【感想・ネタバレ】ふゆねこのレビュー

あらすじ

※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。

四季ねこ えほん 冬

雪のふる日にやってきた、まっしろい訪問者
お母さんを亡くしたばかりのちさとのもとに、ある日、ももいろのマフラーをした猫がやってきて……。
※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

窓の外は雪。この絵本のようにまっしろなねこがたずねてきそうな夜です。

亡くなったお母さんに頼まれてやってきたふゆねこは、へやにあがりホットミルクを飲むとここへきたわけを話します。

 あみかけの ももいろのてぶくろを
 おかあさんのかわりに あみあげて
 ほしいとたのまれ やってきた

 さいごに てぶくろを くさりあみの
 ひもでつなぐこと わすれないでね
 ぜったいに

ちさとちゃんはてぶくろを落とした日のことを思い出しました。失くして悲しかったこと。おかあさんがすぐにてぶくろを編んでくさりあみでつないでくれてうれしかったこと。

 てぶくろをはめて ほほにあてると
 おかあさんに だきしめてもらって
 いるようで とてもあたたかい

おかあさんのいないはじめての誕生日。
ちさとのおじいちゃんとおばあちゃんがプレゼントを届けにきました。
おかあさんがひろってきたという白ねこは、ももいろの毛糸のくびわをしています。そう、あのふゆねこのマフラーのように…。

外ではしずかに雪が降り続いています。

ちさとちゃんのてぶくろを編み上げて、
やわらかな雪のなかへ、すいこまれるように消えていったふゆねこの後ろ姿がいつまでも心に残る絵本です。

0
2024年02月05日

Posted by ブクログ

 かんのゆうこさんの物語と、様々な絵描きさんとの組み合わせによって、それぞれに異なる味が生み出される『四季ねこシリーズ』だが、本書は、シリーズもの関係なく、ひとつの作品としての素晴らしさを感じられた、喪失から再生への物語である。

 上記のような絵本と聞いて、私が思いつくのは、湯本香樹実さんの『くまとやまねこ』だが、それとはまた異なる趣があるのが、また印象深く、その物語の展開や構成も含めて、とてもよく考えられてるなあと思わせるものがあった。

 また、その冬の切々とした静謐さの中にもある、ほのかな温かみを抑えた色調で描いた、こみねゆらさんの、素朴なヨーロッパの片田舎の雰囲気を纏った絵も素敵で、特に見返しの、まるで雪の結晶を糸で編んだような、隙間のあるパッチワークのようなデザインの美しさは、本編とも関係の深いものを思わせてハッとさせられるし、その他にも、玄関の三和土やテーブルクロスといった、きめ細かい模様の描写も素晴らしい。


 物語は、主人公の女の子「ちさと」のおかあさんが亡くなったことから始まり、悲しみに暮れる彼女に、おとうさんは「おかあさんはね、おほしさまに なったんだよ」と、ドラマなどでも聞かれそうなことを言うが、実際に、これがどれだけの慰めになるのだろうかといったら、おそらく気休めにもならないのだろうと思わせた、その根拠は、ちさとの、どんなに探しても、おかあさんが見つからない、その泣いている姿からも察することが出来て、ここからいったい、どんな展開にしていくのだろうと不安が募るが・・・。

 なんと、その次のページになると、いきなり雪のように真っ白な猫が、人間のような二本脚で立って、ちさとと玄関で対面している絵が現れ、その、あまりに当然ですよと云わんばかりの物腰には、思わず、ちさとも固い表情となるが、私はこの場面に、それまでの悲しくて重い雰囲気を、ちょっと和らげてくれるような効果があるのではないかと感じられた。

 しかも、それまでずっと暗めの絵の中に文章を入れていたのが、ここに来て初めて、見開きの半分をまるまる白を背景にした文章だけの構成にしている点にも、ちょっとした抜け感というか、息抜きを与えてくれているようで、それによって私も、思いも寄らぬ悲しい始まりに戸惑っていた気持ちから、少し違う視点を見せてくれたような、落ち着きを得た気分になることが出来た。

 更に、この場面を強調するように、次のページはふゆねこの上半身を拡大した絵になっているが、ここでのふゆねこの、おかあさんは〈ひかりのくに〉で元気に暮らしていて、もう戻ることの出来ない彼女に頼まれて、代わりにやって来たことを伝える様子と、そのふゆねこの両方の瞳に映る、ちさとの姿には、たとえちさとの姿が絵には無くても、二人がどれだけ真剣な思いでこのやり取りをしているのかが、よく分かる、こみねさんの素晴らしい描写だと思う。

 そして、ふゆねこが、おかあさんから頼まれたことは、今年の冬に間に合うように、おかあさんが編んでいた手袋が、その完成間近で亡くなったため、最後の部分をふゆねこに編み上げて欲しいというもので、早速取りかかるが、その上手な手捌きに思わず、ちさとが「どうして そんなに あみものが じょうずなの?」と聞くと、「ながくて さむい ふゆのあいだ、いろんなものを あたためるのが わたしの しごとですからね、あみものなんて おてのものです」と、分かったような、よく分からないような答えを返されるが、その編み物をする優しい佇まいの、まるで彼女自身が乗り移ったかのような慈愛に満ちた雰囲気には、ちさとも、きっと何か感じたものがあったに違いない。

 何故ならば、その後、完成した手袋を見ることによって、ちさとの心の中には、過去のおかあさんとの素敵な思い出が浮かんで来たり、それをはめて頬にあててみたときの、まるで、おかあさんに抱きしめてもらっているような、とても温かい気持ちになれたことは、その未完成のまま眠っていた手袋ではなく、完成されたそれがあるからこそ、初めてなることの出来た感情なのであって、であるのならば、それを生み出した、ふゆねこというのは、おかあさんと全く同じような存在といっても差し支えないのではと、私は思ったのである。

 と書きつつも、実は様々な解釈が出来そうなのが、本書のまた奥深い点だと感じ、一応、ネタばれっぽい出来事は最後に起こるのだが、それでも、あれこれと想像を巡らせたくなるものがあり、もう少しだけ書くと、ふゆねことおかあさんの関係性が生まれたことによって、ちさととの関係性も生まれてきた、このトライアングルの素晴らしさは、それぞれが糸によって繋がっており、糸というのは、あっさり切ることが出来そうで、実は幾重にも重ねて編み上げると、思いのほか、しっかりとした丈夫なものへと変わり、それがまるで、ちさととふゆねことの絆から、人と人との絆、ちさととおかあさんとの確かな絆へ移行するようにも思われた、そこには、新たな喪失から再生への物語が生まれ出しており、そのファンタジーの中にもあった確かな現実的希望は、最初と最後の絵が、共に現実に在るものを抱きしめている描写でありながらも、そこに含まれた気持ちや意味合いは全く異なっていることからも証明されているのだろうと、私は思う。


 ふゆねこが役目を終えて帰るとき、外はいつの間にか、雪が降り始めていた。

「あしたは きっと、ゆきだるまが つくれますよ」

 そのふゆねこの言葉に込められた思いと、表紙の絵が、私の中でリンクする。

 きっと、いつまでも降り続くような、その雪の、ひと粒ひと粒は、おかあさんの嬉し涙なのであろう。

0
2024年01月09日

Posted by ブクログ

結花おすすめ。
亡くなったお母さんに頼まれて、途中まで編んであったちさとの手袋を完成させるためにあらわれたふゆねこ。手袋を作ったらふゆねこは帰ってしまったけど、その後ちさとの誕生日にまたねこがやってくる… ふゆねこそっくりな。
読み始めた時からすでにお母さんは亡くなってていないけど、お母さんの子を思う気持ち、存在感がすごく伝わる…あたたかい絵本だと思いました。

0
2012年03月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

四季ねこシリーズの『ふゆ』の絵本ですね。
かんのゆうこさんの、四季ねこシリーズ『ふゆねこ』
絵はこみねゆらさん(1956年、熊本県生まれ)
絵本作家、イラストレーター、人形作家。

 あきも おわり、
 ひんやりとした ふゆの かぜが、あたりに
 ふきはじめたころ、
 ちさとの おかあさんが なくなりました。

 そんなあるひ。
 まるで ゆきのように まっしろな ねこが、
 ちさとの いえを、たずねてきたのです。

 「ちさとちゃん、こんにちは。わたしの 
  なまえは、ふゆねこです。
  きょうは、ちさとちゃんの おかあさんに
  たのまれて やってきました。」

 ふゆねこは、おかあさんが あみかけの
 ちさとちゃんの てぶくろを あみに
 きたのです。

 悲しい物語の最初に、どんなお話になるのかなと心配しましたが、ちさとちゃんに寄り添った、心がほんわりする、『とても あたたかな きもちになる』お話でした。
 こみねゆらさんの絵が可愛らしく、ふゆねことちさとちゃんを包み込んでくれています。

 ちさとの おじいちゃんと おばあちゃんが、
 にっこり わらって ちさとちゃんの
 おたんじょうの プレゼントを とどけに
 きてくれました。
 それは、 
 おかあさんが ちさとちゃんに ないしょで
 おたんじょうまで 
 おじいちゃんと おばあちゃんに あずけておいた
 しろい ねこ です。

 ちさとは にっこり ほほえむと、
 あしもとに すりよってきたねこを だきあげて
 りょうてで そっと だきしめました。

 胸が熱くなるお話ですね。
 素敵な物語を紡ぎだす、かんのゆうこさんの作品を、さらに読んでみたくなりました。
 

0
2025年02月10日

Posted by ブクログ

胸がキュッとなるオープニング
でも、表紙のピンクマフラーのシロネコちゃんの姿を頼りに読み進める
お母さんの娘さんへの気持ちの強さを感じてホロリ

0
2024年10月14日

Posted by ブクログ

最初の始まりから涙が出そうになるのを堪えながら読んだ。
このシリーズの中で一番優しくて悲しいお話なんじゃないかしら。
子どもを残して旅立たなければならなかったお母さんの気持ち、残された女の子の気持ちを想像するともう( ; ; )
ふゆねこさんは誰かを温かさを届けるためにいるのね。
ありがとう、お母さんの心残りを届けに来てくれて。
私のさ、亡くなったお友達のお子さん、表面上は元気なの。
でもたまに学校で見かけると一人小さくなって座っていることがあって。
何度お母さんの代わりに抱きしめてあげたいと思ったことか分からない。
亡くなったのも結構急なことだったから…ふゆねこさん、私のお友達とあの子の所にも行ってあげて。
お願い。

…と暗くなってしまった。
この四季のねこシリーズ、表表紙を並べるとそれぞれの絵描きさんの個性と四季の色合いがはっきりと分かれていてそれはそれでとても素敵なんだけど、裏表紙を並べるとあら不思議、統一感があってとっても素敵なの。
これは4冊並べて見てみる価値があると思う(*´꒳`*)

0
2024年08月11日

Posted by ブクログ

冬の風が吹く頃にちさとのおかあさんは亡くなった。
「おかあさんはね、おほしさまになったんだよ。」とおとうさんは言うけど、星のなかにおかあさんは見つからない。
ある日、真っ白なねこが、ちさとをたずねてやってきた。
ふゆねこと名乗る白いねこは、おかあさんに頼まれたと言って、てぶくろを編みはじめる。
器用に編み上げて、くさりあみのひもでつないで出来上がり。
かたほうだけなくして、悲しかったことがあるのを思い出した。
ふゆねこは、雪の中帰って行った。
おかあさんのいない初めての誕生日におじいちゃんとおばあちゃんが、おかあさんからのプレゼントだよとかごのふたをあけると…。

寂しいイメージだなぁと…だけどページをめくるたびにふゆねこのしぐさや表情が気になってくる。
ふゆねこの目の中には、ちさとが映っている。
2本足で立てば、ちさとと同じくらいの背丈で、てぶくろを編んでいる手の柔らかさまで感じるようで、またうつむいて目を閉じてるようなところもおかあさんみたいだと、ちさとも感じたのではないだろうか。

ラストがこういう展開だとは思わなかったけど、最初からおかあさんはプレゼントを決めていたことに少し驚いた。


0
2024年01月19日

Posted by ブクログ

はるねこ、なつねこ、あきねこ、そして、ふゆねこ。四冊とも読んでみよう。特にふゆねこはじんわりきます。

0
2012年02月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

他にはるねこ。なつねこ。あきねこがあります。
ふゆねこはいちばん悲しくてじんわりきます。
なぜならお母さんがもういないから。

0
2013年10月06日

Posted by ブクログ

ももいろのマフラー
手袋の色もももいろ

ピンクじゃあなくて “ももいろ”にしたとことに、よりいっそうの優しさ温かさを感じます。

0
2011年11月05日

「児童書」ランキング