あらすじ
「人生は神ゲーだ」「クソゲーだ」「人生はゲームじゃない」――人生について考えるのは難しい。人それぞれに意見は違う。「答え」がなさそうだから生きるのはつらい――でも、「答え」は出せる! わけの分からない人生を生き抜くために、思考の「根拠」や「理由」をひとつひとつ自分で掴みとる練習を始めよう。
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Posted by ブクログ
タイトルの「人生はゲームなのだろうか?」という問いを出発点として、哲学のやり方をなぞっていく本です。
本書の構成はパートⅠ~Ⅳに分かれます。
パートⅠ:「ゲーム」の分析(必要条件の検討)とその条件への「人生」の当てはめ
パートⅡ:「ゲーム」の分析のブラッシュアップ(十分条件の検討)
パートⅢ:「人生」の分析
パートⅣ:不確定で見通せない「人生」をどう変えるか(宗教、金、教育、恋愛)
タイトルの問いに対する答えはパートⅠで一応出ます。
ただし、内容的なテーマとしては、「ゲーム」よりも「人生」の問題の方に重心があります。
また、別角度から言うと、本書を読むことで、哲学のやり方を読者に体験させるという目的もあります。
だから、「人生はゲームなのだろうか?」というタイトルは、まあ掴みみたいなものです。
哲学の方法論として、①概念分析して、②その分析結果が問題ないかを論証する、③その論証を踏まえて概念分析をブラッシュアップし(以下繰り返し)のような流れは、色々な本で見かけます。(①②③…を通じて対話で行われたり(ソクラテス=プラトン→パートⅢ第10章)、②のところで思考実験が出てきたりといったバリエーションはありますが。)
ただ、そうした方法論は当たり前なので大抵省かれるのですが、パートⅠ第2章でその点に解説を入れているあたり、しっかりちくまプリマー新書しているなと思いました。
しかし、本書後半の「人生」とは何なのか、「人生」をどう変えるかというテーマは、まさに哲学って感じです。
何度も読み直して、自分の頭の中で考え直すに値する内容になっています。
議論の精緻さという観点からすると、ところどころ緩いです。
例えば、パートⅣ第15章「『マネーゲーム』って、株式投資とかのことを言うようですが、学生さんが考えているのはもう少し広いもののようで」と前置きしてから、「マネーゲーム」はゲームじゃなくて「仕事なのです」と結論付けます。
これは流石に「いや、そこはまず万人共通の『マネーゲーム』という語の必要条件の話をしようよ。実業まで含めたら、そりゃ仕事にしかならないでしょ」とツッコみたかったです。
多分「マネーゲーム」の必要条件は、投機が可能な資産売買であるはずです。そうであれば、売り買い・貸し借りしかできないというルールはある。ルールはあるが、何億円の資産を築くといった万人に共通のゴールがない。終わりがないから、ゲームじゃない。そもそもマネーゲームの終わりと人生の終わりは同じものなのではないか…といった議論の流れになるべきだったと思います。
まあ、こうやってツッコまされている時点で、まんまと哲学させられた、筆者の掌の上だったということなのかもしれません。
文体は平易な話し言葉で、教室で講義を聴いているような感じです。
例えば「『ゲームとしての宗教』の場合には、プレイヤーである信者のプレイ態度、つまりは信仰心なのです」(p.182)という言葉遊び(playとpray)は好きです。
この文体だからこそ、言葉遊びに気付けるというか。
逆に、何回か出てくる「ふふっ」とか「ははは」といった言い回しは、読み方によってはあんまり印象良くないかなと思ったりもします。
あと、専門用語をできるだけ避けているように見えます。例えば「概念分析」のような哲学用語も出てきません。
専門用語によって語の意味を精緻化するよりも、言い換えを多用して、読者に議論のイメージを深めさせるのを重視していると感じました。
ケチをつけるようなことも書いてしまいましたが、私はこの本をとても興味深く読ませていただきましたし、とても面白い本だと思っています。
Posted by ブクログ
人生はゲームかを明らかにするための考え方を示した本。まず前提を定めそれに当てはまるかどうかで結論を導き出す考え方は他にも活かせそう。本書でも受験、掃除、戦争、宗教、恋愛など取り上げて分かりやすい。先生に教えてもらっているのに、一緒に考えているような「我々はこう考えました」と言う語り口の文章で読みやすいです。巻末に読書案内として掲載された参考文献も読んでみたい。
Posted by ブクログ
明晰かつ判明に人生はゲームなのかについて哲学している本。
独特な語り口のおかげなのか内容が頭に入ってきやすい。
以下、印象に残った部分をまとめる。
・対話は討論とは違う。意見をぶつけ合わせ勝敗を決めるのが討論、対話は意見を言い合い、案をより良いものにしていくこと。
・人生の中で自分が得意なゲームを見つける。無理に自分のしたくないゲーム、苦手なゲームに参加する必要はない。
Posted by ブクログ
本書はまさにタイトルのとおり、「人生はゲームなのだろうか」という問いに答えていく作品である。
問いに対して前提を立てて整理したり、問いの要素を別の要素に変えた時に新たにわかることをきっかけに見解が深まっていく様子が読んでいて非常に楽しいし、議論の過程でなんとなく感じるモヤモヤが言語化されていくのは快感だった。
また、案外意見の影に隠れた前提が潜んでいるということも改めて学ぶことができた。
タイムリーなことに私は直前にちきりんさんの「自分の意見で生きていこう」を読んでいた。
それと絡めると本書では根拠や理由のない意見には意味がないともっともな指摘がされており、より強固な意見にするための思考方法を本書では追体験できる。
自分が大学の教養で哲学を学んだ時は、XXXはこういう考えを提唱したといった知識を伝達する形式だったこともあり、本書のような考える機会を授業で受けられるのは学生が素直に羨ましいと思った。
参考文献も充実しているので、それらにも手をつけていきたい。
Posted by ブクログ
立命館大学などで教える思想史・倫理学研究者の平尾昌弘による口語体の新書。著者の専門はスピノザやシェリングや贈与論とのことだが、『なぜ論文を〈です・ます〉で書いてはならないのか : 日本語からの哲学』といった論文や、本書『人生はゲームなのだろうか?』のような身の回りの疑問に答えるような著作も多く持っているようだ。本書の内容は、「人生はゲームか」という問いに対し、哲学的に答えを出していく道筋を読者にデモンストレーションするものである。つまり、①ゲームとは何かの定義付け、②人生はゲームの定義に当てはまるかの検討、③様々な反論に答えながら定義を修正、④前段のステップを踏むことで本論とは関係ないところで見えてくる含蓄の確認、というような構成となっている。この本を読むことで、今後自分で「哲学する」という感覚を少しでも掴めるようになると思う。また(特にコンピューターゲームや最近のインターネットミームなどに馴染み深い人は)、直観的に哲学の面白さを感じることができると思う。また、哲学は当たり前と思われている何かが何かである理由や条件をはっきりさせることで、より明確に議論をしたりこれまで気づかなかったことに気づくようにしたりできる、ということの意義を理解できると思う。
本書の秀逸な点は、哲学の論証を簡単に説明し、やってみせ、やらせてみて、想定される間違いを指摘し、そして一連の流れを通して哲学論証の意義を体感させている点である。
なお本書では、事実の問題と実践の問題(descriptive vs normative?) の区別などの議論を明確に整理する上で必要な考え方を紹介していたり、ルールの区別(自然の制約、手続きで定めるルール、理由ある道徳、デファクトスタンダードとしての常識)など、ほかの研究をする際に広がりを持つ議論の一端を示していたりするので、簡単に読める本であるが、同時に読者の今後にむけて広がりが大きい本でもある。
Posted by ブクログ
哲学とはそもそも何か。
思想家の考え方を学び、分類するのが哲学ではない。哲学とは、自分で考え「続ける」ことなのだ。
その題材として、取り上げられているのが、「人生とはゲームか?」というものであり、本書では、そのテーマに対して、一冊まるごと取り組む、という意味で面白い。
では、「人生はゲームなのか」と問われたときに、まずは単語を分解しなければならない。
私たちは、普段、言葉を無意識のうちに使っているけれども、こうした命題に対しては、そもそもの定義が曖昧だと、それに対する答えというものは大きく変わってしまう。ゲームがいわゆる「テレビゲーム」なのか、それともスポーツで言うところの「ゲーム」なのか。
そうした、言葉の意味を捉え直してみるというプロセスから、それが正しいのかどうかを展開、判断していく。
今ここで書いたのは、哲学することの序盤であり、この本では深く深く丁寧に進められていく。
考えることは、非常に難しい。「ちゃんと考えました」というのは、実は何も考えてないのかもしれない。丁寧に捉えたつもりでも、掬い上げた両手からこぼれるものは多い。
『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 (光文社新書)』 の考え方に近いが、知っている「つもり」になっているものは自分が思っている以上に多いのかもしれない。
良いか悪いかは別として、意味を考えることもなく素通りできる、もしくはできてしまう毎日に、考える習慣を身につける。
そんなきっかけを持つための一冊。
Posted by ブクログ
これまでの著者の作風と同様、「哲学を学ぶ」のではなく、自分たちで「哲学する」ために、「人生はゲームといえるか?」という命題について著者とともに考えていくという作品です。
一つずつ丁寧に思考を重ねていき、後半になるほど、人生について深い考察を展開していくことになります。
宗教、マネーゲーム、教育、恋愛なども考察対象に取り上げながら、それらと関連させて多角的に人生の本質に迫っていく流れは巧みです。
高校生や大学生には是非一度読んでほしいですし、生きていることに息苦しさや窮屈さを感じている社会人にも読んでみてほしいですね。
Posted by ブクログ
ネオ高等遊民さんのYouTube(5000円5冊で始める哲学入門)で紹介されていたので読んでみた一冊(5冊紹介されていたので、一冊目)。
哲学書はあまり読んだことが無かったのですが、予想通り一冊を通じて考え続ける内容でした。タイトルになってる事を考えていく内容なのですが、深く、広く物事をみていく、考えて行くもので、普段使わない頭を使います。
ゲームとは何かの条件定義し、人生にそれを当てはめて終わりではなく、その他の事柄にも当てはめる、その過程で条件を再考する、といった流れで書かれています。読みやすくはありますが、少し流すとわからなくなります。
Posted by ブクログ
本書は「人生とは何か?」という基本的だが普段あまり考えない問いについて、人生をゲームにたとえ、考察することを提案している。
各問に対する自分の考えは下記の通り。
人生とは何か?という問いに明確に回答できる人は少ないと思う。自分もそう。何から考えていけば分からず、思考停止してしまう。ただ、ゲームに置き換えれば、とっつきやすくなる。
人生というゲームのルールはなにか?
→与えられた身体、仕事、お金でどれだけ自分、そして他人を幸せにできるというゲーム。きっと法律的に禁止されていることはあるが、それも時と場合によるだろう。このルールは人によって違うもの。そしてそのことすら考えずに生きている人の方が多いのではないかと思った。またルールは固定されたものではなく、時間と状況によって変化するもの。ただ、それもこのゲームの醍醐味なのかもしれない。
主人公は誰なのか?
→もちろん自分。ただ、周囲の人間関係から様々な物語があるわけで。主体的に生きることが大事かも。
攻略法はあるのか?
→完全な再現性があるものは少ないが、それでもありそう。
書籍等で過去の偉人たちの知識を使ったり、試行錯誤して編み出していくのもゲームの醍醐味なのか。
ゲームオーバー(死?)とは?
そもそもなぜゲームをするのか?
→知らない間にゲームが始まってしまった。それならゲームオーバーまで楽しむとしよう。諸行無常。
人生には明確な正解はない。ただ意味を見出すことはできる。そのきっかけになるよい本であった。
Posted by ブクログ
「人生はゲームかどうか」というタイトルと切り口で、人生論の話かと思ったら哲学の話だった。
そもそもゲームって何?人生って何?とそれぞれを成り立たせる要素を抜き出して定義をはっきりさせ、それに当てはまるか当てはまらないかで考えを進めていく…という手順を読み進めるのが楽しかった。
人生は中も外も始まりも終わりもないもの、自殺はゲームをするかしないかの選択をやめること、という考えが心に残る。
Posted by ブクログ
人生はゲームだ。
仕事はゲームだ。
巷ではこういう切り口の本が売られています。
そこで感じた違和感は、「いや、人生/仕事はゲームみたいに単純じゃないだろ」
じゃあ、人生/仕事でうまくいっていない自分は、ゲームみたいな単純なものを攻略し損なっているダメ人間なのか。そう、言われているような気さえしてきます。
本書では、ゲーム(ビデオゲーム以外も含む)の定義を挙げ、人生そして受験や恋愛などがゲームであるか、比較し論証していく形式をとっています。
結論はここでは言いませんが、普段私たちが頭でものごとを考えるときには、数秒で答えがでるような浅い考え方をしがちです。
本書では、論理的に筋道立てて議論を進めていくことで思考を深め、納得できる答えを得ることができました。
哲学というと「うっ」と抵抗をかんじてしまいそうですが、本書は話し言葉の文体なのでYoutuberのトークのように気楽にすいすい、そして楽しく読めてしまいます。
僕のように「人生はゲーム」論に不快感を感じる方、またゲームってなんだろうと思っている方におすすめの一冊です。
Posted by ブクログ
今頃こんな中高生の本を読んでいるのは小中学時代野球とTV、ゲームに明け暮れ、ほとんど読書に取り組んでこなかった。
というより歳をとって成長したからわかるようになっておもしろがって読めるようになった。
ということだと思う。
ゲームが大好きな人に考え方を教える本。
大好きだったら面倒なことも少しは考えられる。いろんな前提や根拠を示すってとても面倒。だけど人に説明するには必要。
結局ゲームの定義が何かに尽きる。
ゲームを[1]プレイヤーが目指すべき終わりが定められていて、かつ、[2]プレイヤーにできること・できないことが定められている人間の活動である。[3]「人の役に立つから」という理由も「自分の得になるから」という理由もなしに、ただ単純に、参加したいというほかには何の理由もなしに、自ら進んで参加するもの。
と定義している。
作者は
人生は⑴に当てはまらないのでゲームではない。というが⑵にも当てはまってないと思う。
宗教は⑴⑵を満たしているというが果たしてそうだろうか?飛躍しすぎだと思う。
Posted by ブクログ
「人生はゲーム」というフレーズは、自分にとっては「スローなブギにしてくれ」が最も印象的かな。そしてなかなか印象的なフレーズだ。本当にそうなのかなという意味でも。
そんな積年のほわっとした疑問の答えを求めてこの本を読んでみた。何となく「人生はゲームなのだろうか」という命題について考えを巡らせていく感じかと思いきや、サクッと哲学的な理屈でわりと前半で「ゲームじゃない」ってことになっちゃう。ゲームの条件は「ルールやマニュアル」と「目的、終わり」という必須条件があるけど、人生はそれを満たさない……らしい。……というか、このへんあまりよくわからないまま読んでしまった気がする(読めたことになってないけど)。
そして、そもそも「人生はゲーム」だと思う人にとってはゲームだし、そう思わない人にとってはゲームじゃないんじゃないの。それでいいんじゃないのとも思った。
ちくまプリマー新書のテイストなのか、難し気なテーマをおしゃべりのようにへんなのりツッコミとか入れながら進んでいくのが何だか鼻についちゃう。先生だけが面白いと悦に入りながらスベってる授業を聞いてるみたい。
Posted by ブクログ
人生はゲームだと思う人?とアンケートを取ると、6:4ぐらいでゲームじゃない派が多い。
まずは、そもそもゲームとは何か、人生とは何かを定義する必要がある。
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我々はそうした隠れた前提みたいなのがあることを忘れがちです。あるいは「常識」と思って言わなかったりする。これこれ! これが曲者なんですよ。だって、こっちが「そんなの常識だろう」って思っていても、相手がそれを分かってくれなかったり、逆に、予想もしてなかったことを「こんなの常識でしょう? 知らないの?!」と責められたりすることもよくあるからです。
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まずは概念を取り出す。
ゲームの概念、ゲームにとって何が大事なのかを取り出す。
ゲームはリセットできる?野球の試合とかもゲームと呼ぶならリセットできない。
ゲームにはルールや目指すべき目標があるが、人生にはルール(法律は別として)や生まれ落ちた時に目指すべき目標はない。