アンソニードーアのレビュー一覧

  • すべての見えない光

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    "絶望は長くはつづかない。マリー=ロールはまだ若く、父親はとても辛抱強い。彼は娘を安心させる。呪いなどない。悪運や幸運はあるかもしれない。それぞれの日が、いい日か悪い日かに、わずかに傾くことはあるかもしれない。だが呪いはない。" (p.40)

    "この世界は、なんと迷路に満ちていることか。木々の枝、線条細工のような根、結晶の基質、父親が模型で再現した町の通り、アクキガイの貝殻についた小さな結節にある迷路、カジカエデの樹皮にできた迷路、ワシの羽の空洞内部の迷路。なによりも複雑なのは人間の脳だよ、とエティエンヌはよく言っていた。存在するなかで、もっとも入り組んだものか

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    2025年03月27日
  • すべての見えない光

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    その光は波であり、海であり、ラジオだ
    すべての事物が反射する可視光線とは別の、見えない光
    それは命であったり、希望であったりする
    第二次世界大戦下のフランスとドイツ
    それぞれに生きる人々
    そこは混沌として、明日がみえず、望みは断ち切られ、人々の命は消えていった
    “見えない”ことは少女の盲目だけでなく、世界に溢れる不可視なものと同時に、その時代性も指している

    そこにある綺麗なものと醜悪なもの
    それらは同時に並立し、簡単に反転する
    技術の軍事転用や宝石、人の心
    すべてが簡単に裏切っていく
    しかし戦争をある種の壮麗さと残酷さを同居させるように描きながら、物語には救済を用意しない
    それはアンソニー・

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    2025年03月08日
  • すべての見えない光

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    詩情豊かな描写、それに訳文の美しさに心が躍る。プロットの巧みさに唸る。ストーリーの行き着く先に固唾を呑む。ページを捲り続ける。読み終わった後にはそれらを合わせた以上の感動が残る。
    人はときに残虐で歴史は残酷だけれど、そこから掬い上げられた人々の物語は、やさしさをもって語られる、そこにもある、あったはずのやさしさが語られる。そこには光が差している。そして、その光のなかに希望がある、そう思いたかった。とても素晴らしい小説を読んだ。深くため息をつく。

    心身が草臥れているときは、あまり本がうまく読めないのだけれど、それでも本当に素晴らしい小説を読みはじめてみれば、「読書は我を忘れさせてくれる」。時代

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    2025年02月07日
  • すべての見えない光

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    今まで読んだ本の中でベスト5に入ると思う。3日くらい余韻に浸ってた。
    フランスで父親や周りの人に愛されて育つ盲目の少女、ドイツの養護施設で過ごす賢い少年、2人が否応なく戦争に巻き込まれていく。物語は静かに進む。美しいけれど残酷で、ときに人が心を失ってしまう世界。でも光はある。いつか、読み返したいと思う。

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    2025年02月05日
  • すべての見えない光

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    銃が勝った、いつものことだ!

    全身に響く本だった。泣きすぎて二重が消えた。
    美しいフランス、ドイツ、ロシアの情景を通じて盲目の少女と、小柄な少年、周りの優しい人達が描かれる。
    文章はとても平易でやさしい。
    そしてその優しい言葉で、戦争でその人達が何もかも失う過程を容赦なく見せられる。
    戦争は誰も勝たない。アメリカもイギリスも勝っていない。
    勝ったのは銃、大砲、手りゅう弾、原爆、暴力。
    負けたのは全ての人。鳥が好きなフレデリック、仕事を愛するまじめな錠前主任、そばかすだらけの空想好きな少女、科学と発明に夢中な少年、正義感あふれる女の子、たくさんの優しい大人たち。全て負けた。
    美しいフランスの海

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    2024年08月22日
  • すべての見えない光

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    憧れの小説。
    圧倒的No. 1。
    確か翻訳大賞を受賞されていたと思うけど、言葉が表現が文章がとても美しくて、内容と文章の美しさに感動して泣いた、そんな本は初めて。
    この小説は何にも似ていない。
    崇高で気品がある。
    読み返したいけど、それをするには覚悟がいる笑

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    2024年08月01日
  • すべての見えない光

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    時間軸や人物の視点が次々に入れ替わっていく、パズルのような構造の物語。第二次世界大戦を背景に、戦争が人々の人生を否が応でも変えていってしまう中盤まで、膨大な文章量も相まって読むのにエネルギーを使う。しかし、それまでの伏線を回収しながら全ての話が繋がっていくラストの約100ページは圧巻。

    長編小説ではあるが、ノンフィクションの要素も、ミステリーの要素も、詩の要素も、神話の要素も散りばめられている。作者の大胆かつ緻密な構成と、優しく丁寧な人物描写が素晴らしい作品。いつかまた読み返せたらと思う。

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    2024年03月23日
  • すべての見えない光

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    余韻の残る読後感、心がしばらくこの小説の中を漂いました。深く考えさせられる内容であり戦争のむごさに震えましたが戦後の主人公達の生きる姿にも触れられていて少しホッとしました、また人が生きる強さも感じました、

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    2024年01月16日
  • すべての見えない光

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    第二次世界大戦下。フランス・パリの博物館で働く父と暮らす盲目の少女。一方は、ドイツの炭鉱町にある孤児院に妹と暮らすラジオに興味を抱く少年。

    国も境遇も違う、戦争が無ければ決して巡り合わなかった二人の人生が、時間軸を前後しながら短い断章として交互に語られていきます。次第に戦争に巻き込まれて行く盲目の少女と少年の心情。そして、二人を中心とした他の人との交流が丁寧に描かれていて、美しい文章表現と相まって話しに引き込まれていきます。

    ただ、読み終えた直後は、期待した結末ではなかったので、しばし呆然という感じでした。しかし、少し時間をおいてみると、この結末だからこそ、二人の邂逅がより輝いて感じられる

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    2023年12月16日
  • すべての見えない光

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    第二次世界大戦中の重苦しさとダイヤモンドを巡るサスペンス感がありつつも、繊細な心情が綴られた詩的な文章が素敵で魅せられた。

    ドイツ兵というと横暴なイメージしかないけれど、全員がそうではなくヴェルナーやフレデリックのような性格の人達もいたんだよね。学問に興味のあった2人が戦争がなければ全く別の人生を歩んでいけただろうに…と思ってしまう。
    戦争経験者は戦争が終わっても生きている限りその記憶はいつまでも重い心のしこりとして残ってしまうのもやるせなく辛い。

    ドラマ化もされているので観てみたい。

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    2025年09月01日
  • すべての見えない光

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    新潮クレストブックスで。

    なんとなく、自分の中で思っていた2024年の課題図書のうちの一冊。

    第二次世界大戦の最中のドイツ兵とフランスの盲目の少女。
    重なるはずのない二つの命は、危機迫る中、細い糸のような希望になる。

    なぜこんなに理不尽に何もかも奪われるのだろう。
    自由、親、家、興味の追究、食べるもの。
    戦争がすり減らすもののどんなに大きく容赦ないものか。

    息苦しさのなか、ほんのちょっとのピュアな部分。
    それだけが救い。
    善人でいるのが難しい時代。
    そんな時代は2度と来ないで。

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    2024年11月21日
  • すべての見えない光

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    違う時間、違う場所にいる登場人物たちの視点で語られる断片的な情景がひとつの物語に集約されていく描写に圧倒された。映画を観たというかもはや自分で撮ったように感じるくらい引き込まれた。

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    2024年04月18日
  • すべての見えない光

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    第2次大戦のフランスの盲目の少女マリー=ロールとドイツの機械に強い少年兵ヴェルナーの邂逅の物語です。マリー=ロールの物語とヴェルナーの物語が交互に入れ替わる形で著され、物語の先が徐々に明らかになっていく技法は小説独特で、盲目の少女の感覚と重なるようなイメージを読者に与えているような気がします。マリー=ロールの持つ宝石の行方も気になる読者も多いと思います。物語の終わりは、世代の移り変わりによって、消えゆく者の定めを著しているように思えました。傑作だとは思うのですが、過去に読んだ名作と比べてののめり込み度合の部分で星4つにしました。

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    2024年01月25日
  • すべての見えない光

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    まだナチス・ドイツが台頭してくる前の時代。
    パリの国立自然史博物館の錠前主任を父に持つマリー=ロール・ルブランは幼い頃に目木見えなくなる。手先が器用でさまざまな難解な鍵を作る父は彼女の為に正確な街の模型を作り、マリー=ロールはその模型を手で辿る事で街の構造を覚え、盲目でも目的地まで街中を歩けるようになる。

    一方でドイツ、エッセン地方のツォルフェアアインという炭鉱の街では炭鉱夫だった父を落盤事故で亡くしたヴェルナー・ペニヒと妹のユッタ。二人は孤児の集まる施設で育つが、ヴェルナーは科学に興味があり、ラジオを自作して遠い異国から流れてくる電波を受信して妹と二人で夢中になる。

    ナチスが台頭してくる

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    2023年12月16日
  • すべての見えない光

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    WW2の時代。盲目の少女マリーとドイツの若い兵士・ヴェルナーのラジオを通した物語。
    「空気は生きたすべての生命、発せられたすべての文章の書庫にして記録であり、送信されたすべての言葉が、その内側でこだましつづけているのだとしたら。」

    印象に残った場面は、戦争が激化していく中でドイツ国内でフランス語を使うことをためらうエレナ先生。戦争終結後ユッタ(ドイツ人)がフランスへ行くとき、拙いフランス語を使うことでドイツ人とばれるのを恐れる描写の対比。
    また、ユッタがフランスのサン・マロで見た銘板(あれは実在だそうです)。そこにドイツ人兵士の名前はない。立場が変われば見えてくるものも違う。

    ただ、1つ1

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    2024年01月01日