【感想・ネタバレ】天才株トレーダー・二礼茜 ブラック・ヴィーナスのレビュー

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Posted by ブクログ

 資金難に苦しむ人からの依頼を受け、株取引を行い利益をもたらす投資の女神。ただし報酬は依頼人の最も大切なもの。
 そんな「黒女神」の異名で呼ばれる二礼茜の活躍を描く経済サスペンス。シリーズ1作目。
 第14回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
            ◇
 その日、二礼茜と百瀬良太は金沢市中心地の百万石通にあるカフェのテーブルで向かい合っていた。

 良太は「金融商品取引法」を盾に取り、他人に代わって株取引ができるのは役所に登録した業者だけですよと、真面目な口調で釘を差している。けれど茜はどこ吹く風だ。
 登録業者なら確実に利益を上げてくれるのか。業者が損失を出したら役所は資金を保護してくれるのか。大切な資金を預けるのなら少しでも儲かる業者に任せるのが当然ではないのか。
 茜の反論に良太は返すことばがない。
 なら「金融商品取引法」なんてつまんない法律ねと茜が駄目を押して、この話題は終わった。

 良太が黙り込んで間もなく、窓の向こうにある証券会社の株価ボードの数字が動いた。
 茜が口にしていた銘柄のみが大きく値を上げている。それを見ても茜は表情を変えず、そろそろ行きましょうと良太を促したのだった。 ( 序章 ) 全4章と序章および終章からなる。

       * * * * *

 茜と良太の出会いから描かれるため、2人の関係がわかってすっきりしました。 ( 2作目を先に読んだので……。)

 茜は、資金不足で窮地に陥った人の依頼を受けて株取引を行い短期間で利益を出すという、言わば資金調達代行業をしています。
 けれど、誰でも茜に会えるとは限らないことや、茜の要求する報酬が依頼人にとって痛みを伴うものであること、その代わり茜が請け負った投資のリターン率はかなり高いものであることから、ニ礼茜はいつしか都市伝説化し「黒女神」と呼ばれるようになりました。
 そんな茜が受けた仕事の依頼人が良太の兄だったところから、2人の縁が始まります。

 良太はもとメガバンクの行員でした。融資を通して誠実に事業に取り組む経営者を支えたいという思いから選んだ職業でしたが、そのような公益精神の欠片もない企業体質に失望して退職。石川県庁付属の行政機関「いしかわ金融調査部」の金融関係の相談員に転職します。
 金融面で困りごとを抱えている人の助けになればと就いた仕事でしたが、クレーマーたちの暇つぶしの相手が大半で、虚しい日々を送っています。そんなとき、兄の正弘から「黒女神」との交渉に立ち会って欲しいと電話があったのでした。

 地元で小さな繊維会社を営む正弘は堅実な経営手腕の持ち主でしたが、国内の繊維業が海外製品に押され衰退するなか業績悪化を止めることができません。社運を賭け新事業に切り替える決心をするものの資金が足りない。そこでツテを辿って「黒女神」にすがることにしたのでした。そして交渉当日……。

 というのが序章の内容です。本作のミソは茜と良太のキャラ設定にあります。
 第一印象は冷淡な茜と温情家の良太。正反対に見える2人ですが芯の部分は共通しています。

 雨の日に傘をさすことを忘れない。そして傘のない人には傘をさしかけずにいられない。

 これが茜の拠って立つ信条です。
 実際、茜が引き受ける依頼は基本的に、困難が降り掛かっても自分でできることは何でもしようとする人からのものです。それでも力及ばない人のサポートなら、せずにはいられないのが茜なのです。
 そして良太も、銀行員時代からそんなサポート精神に溢れていました。投資のプロでも何でもなく茜のビジネスに直結する能力を持たない良太を、茜がパートナーに選んだ理由はそこにあります。

 序章での2人の出会いが印象的でした。
 茜は良太の誠実なサポート精神を気に入り、良太は茜の冷淡に見える対応の裏にある温情に気づきます。そして茜が正弘に対し、報酬として要求したのが良太の協力でした。
 2人はいくつかの依頼をこなすうちに呼吸が合うようになっていき、やがて意外な転機を迎えます。実にドラマチックな展開です。

 黒装束に身を包み、そっけない態度を取りつつ、自助努力を忘れないクライアントには最善を尽くして応える。ブラックジャックのような投資の女神・ニ礼茜。
 純情で正直なため駆け引きには向いていないけれど、本筋は決して外さない。ピノコのような最良の助手・百瀬良太。
 魅力的な2人の主人公。

 続きが読みたい。3作目ができないかなあと切に願います。

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2024年06月06日

Posted by ブクログ

看守の流儀著者の一作目

ちょっとそこまでと思わずにはいられないとこもありつつ…でもキャラが立ってて伏線回収もしっかり雨の日に傘を貸せる人間でありたい。

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2023年05月01日

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大変面白く読ませていただきました。女性でトレーダー余りいない主人公ですが確実に天才です。話の流れは前半は短編ぽく後半は本筋な感じです。只ちょっとリアリティに欠ける感が私には有りましたのが残念でした。

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2023年01月31日

Posted by ブクログ

珍しい投資話が中心のミステリー、中盤までの短編的な部分はテンポも良くて面白い。メイン部は話自体は分厚いが、オチが弱い気がした。二礼茜はもっと謎だらけでも良かった気もするが、次作が楽しみ。

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2023年01月16日

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面白かったです!
今年から株式投資を初めて、株について色々勉強している自分にとってタイムリーな時期なので興味を持って読めたってのはありますが、それだけでなく主人公のニ礼茜がとても魅力的な人物として描かれてたからです。天才デイ・トレーダーとしての圧倒的な才能と、けして他の人に迎合せず、自分の感性と強い信念の元に力強く生きている姿に惹き込まれました。
どこにでもいる一般人の良太という人物がひょんなことから助手となり、茜に振り回される様が彼女を孤高の天才といういイメージだけでなく、親しみを持てるキャラクターにしています。彼の存在がより一層彼女の魅力をひいては作品を引き立てていました。

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2022年02月17日

Posted by ブクログ

「このミスが」受賞作。
主人公は魅力的だけど相棒がボンクラ過ぎて最初は中々読み進むのが辛かった。
登場人物もクズ過ぎてイライラしたが無事、大団円を迎える。
良い感じ!

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2021年12月21日

Posted by ブクログ

二礼茜がずばぬけているのでちょっと
ちょっとその世界に入りにくいけれど
すごい人もいると思えばまぁ楽しめる物語
依頼人の資産を株取引で希望額に増やしてくれる
うらやましいかぎりです
物語の最初の仕事で助手になった百瀬良太が
主な語りで最後の仕事までに2,3の仕事が
描かれていました

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2021年08月29日

Posted by ブクログ

久しぶりに新しい作家さん。
「このミス」大賞というのもあったけど、あっという間に読んでしまえるほどはまってしまった。。
ブラックヴィーナスこと仁礼茜と百瀬の関係と展開、これは第2弾を即希望。
確かにブラックジャックだなぁ。

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2017年03月27日

Posted by ブクログ

株の知識がなくても、充分に楽しめるけど、株の知識があったら、もっと楽しめたのかなと。
「看守の流儀」が面白かったので、手に取った本作。個人的には「看守の流儀」の方が好み。て、いうか、「看守の流儀」が面白すぎるのかな。

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2023年02月25日

Posted by ブクログ

❇︎
『このミステリーがすごい!』
2016年 第14回 大賞受賞作

なぜ黒女神は依頼者の最も大切なものと
引き換えに資金調達の仕事を請け負うのか。

スピード感のあるストーリー展開で
謎に包まれた黒女神に迫ります。

交錯する複数の謎と心理戦に
思わず引き込まれるミステリー。


ーーーーー
女神は依頼者が最も大切にしているものを
差し出すことと引き換えに依頼を引き受け、
希望額の資金を調達するという。

実際に姿を見た者が少ないため、都市伝説か
詐欺かと言われていた黒女神とある事情から
行動を共にすることになった役所の臨時職員は
思わぬ事件に巻き込まれてしまう。

事件解決だけでは終わらない、その先にある
黒女神の謎とは。





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2022年07月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私の地元、金沢が舞台のひとつなので、いっそう臨場感がありました。

株には疎いので、何度読んでもわからないところもありましたが、株取引の手に汗握るスリルは存分に味わえたかと思います。

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2021年06月03日

Posted by ブクログ

お金に困っている人に対し、本当に大事にしているモノを報酬に差し出せば、株取引によって希望するお金を確実に稼ぎ出すという一匹狼の天才トレーダーの物語。
ありがちなイリーガルヒロインものだと思いながら読んでいたら、裏設定は少し興味深いものだった。
リアリティ云々は置いておいて、面白く読めました。

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2018年11月04日

Posted by ブクログ

プラチナブロンドに染めた髪を顎のラインで揃えた黒装束美人茜と兄の取引と引換に助手になった純朴青年ピノ太が、和菓子屋社長や急死した女性歌手の父親を助けたり、監禁されたりする。滑らかな文章は読み易く、たまに挑発的でクールでお茶目な茜にも引き込まれたけれど政治が絡み株描写に本腰を入れた最終章は難しかった。

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2018年10月14日

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