村松秀のレビュー一覧
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超電導の分野で次々と画期的な成果を挙げ、将来のノーベル賞受賞は間違いないとされた米国ベル研究所の若きエース、ヤン・ヘンドリック・シェーン。彼の画期的な発見、有機体に金属薄膜を付着する事で実現する「高温超電導」の追試に、世界中の科学者が参加するが、誰一人として再現できなかった。徐々にシェーンの発見には疑惑が浮かび上がり、最終的には全てが実験を行わずに「捏造」された結果である事が判明した。
権威ある研究機関の権威ある研究者がチームリーダーとなり、そのチームで、これまで無名だった若手研究者が画期的な成果を発表する。しかし、実際には実験が行われておらず、実験ノートも存在しない。図表は過去の別実験の使い -
Posted by ブクログ
ある国の超一流研究所からそれまでの常識を覆すような発見が発表された。ノーベル賞級だとはしゃぎ、いろんなところで発表する上司。世界中で追試は成功しないが、それはその部下の実験技術が高度だから、と言われている。まさしくどこかで見た光景、ではないか。
雑誌論文の図が別の論文の図とあまりに類似しすぎていることがわかり、結局流用だったことが判明する。ちゃんとした実験ノートは存在せず、実験データの真偽は確定できない。本人は不注意によるミスだと言う。これまたどこかで見た光景、である。
栄光と転落までの過程は一気に読んだ。面白い。
ただ、最終章の説教めいたまとめは必要なかったのではないか。 -
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常温超伝導のシェーン事件を扱う。
彗星の如く登場した物理界の若手スター。
サイエンスやネイチャーに多数の論文を投稿。
しかし、世界中が追試を試みるも成功する者はいない。
やがて、グラフの使い回しという論文不正が告発され、生データや実験ノートがないことが明らかになる。
捏造が発覚したとき、ベル研調査委に対するシェーンの主張は、「ミスはあったが、意図的な不正行為はまったくやっていない。自分はたしかに実験を行い、実際にデータも得ていた」(同書221-222頁)
共著者は不問に付され、シェーンのみ懲戒解雇。出身大学のPh Dも剥奪。
学問の自由のためには、基本的に性善説に立つ必要があるが、競争 -
Posted by ブクログ
物理学の世界、それもベル研を舞台にした一大捏造事件の顛末を丁寧に追ったルポタージュ。著者とそのチームの仕事には敬意を払います。物理学に遅れること数年で、自分の専門界隈でも捏造がらみで色々起きていて、そのパターンの一致にもめまいを覚えたりもします(スーパー測定器とか天才的な実験屋とか)。でも、でもなー的なところも。
なんかね。捏造が発覚するまでに数年もかかった!科学界はどうなってるんだ!時代の変化に科学のシステムが追いついてないんじゃないか!的なことで盛り上がってるんですが。でもね、警察組織も司法組織も持たない科学社会が、それこそ真実を追求するというその姿勢だけで捏造を数年で明らかにしたわけで -
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ノーベル賞という存在が裏目に出るとこのような捏造が生まれてしまう。またノーベル賞だけでなくベル研究所のような企業に運営されているところだと科学以外のプレッシャーや圧力がかかり、研究者の純粋な科学への追求が出来ない構造となり得る。
このように大きなことでは無いかもしれないけれど、このようなことは研究者だけでなく、一般の会社勤めしている人にもあてはまるのではないだろうか。自分の成果を認めてもらいたい、また、みんなにカッコよく見せたい、そんな一心から、ついいろんなことを着飾ってしまうことも、一つの捏造では無いだろうか。ましてやSNSで良いところでアップして公開することも同じ心理だろう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ有名科学誌に掲載された、それまでの常識を覆すような「コロンブスの卵」的大発見が世間を驚かす。
舞台はかつては「科学者の楽園」と呼ばれた名門研究所。
登場人物は、それまで目立った実績のない若手研究者、野心満々の共同研究者、一発逆転を目論む研究所上層部。
しかし、一向に追試は成功せず、世紀の大発見はほころびを見せ始める。
大発見の興奮が醒め、よくよく考えてみると、「神の手」によってなされた実験が成功した瞬間を見たものは本人以外おらず、実験ノートは存在しない。成果物も行方しれず。再現実験と称する実験データには、本来であれば数十年がかりのはずの結果がしれっと載せられている。本人の実験スキルや知識もどう