【感想・ネタバレ】日本人のための議論と対話の教科書 - 「ベタ正義感」より「メタ正義感」で立ち向かえ -のレビュー

あらすじ

議論という名の「罵り合い」からは何も生まれない
竹中平蔵型から「丁寧なデーヴィッド・アトキンソン型」への変革で、日本人の年収は150万円上がる

大手コンサルティング会社を経て、ブラック企業、宗教団体、ホストクラブなどさまざまな現場でフィールドワークを経験した異色のコンサルタントが、広い視点で指摘する「日本人の議論」「対立」「分断」の問題点を分析し、解決策を示す。
社会、会社、世界がより良くなる「対話」の方法とは??


■「右VS左」「経営側VS現場」「改革派VS守旧派」すべての対立は、「メタ正義感」の視点で解決に向かう
■社会の断絶が不毛な議論を生み出す土壌になっている
■「論破」よりも大事な「抵抗勢力への配慮」
■水と油が乳化した「マヨネーズ」の状態を作れ
■竹中平蔵とデーヴィッド・アトキンソンの違いとは
■「コロナ議論」から見えてきたもの
■日本特有の「出羽守バイアス」とは
■「右の陰謀論」より「左の陰謀論」が深刻な理由
■「欧米型の理想の絶対化」が生み出す分断を超えるために(本書の内容より)


【著者プロフィール】
倉本圭造 (くらもと・けいぞう)
1978年神戸市生まれ。
兵庫県立神戸高校、京都大学経済学部卒業後、マッキンゼー入社。
国内大企業や日本政府、国際的外資企業等のプロジェクトにおいて「グローバリズム的思考法」と「日本社会の現実」との大きな矛盾に直面することで、両者を相乗効果的関係に持ち込む『新しい経済思想』の必要性を痛感、その探求を単身スタートさせる。
「今を生きる日本人の全体像」を過不足なく体験として知るため、いわゆる「ブラック企業」や肉体労働現場、カルト宗教団体やホストクラブにまで潜入して働くフィールドワークを実行後、船井総研を経て独立。
当初は誰もに不可能と言われたエコ系技術新事業創成、ニートの社会再参加、元会社員の独立自営初年黒字事業化など、幅広い「個人の奥底からの変革」を支援。
著書に、『「アメリカの時代」の終焉に生まれ変わる日本』(幻冬舎)、『21世紀の薩長同盟を結べ』(星海社)、『日本がアメリカに勝つ方法』(晶文社)、『「みんなで豊かになる社会」はどうすれば実現するのか?』(Amazon Kindleダイレクト・パブリッシング)などがある。


発行:ワニ・プラス
発売:ワニブックス

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

元マッキンゼー、現在は中小向けコンサルを手掛ける著者による「本当の対話」「具体的な問題解決」を実現するための教科書、とのこと。
個別のエピソードや考え方等、良著だなぁと思いつつ、結論から言うとイマイチ個人的な問題意識には刺さりませんでした。なんでだろう…と思いを馳せてみると、下記要因があるのかなと思いました。

①自分に必要なのはこの手前?
②マクロ例にフォーカスしていて日常と乖離?

①自分に必要なのはこの手前?
本著の冒頭、問題解決のためにはメタな視点を持つことが重要、ということで著者の「メタ正義トライアングル質問表」というフレームワークが登場します。
その第1問目「あなたが殺してやりたいほど憎んでいる敵は誰ですか?」
・・・・・いない(笑
そんな狂おしいほどの感情は持っていないけど、現状に満足している訳ではなく、むしろ問題を認識して敵を特定することで、ひょっとするとそれほどの感情に至ることができるのかもしれない。。
そうなると、自分の問題意識は本著のスコープの外にある気がしました。と言うか、毎日そこまで強いネガティブ感情を抱えてはいられないなぁとも。

②マクロ例にフォーカスしていて日常と乖離?
第2章からは、具体的に議論が対立している事例を取り上げて著者の考え方を当てはめていきます。
ただ新自由主義的な話であったり、コロナ禍の病床対応の話であったり、どうにもマクロだなと…。本著のタイトルに「日本人のための」とあるのはつまりそういうことかとも思いました。ネットで発信している右翼/左翼層に「教科書」というワードが果たして刺さるのかわかりませんが…。(そもそもわかり合おうとしていないのならそこにニーズはない気も)
東京新聞の望月記者のツイートを「反権力を叫べるなら中身はどうでもいい型陰謀論」として事実誤認を指摘しているのはまぁファクトだなぁと思いつつ、これも私が求めている日常の問題解決とは別のフィールドの話だなぁと感じました。

本著、著者が本来読んでほしい層に届くと良いのですが…。

0
2025年08月17日

Posted by ブクログ

右派と左派で議論が両極端になる場合、政治レベルであれば、国の分断を生む。そこまででなくても、企業や個人どうしでも、経営が行き詰まったり、絶縁関係になることもある。両者の良いところどりは、中途半端な結果になる。
必要なのは、メタ正義。個人的な認識ですが、もう一つ上の目線で、相手の意見をみることかなと。
敵の存在意義を知ることで、こちら側の陣営に取り込んだり、でなければ、静かに退場頂く。
アメリカの様に、トランプVS反トランプの様に、表面的な対立が現れると難しいかもしれないが、メタ正義の視点に立ってみれば、事前に防げるかもしれない。

冒頭のスラムダンクの安西監督の「私だけかね。まだ勝てると思っているのは」
閉塞的な日本で、簡単に浮上することは簡単でないかもしれませんが、自民党をぶっ壊すの様な、心地よいワンフレーズで、拍手喝采を送るような政治は必要ないかなと感じました。

0
2022年04月10日

Posted by ブクログ

p7 こんなやり方で世の中を帰ることなどできない。そうやって気に入らないものに石を投げつけているだけなら、成功にはほど遠い 2019/10/29 シカゴ、オバマ氏

p8 カズオ・イシグロ 世界中の恵まれた立場にいる同じ仲間とだけ付きあう横の旅行でなはく、同じ国に暮らしている、普段は考え方や生活の違いから接することの少ない人と出会う縦の旅行こそが今重要なのではないか

p12 みんな自分の立場から見える世界観でしか問題を見ておらず、自分とは逆の立場にいる人との対話関係が完全に途絶してしまっているので、ワアワアと責任をなすりつけ合う罵倒合戦だけが続いて疲弊しているのだ

p29 論破よりも大事なのは、抵抗勢力を理解すること
最終的には、あなたの理想をちゃんと押し切って本当に実現するためにこそ、むしろ初期段階でちゃんと相手側の敬意を払っておくことが大事なのだ

p34 本書の狙いは、社会の中で何かを変えていくプロセスを、平成時代の「抵抗勢力をぶっ壊せと叫ぶ方式」よりも「あと一歩丁寧に」行うことで、「改革によって排除された存在」が恨みを溜め込んでありとあらゆる細部で邪魔をしてきて、どこにも進めなくなるような事態を招かずに済む、そういう方法を示すことにあります。

p96 発酵食品を作るようなプロセスで、市場(水の力)と現場(油の力)を混ぜ合わせながら統合を進める動きです

p112 脊髄反射で湧いてくる紋切り型の議論は、どれも幽霊相手にケンカをしているような空疎な議論なのです

p116 全なる俺たちvs絶対悪のあいつら的な空論で大騒ぎする人たちから、日本社会の主導権を取り戻していく

p127 極論を言う人との適切な距離感が大事

p128 極論を言う人の中には社会に対する憎悪の塊みたいになってしまっていている人もいて、ついつい黙殺してしまいたくなります。しかしメタ正義感覚を持って、彼らの存在意義を自陣営に取り込もうとしないと、彼らは恨みを溜め込んで延々と自分たち以外を攻撃し続けるでしょう。
 社会全体が、メタ正義体質化するためには、自分たちだけのベタな正義を主張する人々の意見を拒否しないで、その存在意義をメタ正義的に取り込んでいくことが必要となります。

p136 政府を批判するにしても、現状認識が正しくなければ、対処を間違える、ということです。政府が間違っているなら、どの程度の問題なのかを適切に情報として取り上げなければ、政府批判派がどんどん現実離れしていくからです

p138 今の日本にはこういう反権力を叫べるなら中身はどうでもいい型陰謀論があふれています

p141 そういう防波堤としての暴論に出会ったときに、その暴論の内容にロジカルに反論することよりも、彼らがそういうことを言う理由の方を深堀りすることが重要です

p150 次々と変化していく情勢に応じて、常にこういう対話を社会のあちこちでできれば、どちらの事情も吸い上げて進歩していくことができたはずです

p157 私達のこれからの課題は、今隅っこにおいやられてしまっているちゃんとメタ正義的対話ができる層が、世の中のすべてが権力闘争に見えるビョーキの人たちから主導権を取り戻していくことです

p159 「そもそも論」的なレベルでなぜこうなるかと言えば、結局そういう「極端な理想主義者」の意見を、「現実とすり合わせて細部まで詰めていく」存在が今の日本にはだれもいなかったからでしょう

p188 モンスター化する論客さんたちの自業自得の自滅効果をうまく利用することで、彼らをシグナルとしての異端者の場所でうけとめることができるようになる

p190 先鋭化した理想に減速ギアを入れることが必要

日本が地道に築き上げてきた高効率石炭火力発電を適ししすぎないことが人類全体として大事なんだ

p195 現在の日本の理想家は、理想を重視するあまり、ダメだった時ようのプランを考えてくれるはずの存在を敵視し攻撃してしまいがちです

p211 俺たちvsあいつらを完全に分離する欧米的なやり方自体が、そういう意味では完全に失敗していることを我々は直視すべき時代なのではないでしょうか

p212 オオクニヌシは苦労しながら国造りを実際に行った一番の功労者なのですが、国譲り神話では出雲に引っ込んでしまう神様でもあるのです

p213 敵を完全に征服せず、一緒に協力し合うことでお互いを受け入れるという解決のあり方が必要とされる時代が、世界的にやってきていると私は考えています


p211 神田明神(千代田区外神田) 将門塚(千代田区大手町)

0
2022年02月20日

「ビジネス・経済」ランキング