柿崎一郎のレビュー一覧
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匿名
購入済み日本との関係も深く重要な東南アジア諸国。そのうち大陸部(インドシナ半島)の要であるタイの歴史を知るにはちょうど良い本だと思う。タイ族が中国南部から現在のタイへと移住してくる経過、第二次世界大戦時の危機などは知らないことも多く興味深く読むことができた。戦後は政治経済史偏重だが、クーデタが頻発し複雑なタイ政治についておおまかな知識をつけることができた。
本書はタクシン首相がクーデタにより失脚した2006年までの通史だが、その後のタイは14年に再びクーデタが起こり、16年にはラーマ9世の崩御、そして20年以降は新未来党や前進党の台頭と解党などまだ政治的な安定性は確保できていないように見える。ここ20 -
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そのなのとおり、タイの歴史を物語を読むが如くざっとしることができる。
好きだけど殆ど知らなかったタイの歴史。
スコータイ、アユタヤ、シャム。時代によってヒーローがいるところが気になった。
近代ではあるが、外交が巧みであることに驚いた。大国とは呼べないかもしれないが、大国との付き合い方がうまい。
また、温厚な国だと思っていたがしょっちゅうクーデーターが起きていてもはや笑える。
うらやましいなと思ったのが下記の内容。
農村地区は貧しいので都会や国外にでていった子供の仕送りに頼る。だけど、その子供が仕事に失敗してもそこに戻ればいい。なぜならば、米が豊かにできるので貧しいかもしれないが食べることに -
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ネタバレ「微笑の国の真実」というサブタイトル。しかし、19世紀以降、西欧諸国が東南アジアに進出してきたあたりからの「世渡り上手な国」の実情を知ると、「ほくそ笑み」の国と呼ぶ方が相応しいように思えてくる。タイの歴史の主なポイントは次のとおり。
1.中国の揚子江以南(四川から雲南)に出自を持つタイ族は11~12世紀頃、漢民族の居住域の拡大により南下・西進。チャオプラヤー川の流域に大ムアン(くに)を形成する。
2.アンコール朝(クメール族)が支配していたヨム河畔のスコータイをタイ族が奪う。こうして生まれたスコータイ朝(1240年頃~1438年)は、初めて現在のタイ領をほぼ支配下に置いたマンダラ型国家となった -
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2016/10/13 かねてより高齢・体調不良で心配されていたプミポン国王が亡くなった。カリスマ的な国王が亡くなった事での政治的混乱が心配されていたが今のところ平静を保っている。しかし2013年から続く軍事政権の民政への移行の遅れも取りざたされている。
というわけでタイと言えば、微笑みの国、ムエタイ、観光・遺跡、マッサージ、歓楽街、"親日"的、山田長政、日本への不法入国者などなど良くも悪くも色々なイメージが付きまとうが、ちゃんと歴史を勉強したことがなかったので、本書を手に取ってみた。
列強の植民地時代・2回の世界大戦を乗り切った「世渡り上手」な外交は、一方的な「親日国」 -
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ネタバレタイを含めインドシナの国々へ、いつか行ってみたくて、
その成り立ちや構造の仕組みを理解する一助とすべく。
外国との関わり合いのなかでうまく立ち回ってきた、アジアの優等生、という著者の評価は、
たしかにあの笑顔のタイ人たちに、とてもよく当てはまる言葉だと感じさせます。
カンボジアやミャンマー、ラオス、マレーシアとの違いはどこにあるのか、といえば
それらの歴史に根ざしたアイデンティティにもないことはないのかも、と思いました。
また、先進国の中に名を連ね、近隣諸国や西欧各国との関係性を見直すべき地点に立っている、という点で、
日本との共通点が見出せます。 -
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「物語~の歴史」シリーズ初の東南アジア本。
何となく「西側諸国所属の東南アジアの優等生」のようなイメージがあったタイだったが、最近のタクシン・反タクシン派の争いや、クーデタのニュースを見るにつけ、実際のところどんな国何だろう、と興味を持って読んでみた。
読んでみると、近代以降、想像していた以上に波乱万丈の歴史を持ちながら、大国間でのバランスを保ち、一方では国民国家の確立を目指しながら、他方では経済成長も目指すという要領の良い一面が垣間見えた気がする。
その一方で、選挙の度に頻発するクーデタと、未だ憲法すら作っては捨ててを繰り返している(!)という、優等生とは到底言えない側面にも少なからず -
Posted by ブクログ
中公新書の『物語○○の歴史』シリーズ最新刊です。本書は「タイの人たちが学ぶような『教科書的』なタイ一国の概説書」を目指したものであり、日本語におけるタイ一国を概観した通史としては初めてのものだと述べています。内容は、同シリーズで同じく東南アジアを扱った『物語ヴェトナムの歴史』がヴェトナム戦争前のホー・チ・ミン登場までしか書いてないのに対し、本書は2006年の反タクシン首相派のクーデタまで、最新の出来事までを扱っておりまさに「通史」となっています。古代から現代までの配分も丁度よく、タイを知る上で初学者がまず手に取るべき本であることは間違いないでしょう。