あらすじ
民間放送開局後10年を経た1960~70年代、テレビコマーシャルは、商品名連呼の時代を脱し、フィルムがひとつの「作品」として完成度を高めていった。なかでも日本天然色映画の杉山登志と電通映画社の松尾真吾とは、その短くも華やかな活躍によって、伝説的な演出家といわれている。本書は、長年企業の広告担当者として大ヒットCMにも携わった著者が、多才な人々が触発しあった熱い時代の息吹を伝えようとするものである。
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Posted by ブクログ
モービル「のんびり行こうよ」や、前田美波里が出演した資生堂のCMを手がけた杉山登志。
「イエイエ」などをレナウンのCMを手がけた松尾真吾。
二人のCMディレクターと共に仕事をしていた著者が触れた、彼らの人生や横顔に迫ることができる一冊。
60~70年代の高度経済成長期を象徴する彼らのCMは、テレビが普及すると共にお茶の間に衝撃を与えた。
日本だけに留まらず、国際的な賞を立て続けに受賞する二人は、名ディレクターとして後年広告史にその名を刻むことになる。
しかし一方でその状況が生んだのは、華やかな世界を創造する使命と常に対峙しなければならないという苦しみであった。
杉山はかの有名な言葉を遺して、絶頂期に自ら死を選ぶ。
目まぐるしく変化する時代の潮流の中で、彼らが目にしなければならなかった現実とは、一体何だったのだろうか。
現代につながる日本の広告史、 またテレビ黎明期や高度成長期の背景を知ることができる良書である。