あらすじ
地下鉄新橋駅には使われない幻のホームがある――やむなく作られた仮設駅とも語られるこのホームは、戦前の地下鉄建設をリードした東京地下鉄道と東京高速鉄道の地下鉄構想が衝突した結果、生み出された時代の徒花であった。日に日に戦時色が強まっていったこの時代、両社の対立は戦時体制に取り込まれていく。
新橋駅を巡る両社の対立を紐解きながら、幻のホームという「神話」が誕生したプロセスを解き明かす。そして、両社の抗争が遠因となって設立された帝都高速度交通営団の実態を掘り起こし、交通営団と戦争の関係を防空・輸送・避難などの視点から描き出す。
地下鉄博物館や国立公文書館の史料を丹念に渉猟し、これまでミッシングリンクのように欠落していた戦前の地下鉄史と戦後の地下鉄史を接続する。1934年から49年の地下鉄空白の15年を埋めて、戦時下の地下鉄の実像を浮き彫りにする労作。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
現実に「幻の新橋駅」になっているのは、当初の想定(五反田方面や新宿方面の接続)より流量が減って、折返し運転が不要になったからということ?
P26 環状のやつが首都高速都心環状線みたい
P40 東京地下鉄の建設ノウハウが高速鉄道へ渡ってしまうということか?
P63 「幻の新橋駅」は折返し用
P112- 「幻の新橋駅」俗説誕生の考察
P144 秋庭俊氏の面影
Posted by ブクログ
銀座線の新橋駅、幻のホームから始まり戦中までの東京の地下鉄の歴史の空白を埋める貴重な研究本。
浅田次郎作品を待つまでもなく知られた東京の地下鉄、昭和2年の上野と浅草間に始まる歴史。
国と東京市、民間企業の争いから戦前、戦中の東京の地下鉄の歴史。本書で特に記されていないがここにも野口悠紀雄氏の主張する1940年体制が長く続くことが、みてとれる。
正に東京が空襲を受ける間の営団地下鉄、ここだけでもっと膨らませた作品に期待したい。