あらすじ
世の中には名だたる経済学の古典がいくつもある。しかしケインズは、経済学者であるからには学術専門書ではなく、パンフレットのようなものを書くべきだと述べた。経済学者は日々変化する経済情勢をつかみ取り、それに対処し続けなければならないと考えたからだ。本書では経済政策の表舞台に立った当のケインズをはじめ、スラッファ、シューマッハー、ミュルダール、セン、ハロッド、都留重人らによって書かれた様々な問題への、今こそ注目すべき処方箋を紹介。あわせて無数に枝分かれした各経済学派の特徴と、その目指すところも解説する。経済学に興味のあるすべての人へ。学芸文庫オリジナル。
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Posted by ブクログ
本書は、初出でほぼ30年間にわたって書かれた経済学的論考や経済的知見に基づく随想を一冊にまとめたもの。
一番面白いと思ったのは、「第1章 経済学者たちの処方箋」である。ケインズ、シューマッハー、ミュルダール、ガルブレイス、カップ、ハック、セン、スキデルスキー、都留重人等々の経済学者が、どのような課題について問題提起をし、いかなる処方箋を考えたかを取り上げて、簡潔に紹介していく。いわゆる主流派経済学ではない立場からの異論が示されていて、確かにそういう問題があるなと頷かされる論点が多かった。
「第2章 戦後経済学のマトリックス」、「第3章 経済学における中心と周縁」は、ケインズ経済学と新古典派総合以降の経済学、経済理論を解説し、また、主流派経済学に対する周縁からの批判的メッセージを跡付けたもの。
経済学教科書の代名詞とも言うべきサミュエルソン『経済学』の改訂状況は、ある意味経済学を取り巻く状況を写し出す鏡のようなものだったことが分かる。(学生時代に経済学を学ぶ際に読んだものだったので、個人的にも懐かしい。)
「第4章 ライフスタイルと経済」は、イギリス滞在時の思い出と経済を絡ませて、また、歳時期を巡る経済活動についてのエッセイで、気楽に読める内容だが、ふと考えさせられるものがある。
経済を通して社会の在り方を考える上で、様々なヒントを与えてくれるだろう。