富永健一のレビュー一覧
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社会学講義とあるが、社会学入門である。
まず、社会学(Sociology) 昔からなんかピンとこなかった。非常に広範な領域を扱う学問だと思っていましたが、本書を読んで腑におちました。
societyの訳文をみると、社会、世間、共同体とあり、理論社会学を読むと、個人の集まりを研究しているとあります。
共同体を扱う学問であるとの内容であれば、その範囲も明確であり、他の社会科学との関係なんとなく、区別がつきそうです。
本書は大きく3部にわかれています。
1部:社会学とは何か
2部:社会学の3分野
①理論社会学(ミクロ社会学:個人を扱う、マクロ社会学:集団を扱う)
②領域社会学:個別研 -
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社会科学の業績が集積した立派な名著
社会科学には初めて触れたので、読解に時間がかかった。
全体的によくまとまってゐて、努めて客観的に書かれてゐた。説明も大変丁寧で、模範的に書いてみたいと思ったほどである。
社会学を本質的に概観する上で有用であり、面白い、有意義だ、研究水準もちゃんとしてゐる、と判断した。
小谷野敦は富永健一を偉い社会学者だと書いてゐて、読んで確かにその通りだと思った。社会学者を名乗る古市や上野千鶴子などとは歴然とした差がある。
おもしろくないと言ふ人がゐるが、学問に向っておもしろいもつまらないもあるまい。学問は決しておもしろく書くことが目指されるものではない。 -
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富永健一 社会学講義
新書なのに教科書らしい教科書。変な導入など無しに本論からダイレクトに入るあたり、有斐閣から出ている大学向けの教科書よりよっぽど教科書らしい書きっぷりをしているんでなかろうか。また、幅広い分野の話を1人で書けてしまう学識の広さに部外者だけれども脱帽もの。
この本で印象的だったのは下の2点。
1. 1章で社会学の取り扱い範囲と取り扱う社会の類型を並べていること
2. 日本国内の社会学研究の歴史も言及していること
1章で社会学が取り扱う社会をマクロとミクロ、社会と準社会に分けて話を進めているのだけれど、この部分を読んだ時に学生時代、卒論指導をしてくれた教官が時々「取り扱う -
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ネタバレ[ 内容 ]
本書は、理論的研究、経験的研究、歴史的研究等多くの分野を見通してきた著者があらためて現代社会学を総合的に捉え、専門分野のみならず一般読書人を対象にして、可能な限り高い水準で平易に説くことによって、この学問の面白さと真価を伝えようとする、「富永社会学の展示室」というべき作品である。
[ 目次 ]
第1章 社会の学としての社会学
第2章 理論社会学
第3章 領域社会学と経験社会学
第4章 社会学史の主要な流れ
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 -
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ネタバレ[ 内容 ]
高齢化、少子化、そして女性の社会進出によって、家族に揺らぎが生じている。
失われた家族の機能を代行しうるものとしては、地域社会やNPOとともに、やはり国家が不可欠である。
本書は社会構造の多元性を確認しつつ、福祉、環境、社会資本を統合的にとらえる「総合的福祉国家政策」を提唱。
社会的市場経済のドイツやコーポラティズムのスウェーデンなどの事例を参照しながら、日本の伝統を生かした福祉政策を考察する。
[ 目次 ]
第1章 理論的前提-近代産業社会の構造と機能
第2章 家族と国家の関係-福祉国家はなぜ維持される必要があるか
第3章 福祉国家の形成-起点から最盛期まで
第4章 福祉国家 -
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著者は、社会の近代化による家族の機能喪失と解体傾向を指摘し、福祉国家の形成に向けての努力が喫緊の課題となっていると主張します。その上で、欧米や日本の福祉政策を理論的に分類し、福祉国家の多様性を明らかにするとともに、新自由主義の台頭によって理論的にも実際的にも福祉政策について考えなおす必要があると論じています。
著者は、日本の福祉政策の歴史を概観し、そこには明白な理論的背景が欠けていたことを指摘します。しかし、高度経済成長の時代が過去のものとなり、日本の近代化の局面がウルリヒ・ベックの言う「再帰的近代」に入っていったことを受けて、従来の福祉国家のマイナス面を取り除きながら制度を改善されたものに