【感想・ネタバレ】「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰かのレビュー

あらすじ

事実に基づかない「不安と怒り」が社会を扇動する。
デマ、フェイクニュース、流言蜚語
利益を享受するために「まがいものの正しさ」を撒き散らす奴らの正体とは――。
「3.11後の福島」で被災と「風評」の地獄を見た著者が生々しい実体験と共にこの国に蔓延する「正しさ」の嘘を斬る。
東電原発事故
トリチウム処理水
新型コロナウイルス
HPVワクチン…
恐ろしいのは危機の本体だけではない。
不安と怒りを煽る「情報」が巻き起こす「情報災害」
そしてそれを広げていく「風評加害」だ。
『現代ビジネス』『SYNODOS』『正論』など
福島在住のジャーナリストが問う
言論界が注目する、初の著書刊行!
<目次>
はじめに
第1章 「情報災害」とは何か
メディアが「引き金」を引いた
デマや流言、風評は何故発生するのか
「神が去った」時代を迎えた社会
「情報過多」は「情報不足」と同じ
「寝た子は起こすな論」
活動家がデマや差別を再生産する
「嘘も百回言えば真実となる」…ほか
第2章 複合的「情報災害」と福島
コロナ禍における「情報災害」とデマ
隠蔽、陰謀……テレビ報道による扇動
福島のトリチウムだけが害悪視
活動家の「反対」は何のため、誰のためか
福島と水俣の共通点としての「情報災害」
韓国の外交カードとしての風評扇動
陰に埋もれた「避難するリスク」
「ゼロリスク志向」が生み出す別のリスク
プロパガンダとしての「風評加害」…他
コラム:「迷信」が差別を引き起こした例
第3章 印象操作という「引き金」
「ほのめかし」報道は何を狙うのか
脱原発学習会報告「福島はレントゲン室と同じ」
差別が原因で福島空港発便がキャンセル
次世代への被曝影響を誤解させる記事…他
第4章 「情報災害」を記録するということ
福島を巡る言説は現場の声と乖離していた
「フクシマ」は忘却されるのか、消費されるのか
地域の「尊厳の喪失」から立ち上がるために…他
コラム:放置しても「情報災害」は広がる
第5章 「情報災害」と、その後「情報災害」の長期的な影響を知る
「浜焼き文化」復活の軌跡――相馬
風評加害と闘った生産者たちの11年――南相馬
ホッキメシと私の故郷――双葉郡…他
終章 教訓は生かされるのか
マスメディアが「加害」に加担する構図
元首相5人が世界に放った独善の「正しさ」
「間違いの可能性」を含んで情報を伝える必要…他
おわりに

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本人みんな必読教科書じゃなかろうか。
福島在住の著者が東日本大震災での実例を皮切りに、デマによる風評被害と被害があるなら加害者がいる=デマを広める者は加害者になっている自覚を促す。

・何故デマが広がるか
論証の確かさをいちいちチェックせずに拡散し、間違いがあったかどうかを拡散した一人ひとりが確認しない

・何故デマを広める者がいるのか
デマによって偽の権威を得るため(デマを主張してその発言に力を持たせる事で自分の売り込みたい文脈を売るため)ものによってはそのまま商売になる。

・真実であれば何もしなくてもデマに勝てるか
残念ながら真実だけでは勝てない。
デマを徹底的に否定して拡散を防ぐ、抗議することをしなければ真実は簡単に負ける。
例えばワクチン

・東日本大震災のとき美味しんぼで鼻血表現をして、それに乗っかり自分も鼻血がというデマが拡散したが、鼻血が出るほどの被曝量なら数時間で死に至る。

・マスコミはデマを拡散しても修正しない。何ならデマを積極的に拡散して、根拠のない不安を煽る。不安を煽るデマで彼らは稼げるから。

・人の不安や恐怖を煽って、【真実はこうだ】と自分だけが知っている優越感などを刺激する。デマによって真実や本当の権威をおとしめ、【自分が言説で力を得たい】がためのデマ。デマはそれを語るものに偽の力を与える。盲目的に信奉させればパワーが集まる。

0
2024年04月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

不当な批判や差別に黙って耐え忍ぶ事は西洋化・情報化・多様化した現代日本では美徳ではなくもはや害悪であるっていう話。

情報災害の歴史や情報災害全体の本かと思ったら、東日本大震災の福島に対して起こった情報災害の話だったので、いろんな意味で上手い本の題名だな、と。

ただ、被害に遭った側が時間とお金と労力と勇気を持って被害状況を訴えていかないといけない上に、さらに周りの第三者に被害者側が責められる事もあるというのは、小さな嫌がらせ事件から明らかな犯罪に至るまでの全ての被害者と加害者とそれを取り巻く第三者に通じる問題だと思った。




p. 46
たとえば、米タートマス大学教授のブレンドン・ナイアン(Brendan Nyhan)と英エクセター大学教授のジェイソン・レイフラー (Jason Reiller)は、2010年発表の論文で、デマを否定されることでよりデマを強く居じてしまう「バックファイア効果」の危険性を主張している。確かに、たとえ否定が目的であろうと、デマも含めたネガティブな情報に触れること自体が一定の葛藤や不快をもたらす。そこから生ずる反発や戦業が不利益を生むことは間違いないだろう。
ところが、この「バックファイア効果」が、そのまま「浅薄な寝た子は起こすな論」を正当化する根拠になるかといえば、それは違う。むしろ、「バックファイア効果」を声高に叫ぶことこそがデマ・差別の温床になるということを、この理論の提唱者自身が主張しているのだ。
(中略)
基本的にデマは否定すべきであり、それを怠れば、多くの人がデマを信じ、差別に加担することになる。


p. 204
「「首都圏のためのインフラ」として建設された「東京電力」福島第一原発事故で蹂調された故郷が、事故を「福島の問題」とばかりに他人事にした挙句に自分達の都合や論理ばかりを押し付けようとする人々から、さらに蹂躙されるセカンドレイプを防ぎたかった」

0
2024年03月14日

「社会・政治」ランキング