伊東守男のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
<裕福な青年コランは友人のパーティーで出会った美しい女性クロエと恋におちる。
デュークエリントンの曲と同じ名前の彼女と送る幸せな結婚生活。しかし彼女には・・・>
カズオイシグロの作品は全てハヤカワep文庫より出版~。
ということですっかりハヤカワep文庫支持者になりました。
そしてそれではハヤカワep文庫の他の著者のも読んでみようと買ってみた一冊。
あとがきの書評が小川洋子というわけで。
あらすじはいたって普通というか定番。
しかし「スケートでぶつかり合った人間達の死体は係りの人間が脇へ掃いていった」とか、
「一般家庭の蛇口からうなぎが出てきたのでそれを料理した」等、
奇妙さ、不思議さ、アイロニーがこめられた細部が、現実を一部離れたような世界を創造している。
そして最後のストーリー展開。
その結末は、世界観とあわせ、涙というより悲痛な笑顔を読者に抱かせるものでしょう。 -
Posted by ブクログ
数年前に、この小説を題材に書かれた岡崎京子さんの漫画と、この小説のオマージュ映画『クロエ』を観ていて、両方とも不思議なお話だと思った記憶があります。
特に漫画はこの物語をそのまま漫画化したもので、それが岡崎京子さんの独特のタッチとあいまって、とても印象に残りました。
小説は…たぶん、受け付けない人は全然受け付けないタイプの作品だと感じた。
軸は恋愛小説なのだけど、SFであり、ファンタジーであり、見方によるとサスペンスでもあり。
とにかく不思議。日本人が書く小説ではないなってすごく感じた。(ボリス・ヴィアンはフランスの作家)
ありえない設定も出てくるし、脇役はありえないくらいあっさり死んだり殺されたりするし(それなのに殺した側は捕まらない)、その辺りは完全にファンタジー。
空間がゆがむSF。
主人公コランが愛する妻・クロエが抱える病はサスペンス。(肺に睡蓮が咲くという奇病)
物語の冒頭では幸せだった人々が、物語が進むにつれて破滅に向かっていく。
悲しいまでに美しく退廃的なのに、文章のタッチが軽くて、奇妙なギャップがおもしろい。
悲しいしつらい物語だけど、日本特有の湿った情緒みたいなものがないせいなのか、それともこのヴィアンという人の書き方の影響なのか、終始乾いた感触で読みきった。
フランス映画は独特だとずっと思ってきたけれど、フランス小説も同じくなのかも。 -
Posted by ブクログ
昔、小学生の頃か、友達とスイカを一緒に食べているとき、種を飲み込んだら胃の中で芽が吹いて最悪死ぬこともあるんだぜ、という忠告を貰ったことを思い出した。
身体の中でスイカ発芽だとどうしようもない間抜けだが、これが睡蓮の花咲くとなると途端に悲劇的な運命の感が出てくる。
なぜ睡蓮の花が肺に咲くのか一切説明が無いように、この小説はただ作者のイメージの跳躍に任せ読者もそれを味わうことに尽きる。
筆者がトランペット奏者であるのも関係しているのだろうか。作中物語の展開のイメージに合わせて主人公とヒロインの住む家も変形していく様は、ポーを中心としたアメリカ的怪奇趣味をむしろフォローしているかのように思える。
ちなみに個人的には、主人公・コランとヒロイン・クロエの悲劇よりも、脇役カップルであるシックとアリーズの悲劇の方が実はより現実的で、それ故胸に来るものがある。 -
Posted by ブクログ
1947年に出版されたボリス・ヴィアンの代表作であり、SF的な世界がフランス流のスノッブさで味付けされた恋愛小説。
富豪の家に生まれた青年コランは、美少女クロエに出会い熱烈な恋愛関係に落ちるが、クロエを肺に睡蓮が成長する奇病にかかってしまう・・・、非現実的な設定で、スラップスティック的なユーモアも溢れる作品世界の中で、唯一コランがクロエを思う気持ちだけはストレートなものとして描かれる。
個人的にはこうしたスノッブな世界観はあまり好きではない。フランスは恋愛小説の宝庫だと言われるが、恋愛小説を殆ど読まない自分にとっては、アンドレ・ブルトンの「ナジャ」くらいの一途さが欲しい。
次は岡崎京子がこの作品をマンガ化しているので、そっちも読みたい。