【感想・ネタバレ】強迫症を治す 不安とこだわりからの解放のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

本書の「強迫症」とは、以前「強迫性障害」と呼ばれていたが、現在はこの呼称で整理されている。メディカルノートというサイトで、著者の松永寿人氏が行っている解説では、次のように書かれている。

「アメリカ精神医学会の最新の診断基準よれば、次のような場合を強迫性障害と診断するとしています。

・強迫観念または強迫行為もしくはその両方が存在する

・不適切な強迫観念を和らげるために強迫行為をしようと試みる

・強迫行為は状況に対して現実的・有効的でなく明らかに過剰なものである

・強迫観念や強迫行為のために時間を浪費し、社会生活や日常生活に支障をきたしている

本書のもう一人の著者・亀井士郎氏は精神科医だが、自らが精神科医になってしばらくしてこの強迫症となり、本書の帯に書かれていた表現を借りれば「不安の炎に支配された地獄の日々」を送ることとなった。

そしてその治療のため亀井氏の主治医であったのが、松永寿人氏である。亀井氏は、松永氏の治療により、その地獄の日々から復活を遂げたのである。

いわば本書は、患者と医師とがタッグを組んで戦った成功体験記であり、それを患者の視点と医師の視点の両方から記した共同作品なのである。

その苦しみを自ら体験し、そこから脱出することができた亀井氏は、同じ苦しみと戦っている人たちを救いたいという気持ちが強く、また精神科医でもある亀井氏は、この病気を研究対象としても強い思いを持っている。彼は本書のどこかで、この病気に対する復讐心をもやしているとさえ言っていた。

そうであるだけに、執筆内容に誠実さが感じられ、なおかつ実践的な内容となっている。

本書での治療のアプローチは、認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)である。

自分が本書に興味をもったのは、同じ病で療養中の家族がいるからであるが、自身の家族はこのアプローチではなくユング派の心理療法によるものである。

アプローチの違いはあるものの、例えば病の症状などの記述は、まったく目の当たりにしている現象、思い当たる現象が克明に記載されているのであり、本書の記述内容の信ぴょう性の高さを物語っている。従って、ここで扱われているCBTは、この病を克服できる治療法としても有効であると信じることができる。

本書では、心理療法については触れられていないが、本書の治療法(CBT)が、脳科学的なアプローチであるのに対し、心理療法はまさに心理的なアプローチである。頭の病ととらえるか心の病ととらえるかという観点の違いなのかもしれない。

個人的な見解としては、CBT(認知行動療法)が現象面に対する治療であるのに対し、心理療法は原因にまで遡って行う治療法であるように思う。

CBT(認知行動療法)は、認知の歪みや行動の異常に対する治療であるが、なぜその認知の歪みが生じ行動異常が発生しているかの追究は行わないのに対し、認知療法はそこに影響を及ぼす心の傷の修復にまで焦点を当てているように思う。より根本的なのは心理療法であると思う。

しかしながら、その認知の部分(強迫観念)とか、その行動の部分(強迫行為)の症状に強烈な苦痛を伴うのであり、そこからの脱出が極めて困難な病であるのだから、それをCBT(認知行動療法)により克服するということは、まさに地獄から救出することであると言える。

第七章には「患者と家族のための指南」というページが設けられており、家族としてのかかわり方が記載されているが、その内容は治療のアプローチがどのようなものであれ、家族にとって非常に有効な情報が記されていると思う。

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2021年11月10日

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