宇根豊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレタイトルと表紙に惹かれて読んでみたが
想像以上に良い本で気がついたら付箋まみれになっていた...
農業の素晴らしさを伝えるというよりは
「農」という広い世界に視野を広げて
「農」にはどんな世界が広がっているのか
かつて百姓はどのように生きてきたか
百姓仕事とよばれるものが何を守ってきて
その価値を現代社会でどのように捉えていくべきか。
農薬、食料自給率、農家の減少など
現代の問題についても鋭く切り込みながら
百姓である著者の視点で語られていく。
〝百姓仕事は、自然も風景も情愛も生産しています。〟
明治以降に作られた「日本農業」という概念と
加速する資本主義社会に対する著者の批判は自分に -
Posted by ブクログ
農本主義といえば戦後、政治学者・丸山真男氏が陸軍暴走の根源にあった思想として批判したところから、長らく公に語られることはなくなった経緯があるそうだ。
また当時、農本主義のその中心的な人物であった橘孝三郎(立花隆の叔父にあたるらしい)が、5・15事件を引き起こした青年将校に共鳴してクーデターに参加した(実際には変電所爆破未遂に終わっている)ところから、農本主義者とは極右的な急進改革的な勢力として退けられることも多いという。
ただ、宇根さんのいう「農本主義」は、拍子抜けするほどに、とても素朴なものだ。
農本主義とは、そのまま「農を基本において社会を設計をしていく志向」のことであり、現代でいえ -
Posted by ブクログ
農業立村に住んでいると否応なく「農業」という産業についてあれこれ考えることが多くなります。 でもね、正直なところ落ちこぼれながら会計人だった KiKi のいわゆるビジネス・センスとかビジネス哲学と農業ってどうしても相容れないことが多いような気がするんですよね~。 要するに都市部の、ひいては現代社会では当たり前になっているある種の尺度では測れないことが凝縮されて成立しているのが農業という産業のような気がして、いえ、そもそも産業という捉え方をして「工業」とか「商業」と並立させる発想で俯瞰しちゃいけないのが農業のような気がして仕方ありません。 ま、そんなモヤモヤとした想いを言語化する1つのきっ
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Posted by ブクログ
ネタバレ百姓の働きを支えていかなければいけない、、、
農業が、生産性や生産高では測ることのできない、様々な恵みをもたらしていることについて、生きもの調査からわかる生物多様性の保全、田んぼや農村の美しい景観、人々の農業のなかに生きている、自然の捉え方などについて、その重要な価値を論じている。
近代化に伴う経済効率主義の浸透がもたらした様々な弊害があらわとなる現在、これまで経済価値で測られてこなかったもを価値化するための制度や取り組みが、国際レベル、国内でも進められるようになった。
地球が壊れかけている今、人々の生計を守りつつ、自然環境を確実に維持していくための早急な行動が必要であると、あらためて感じる -
Posted by ブクログ
経済的合理性を唯一の基準とする近代的な価値観によって、現代の日本における「農」の営みが危機にさらされていることを批判し、橘孝三郎、権藤成卿、松田喜一という三人の農本主義者の思想を新たに読みなおしつつ、資本主義に対するオルタナティヴとしての農本主義の可能性を論じている本です。
著者は、橘らの農本主義がファシズムの一種と目されてきたことについて再検討し、「天地有情の共同体」としての「在所」(パトリ)のなかに包まれて「農」の営みにたずさわることと、ファシズムとのあいだに一線を引こうとしています。著者の主張はある程度理解できるのですが、どうしても「自然」を実体的な「唯一者」のようにみなすことへの危惧