【感想・ネタバレ】転落・追放と王国(新潮文庫)のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

大学生のときにゼミで扱った短編集。どれも文学的に工夫がこらされた作品ばかり。カミュがこの短編すべてを書ききるのに10年以上かかった。というのも異邦人、ペストでの成功後、自分の才能の枯渇を覚えたからだ。タイトル通り追放から王国までを綴ってある。この後ノーベル賞を受賞し、遺作となる「最初の人間」を書いたまま交通事故で他界してしまう。なんとも哲学的で悲しくも美しい作品集。

難解だが歴史や哲学を知っていると読み解くことが出来る。「背教者」は、キリスト教の伝道者が未開の地に赴くが、逆にその地にある宗教に暴力によって改宗させられてしまう。伝道師はすっかり心を奪われ次に訪ねてくる伝道者を叩き潰すように待ち構えるという話である。

この伝道者はカミュが当時論争をしていたサルトルをモチーフに描かれている。サルトルは当時、目的のためなら暴力も止むを得ないという思想を持った共産党員となった。そのことをカミュは風刺したのである。伝道者は、現地の未開人に舌を引き抜かれてしまうのだが、舌はフランス語でラングと言い、また言葉という意味も持っている。つまりカミュはサルトルが言葉を失い、暴力に染まったことを描いたのである。

また未開人たちが崇めている金属の偶像があるのだが、この偶像は当時鋼鉄の男と言われていたスターリンを表している。このように歴史的な文脈を知っているとまた違う読みの楽しみが味わえる。

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2012年12月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

転落とその他短編がいくつか載っているが、転落のみを読む。多分読むのは二回目。

上流階級にいた人が、人生のむなしさを感じ、自らの意思で浮浪者のような暮らしをする。というのがそもそもの粗筋かな。

粗筋からして低俗な感じは受けるが、結局それがカミュの魅力なのかもしれない。
カミュの場合は、人間の暮らしに近いところを書いていて、人間とは何かとか正義とは何かとか、にはあんまり近寄らない。だからこそ、悩んでいるときや青春時代に読むと感動するのではないかと思った。

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2022年05月21日

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