岡江晃のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ私は全くの素人ですが、宅間守は臨床経験や鑑定経験を多く持つ著者 岡江氏でも、これといった具体的な診断を迷わせる人物であったことがよくわかった。
この本は法廷ドキュメントでもないし、重大事件のノンフィクションにありがちな著者の私的感情も読者への煽りもない、ただの報告書である。
読み進めると「宅間守はどうしてこんな人間に育ってしまったのだろう?」と思うことが多々あるけれど、お医者さん目線で観察され考察されたことが書かれているので淡々と読めた。
専門的な難しいところもあるが、適度に補足もあり素人にも読めるように配慮されているのがよくわかる。
が、内容が内容なのでスラスラとは読めない。ツライ描写もある -
Posted by ブクログ
なんというか、いろんな意味で読んでおいた方がいい本だと思った。
宅間守の根本的な問題は、
・自分に対する理想と自分の現実の不一致
・その不一致を自分ではなく他者や社会に帰責しようとする心性
の2つ、要は「分不相応な高望み」と「自己中心的な他罰性向」ということだ。
しかし、この2つをまったく持たない人なんているだろうか。「自分がうまくいかないのは、◯◯のせいだ」とまったく考えたことのない人など、ほとんどいないに違いない。であれば、誰もが、大なり小なり宅間守になる素質があるのだと思う。
それにしても、読んでいて「とんでもないモンスターだな」と思いつつも、誰かがどこかの時点で掛け値なしに彼 -
Posted by ブクログ
2001年6月、大阪教育大学附属池田小学校で児童・教諭を殺傷した宅間守の精神鑑定書。
家族歴、本人歴、本件犯行、現在症、診断、鑑定主文から構成されています。
この本を通して、精神鑑定の道すじについて、初めて知りました。
医療観察法についても思いを馳せながら、読みました。
責任能力の有無に関わらず、やはり、自ら犯した罪については、償ってほしいという思いが、私の中にあります。
それが刑務所の中なのか、病院とのつながりの中なのかの違いがあるだけだと、私は受け取りたいです。
この犯罪行為自体は、絶対に許せないものです。
死刑が確定し、刑の執行に至るまでの間、この罪を償う気持ちを抱くことができ -
Posted by ブクログ
ネタバレ鑑定書を出版するというのは批判を恐れてなかなかできないことではあるが、大きな事件でもあるし、資料的にも価値がある内容。
白眉はやはり統合失調症との鑑別か。
宅間は被害妄想や注察妄想を呈してはいるが、その場限りの一過性のものがほとんどで、妄想対象も漠然とした不特定他者へ拡散したりすることはない。不安や猜疑、恥辱、嫉妬などに由来するある程度了解可能な妄想様観念であり、妄想反応というべきもの。Scのそれとはかなり異なっている、とのことで、シュナイダーのいう情性欠如者に該当する。それに反応性の妄想、気分変調が重なったものである。制御能力などは低下しているが、人格に由来するもので責任能力には影響なし、