなかなか私には難しかったが、最後の描写は圧巻だった。「指輪物語」と「夢十夜」の第五夜からできていると解説に紹介されていたから、どちらの物語も(有名なのに)未読なのでぜひ当たりたい。
「人形街」も人によって幸せのあり方は違うのだ、己の幸せと他人の幸せが同じだとはき違えてはならぬのだ、己の欲望に呑み込まれてはならぬのだと読みながら感じさせられた。
「最果ての実り」は植物の少女と機械の青年の、それぞれの形の違う儚さと孤独が物悲しく、物悲しくも静かで穏やかな終わり方に、心がさざめくようであった。
「白昼夢通信」はいろいろな要素が合わさってとても面白かった。人が鬼に見えて仕方ないせいで生活に不自由のあるのばらと、竜の末裔である瑠璃の往復書簡で綴られる物語で、他にも夢の中で書いた手紙が届いたり、人形に魂が宿るからそれを抜き取る仕事があるなど、様々な幻想的な要素があって目新しい。しかしそのなかで、人と関われないのばらの生き方に、どことなくマイノリティの息苦しさを勝手に少し感じた。

一通り感想を書いたところで、備忘録がてら各話のタイトルを載せる。

・無垢なる花たちのユートピア
・白昼夢通信
・人形街
・最果ての実り
・いつか明ける夜を
・卒業の終わり



さて、ここから「無垢なる花たちのユートピア」と「卒業の終わり」の感想を書きますが、ネタバレをどうしても含むと思うので、本書未読の方はぜひ本編を先に読んでください。


・無垢なる花たちのユートピア
地上は戦争で地獄の有様を擁し、少しでも救われたいと願う人たちをふるいにかけ、選ばれた少年たち。さながらノアの方舟のように7人の導師と77人の少年たち(7歳〜17歳)は空挺に乗り伝説の楽園を探索すべく旅をしていた。
少年たちはみな花の名前を与えられ、船に乗っている間は歳をとらず、心に自分の名前を冠した花の花苑を作ることができる(むしろそれができる少年たちが選ばれたのだ)。
矢車菊は白菫をとても神聖視していた。白菫のことをほんとうの天使のようだと思っていた。
その白菫が空挺の舷から落ちて死んでしまった。
それは事故だったのか自殺だったのか…
自殺の禁じられたこの箱舟では、そのような推測をすることさえ許されない。それでも白菫のために真相を知りたい矢車菊はいろいろ危険を冒しながら他の子どもたちに聞き取りをしたり、訴えたりと行動にでる。
そんな矢車菊に惹かれる少年たちが現れ始め、思わぬ真相がどんでんと明らかになっていくのだが…
幻想的なだけでなく、ミステリーのような続きが気になってしかたない!とこちらにページを捲らせる素晴らしい話の構造になっている。
様々な真相が浮かび上がったとき、矢車菊は自分が白菫に守られ、他にも犠牲になった子どもたちの上に楽園に立っていることに気がついてしまう。
矢車菊に批判的だった冬薔薇もその犠牲の1人なのだが彼は言う。
俺たちだって、地上に17歳以上の男たちや女性たち、たくさんの人たちを犠牲にしてこの箱舟に乗って楽園に行こうとしているではないか、と。
解説の言葉を借りると、「選ばれた者を客体化するという暴力性」がこの物語に潜んでおり、それは私たちの生きる現代社会で、いやずっとずっと昔から、現実に蔓延っているものなのだ。
矢車菊もそんな現実を諦めて受け入れていたはずの冬薔薇も、冬薔薇を慕う少年たちも、そんな現実に抗うことを決める。
私たちは実際現実にあるそのような決死の抗いをする人たちを馬鹿にしてはいないか、苔にしてはいないか、黙らせようとしてはいないか。
何も行動を起こしていないものたちに、何もなかったことにしようとするものたちが、その決死の抗いを否定する権利があるだろうか。
私だって偉そうなことはとても言えたもんじゃないが、考えていきたい。様々な抗いに耳を傾けていきたい(それはもちろん自分の心の中にも)と思わされる物語だった。

・卒業の終わり
女学園で生活する少女たちの群像劇。と最初は思われた。ちなみにこの物語に出てくる少女たちも、主人公の雲雀草をはじめ、花の名前を冠している。
最初は、雲雀草と、過去ひ弱で小さくていじめられていた雲雀草に手を差し伸べ友達になった雨椿、その後雲雀草と友達ではないけれど仲良くなった月魚を中心とした、女学園に生きる少女たちの、ぐつぐつ煮えたぎるようなどろどろとした人間関係が主なお話なのかと思った。
幼いうちは優秀で人気のあった雨椿は次第に雲雀草に何もかも追い抜かれ、雲雀草に対して不安定な態度を取りながら、約束をしてまで雲雀草の友達でいつづけることでなんとか精神を保とうとしていた。
それだけでも読み応えがあった。
しかし、話は3人が女学園を卒業し、社会に出てから様々な違和感を擁し、次第に真相がわかっていく。
このあたりも表題作と同じく読者を強く惹きつける構成となっており、私が本作が好きな要因のひとつだ。
女学園の卒業生がどこにどのような基準で仕事先に配属されるのか、生徒たちには全く知らされていなかった。また、一度学園の外に出た生徒は二度と学園を訪れることはない。
雲雀草はアカデミーに、雨椿はチェーンの飲食店に、月魚は女学園に残り教師になった。
雨椿は20歳という若さで死んだ。
彼女の精神状態を知っていた雲雀草は自殺かと思ったが、どうやら病死らしい。
あの病気一つしなかった雨椿が…?
雲雀草は次第に、男性が付き合いを申し込んだら女性は受け入れて当然といった空気や、それを当然のように受け入れている他の女性職員たち、25歳以上の女性がどこにもいないことに気がついて………
真相が明かされると、雲雀草と一緒に、読んでいるこちらも一緒に脱力し、絶望し、激しい怒りを覚えた。

「生きていた、私たちは。
 生きていたよ。
 あなたたちなんていなくても。私たちだけで。」

雲雀草の当て所もない叫びが苦しい。

この世は実際常に、マジョリティの人間たちのために動いている節がある。
圧倒的少数が、弱い立場のものが、どれだけ助けを求めても、社会はもちろん聞く耳を持たない。(もちろんってどういうことだ?と書きながら思う)
それに対する反旗の物語だと思った。
そんな言葉だけでは全然足りないくらい、この物語に雲雀草の強い思いに、激しく感情が突き動かされた。
別の作品だが、佐藤亜紀さんによる「喜べ、幸いなる魂よ」という小説にメッセージ性が似ていると感じた。
ネタバレ構わんOKでこの感想を読んでいる本作未読の強者さんには、真相とは?私がこの物語の何に対して突き動かされている?どういう物語なの?と気になった方には、ぜひ本作を読んで欲しい。男女その他問わず。
これもまた、無垢なる花たちのユートピアのように、誰かを踏み台にして生きていることに気づけ、このまま弱き者を踏み台にし続けて蔑ろにし続けるのを是とするのか?と言われているような気持ちになった。
物語の最後には希望を感じた。
表題作と同様、その希望の反旗はとても小さな一歩で、彼女たちが生きている間に世間が変わるとは思えないけど。それでも絶望や思考停止で終わるのではなく、行動を起こすことが大事なのだと。
そう、感じさせられる作品だ。
現代に必要な作品だ。
読んでよかったし、改めて作者にはぜひ作品を書き続けてほしい(欲が深い)。 

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2022年08月13日

Posted by ブクログ

長野まゆみ、皆川博子のような世界観、美しい文章で好みだった。
帯も皆川さんが書かれているようで、なるほど!
と、腑に落ちた。
表題作『無垢なる〜』は、登場人物達が矢車菊、白菫、冬薔薇など美しい花の名前を持っていてそれだけで胸がいっぱいに。
冬薔薇好きだ…。
どの作品も真剣な表情で集中して読んだ。

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2022年07月14日

Posted by ブクログ

真っ白な、それでいて少し仄暗いような世界に小さな銀色のホログラムの花びらが散っているような、
読んでいるとそんな感覚に包まれる、とっても惹き込まれる作品集。

とくに表題作と、対になる「卒業の終わり」が好き。
「最果ての実り」もお気に入りです。

全ての作品を通して、ことばも文章もとにかく美しい。
歌人として活躍されている川野さんの詩的な文章は、最初馴染むまで少し読みづらくも感じたけれど、物語や世界観にぐっと引っ張られて何度も目を通していくうちにすっかり没入していた。
(私はその美しいことばたちの辞書を持っていないので、すっと入ってこない文章もあって少し悔しかった。)

表題作 無垢なる花たちのためのユートピア
歳を取らない少年たちのユートピアは果たして本当に楽園か。
1人の少年の死から徐々に明らかになる真実はあまりにも救いがなく残酷、そしてこの物語、全て語られないところで終わる。
彼は、彼らはどうなってしまったのかと思いを馳せるも、どうにも幸せな結末は思いつけない。
だけれども美しい。宝石の国を読み進めている時の気持ちに近いものを感じるし、宝石の国が好きな人はこの作品も好きだと思う(私がそうなので、という理由でしかないが)
特に冬薔薇には幸せになって欲しいんだけどな……

「卒業の終わり」では、現実離れしたディストピア的世界のなかで、現実で確かに感じたことのある女の子の友達への嫉妬や羨望や執着のような感情がまざまざと描かれる。
そしてそんな絶望的な世界の中、男性たちの人生を支え彩り散っていくためだけに社会に存在させられる女性たちの姿に、そんな一生を教育によって納得させられている姿に、主人公共々怒りを覚えずにはいられない。
希望のあるラストを迎えたことはせめてもの救いだったが、でもこの物語の「私」はもう助からないのでは……

6作すべて、幸せ円満ハッピーエンドなどではなく、なんとも救いがない。
「最果ての実り」なんてもう本当に救いがない。でももうため息が出るほど美しい。

美しく残酷な世界と耽美なことばたちにうっとり。私はとても好きです。
著者のエッセイ、「かわいいピンクの竜になる」も読んでみたいと思う。

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2024年03月28日

Posted by ブクログ

独特の世界観を繊細で独特の雰囲気がある文章が彩り、臨場感があって面白かった。独特な設定なぶん話が入りにくい部分もあったので設定を駆使した長編作品も読んでみたいと思った。

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2023年06月16日

Posted by ブクログ

表紙のような世界観の小説たち。最初と最後は対になっているかのような少年たちの話と少女たちの話。少し長め。
間の四つは短めの短編で、これまた独特の世界観。
表紙の内側、そでのところに幻想文学の新鋭とかかれていたけど、幻想!まさにその通りと思いました。
私は好みじゃないけど、こういう話が大好きな人はいそう。使われている語彙も綺麗だし、言い回しも丁寧。
オススメは中学生から。というか、中高生の一部がコアに好みそう。

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2023年06月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

美しい文章だと思うのだけれど、美しすぎて白昼夢通信が読みづらくて飛ばしてしまった。まだ私には早かったかもしれない。
表題作はなんとなく宝石の国のようだった。長野まゆみさんなんかにも通じていそうな作品たち。
「卒業の終わり」が一番読みやすく面白かったかな。閉鎖的な美しく幻想的な場所で膿んでいく女の子の友情とか、その卒業後の生活のあまりにも今に近くて違和感すらある世界なのに、当たり前のように適齢期の女性がサクサク亡くなるのに外の人間は誰もそれを顧みない怖さとか。
「女性は男性の人生の彩りのために死ぬっていうの?」「男が大事な仕事をして、女性はそれを支えて、男に愛されて。それが一番生産的だし、みんな幸せになる道でしょ」ずーんと来た。悲しい一言。容姿で勤務先を選ばれるつらさ。現代にも通じるところがある。痛烈な作品だった。この一作を読めたのはとても良かったです。月魚の選択がほんの少し希望を感じさせてくれて良かった。
また読み返そうと思います。

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2023年02月05日

Posted by ブクログ

 歌人でもある著者による初の幻想小説集。雰囲気的にも文体的にも山尾悠子をややライトにしたような感じ。作品によってはSFファンタジー感もある。著者は、トールキンなどを研究している大学院生とのことで、少し納得してしまった。山尾悠子よりはさらりと読める分、少し物足りなさがないでもない。表題作も含め、全体的にディストピアのイメージが通底しているように思った。
 表題作も悪くないが、『指輪物語』と『夢十夜』の第五夜に想を得て書かれた「いつか明ける夜を」が個人的にはお気に入り。構成が凝っていて大変良きです。これからの活躍に大いに期待したい。

【収録作】
無垢なる花たちのためのユートピア/白昼夢通信/人形街/最果ての実り/いつか明ける夜を/卒業の終わり

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2022年08月06日

Posted by ブクログ

短編集でした。
少年たちが登場する「無垢なる花たちのためのユートピア」が最初のお話なんですが、気になる流れで終わってしまったのでモヤモヤしました。

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2023年04月06日

Posted by ブクログ

はじめて読んだ、歌人による短篇小説集。どの作品もファンタジーな世界観と詩的な文章の読み心地が良かった。

「卒業の終わり」の雲雀草と雨椿の関係性が、親友から絶縁関係に移り変わるさまや、雲雀草と月魚の、ささやかながら通じ合っている関係性が良かった。

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2022年09月10日

Posted by ブクログ

楽園に一番近いはずのこの船で、あなたが見ていたのは地獄だったの?(63ページ)
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どこに行けば人形になれるだろう。どうすれば心を持たないままでいられるだろう。怨むことも憎むことも知らずにいられるだろう。どうすればきれいなままでいられるだろう。どうすれば人間にならずにいられるだろう。(150ページ)
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何を書いたら、あなたに届くのか。
何を書いたら、私がここにいることをわかってもらえるのか。
何を書いたら、私があの場所で生きていたことの証になるのか。
このありふれた惨事の中、私が書けることは、他の誰にとっても周知のことに過ぎない。
それでも私は、長いこと振り返りもしなかった日々を思い出してみようと思うのです。
命が尽きる前に。(219ページ)
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私の、大嫌いな親友。
君はどうして死ななくてはならなかった?
私はどうして君の死を悲しまなくてはならない?(290ページ)
.
生きていた、私たちは。
生きていたよ。
あなたたちなんていなくても、私たちだけで。(311ページ

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2022年08月07日

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