【感想・ネタバレ】デカルト 「われ思う」のは誰かのレビュー

あらすじ

本書は、現象学を土台にして幾多の哲学者や思想家を扱ってきた第一人者が「近代哲学の祖」ルネ・デカルト(1596-1650年)との「対話」に挑んだ記念碑的な1冊です。
よく知られているように、デカルトはあらゆる学問を修めた末、そこに自分が求める「真理」はないことを悟りました。そうして「世界という大きな書物」と向き合うために旅人として生きることを選んだものの、やはりそこにも「真理」を見出すことはできませんでした。そうしてたどりついたオランダの地で、まさに生死を賭けた思索に取り組むことになります。それが、少しでも疑いうるものはすべて斥けて「絶対に疑いえない」ものを目指す「方法的懐疑」と呼ばれる思索でした。
その過程でたどりついたのが「われ思う、ゆえにわれあり(私は考える、ゆえに私は存在する)」という、よく知られた命題にほかなりません。しかし、それは決してデカルトが到達した最終結論でもなければ、デカルトが求めた「真理」でもありませんでした――本書は、そのことを哲学者との真摯な「対話」の中で明らかにしていきます。この命題はデカルトにとっては通過点にすぎず、方法的懐疑が導き出したのも「近代的自我」とされる「私」では決してなかった。ならば、その思索はいったいどこに進み、何を明らかにしたのでしょう?
本書は『方法叙説』(1637年)と『省察』(1641年)という二つの主著をていねいに読み解きながら、驚愕すべき結論に向かっていきます。著者とともに歩んでいくことで、「哲学」とはいかなる営みなのか、そして本当に「考える」とはどういうことなのかを実際に体験することができるでしょう。

[本書の内容]
序 章 哲学とは何か
1 死んだものとの対話
2 「よき生」のために
第一章 「われ思う」のは誰か
1 夢
2 狂 気
3 「私」とは何か
第二章 「われ思う」に他者はいるか
1 観念の起源へ
2 「無限」ということ
デカルト小伝
読書案内

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Posted by ブクログ

デカルトの解説書としては134ページと比較的薄くて、しかも発行日が2022年2月8日と比較的新しいため、手に取りやすい(ただし、あとがきにて「本書はデカルトの解説書ではない。」と明記されているため、この評価も適切ではないかもしれない。)。
本書では主にデカルトの有名な言葉「私は考える、ゆえに私は存在する(我思うゆえに我あり)」について、『方法序説』『省察』『哲学原理』からの引用を使って、主張の経緯や「我」とは何か、そしてデカルトによる神への言及への見解について述べられている。一方で方法序説で有名な4つの規則については特に言及されていないため、デカルト哲学の中でも一段と哲学らしい領域にフォーカスしていると言える。
序章と第一章の最初までは読みやすかったが、第一章の中盤から第二章になると主張や表現がよくわからなかった。「シリーズ・哲学のエッセンス」の性質上、著者がデカルトに対する理解と論を書きたいように書いたものになっており、デカルトの解説という立場ではわかりづらいものになっているように思う。著者のファンであれば前向きに読めるだろう。
なお、巻末のデカルト小伝と読書案内の章はシンプルに情報がまとめられており、デカルトの入門者に広く有益と思われる。

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2022年12月19日

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