末木新のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
短時間で読めるのに決して内容は薄くなく、ちくまプリマー新書らしい良書です。
〇「死にたいという思いは短期的な問題解決をもたらすように見えるセイレーンの歌声」という表現が上手いなぁと思いました。
〇「国民は、生きることの包括的な支援としての自殺対策の重要性に関する理解と関心を深めるように務めるものとする。」(自殺対策基本法第5条)…知らなかったです、この条文。
〇もし技術的に不老不死が誰にでも可能になったら、もしかしたら自殺は当たり前の選択肢(合理的)になるかもしれない…思考実験としてめちゃくちゃ面白い。
…他にも読みどころはたくさんあって、結論ありきの本ではないところが良かったです。
広い視点 -
Posted by ブクログ
大学の授業で使うため購入。今まで自殺という分野については触れたことがなかったので貴重な経験だと思った。そもそも自分は死というものについて悲観視しすぎているような感じを持っていたり、もちろん、自殺を推奨する訳ではないが、生きていることを完全なる善、自殺を完全なる悪という風潮があったりすることに違和感を持っていた。本書では、そもそも論自殺は悪いことなのかという部分をはじめ、多角的に述べられているように感じたのと同時に、現実問題の限界も感じることができた。特に、メディアやSNSでの報道により、良い意味でも悪い意味でも刺激が生じるので、その点、本当に多くの人が知識としても持っておく必要性があると感じる
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Posted by ブクログ
【「何故死にたいと思ってしまうのだろう」と考えたことがある方へおすすめ】
表題のようにどうして死にたいと考えてしまうのか、自殺は本当に悪なのか、生物学的にはどのような側面があるのか、興味がある方には刺さると思います。
テーマが少し重いので気力に余裕がある時に読むのがおすすめです。(もちろん本文中にも何度か注意書きがされています)
著者は東大で自殺を専門に講義をされている方で、統計データなども元に「どのような条件があると自殺まで行動させるのか」「自殺は本当に悪なのか」を中学生にも分かるように紐解いています。
大前提自殺を勧める本でも、絶対に辞めろと説教する本でもありません。
しかし専門 -
Posted by ブクログ
自殺をなるべく科学的に論じることを試みる本。
なぜ人は死にたくなるのか、死にたいと言われたら、死にたいと思ったら、自殺は悪いことなのか、幸福で死にづらい世界の作り方の五章編成だが、それぞれ明晰な文で内容がスッと頭の中に入った。
特に人はなぜ死にたくなるのかについては、客観的に書かれており、かなり腑に落ちる内容だった。
・自殺感の潜在能力(自殺企図、手段へのアクセス、不適切なメディア報道、自傷経験、アルコールの有害な使用、虐待)
・所属感の減弱(災害、戦争、孤立)
・負担感の知覚(スティグマ、失業・経済的損失)
この三要素が重なったとき、人は自殺する可能性が高まる、というもの。 -
Posted by ブクログ
ちくまプリマー新書なので、10代向けに書かれているが、要点がよくまとまっていてわかりやすく読みやすい。
「はじめに」にも書いてあるが、本の題名を見て、「読むタイミングが今ではない」と思ったら無理して読むことはないと思う。
しかし、知識として勉強になることが多かった。
特に第4章は興味深く、死をいろいろな角度から検証して、というのが勉強になった。
第1章自殺はなぜ起こるのか
・自殺はわからないことも多い
・自殺の大人関係理論
自殺ほ危険性は
「自殺潜在能力」「所属間の減弱」「負担感の知覚」の3つの要因が合わさったときに最も高くなる
第2章「死にたい」と言われたら
・死にたい、 -
Posted by ブクログ
ネタバレp.63
「死にたい」と打ち明けた人間が最も恐れるのは、意を決して行った重大な自己開示が軽く扱われることだからです。
p.64
「死にたい」という気持ちに向き合うということは、向き合う(向き合わされる)側にとってもとてもしんどくて恐いことであり、できれば避けたいものだからです。
p.68
共感することと、肯定することを混同しているかもしれません。
p.73
考えを変えていくためには、頭の中で論理的に考えることだけではなく、「ああそうだったんだ、自分の考えは違ったのかもしれない」という変化に対して感情的に納得できる体験が必要です。
p.78〜79
「死にたい」という訴えが強烈で、そこに目を奪われ -
Posted by ブクログ
死にたいと思う人は、国民の2、3割。そしてそののうち2%弱自殺が占めている。と言う事は、実際に死ぬ人はかなり少ないと言うことだ。
死にたいと言われたら、まず自殺潜在能力への介入をする。具体的には、自殺の準備状況の確認であり、準備がなされている場合には、それを物理的に使えないようにすると言うこと。第二にやるべき事は、所属感の減弱への介入であり、それは、関係性を強化することで、所属感を作り、孤独な状態を解消すると言うものです。そのためには、絆または関係性を作るために話を聞くことが重要でした。
自殺を予防しようと思うのであれば、このような不確実性に耐えるために、チームで助け合いながら、人との関わ -
Posted by ブクログ
自殺対策に携わる支援者が知っておきたいリスク要因の話などが簡潔にまとまっていた。新書なので一般の人にも読みやすく、誰もがこうした事態に遭遇したときに、まず何をするのか・何をしないのかがよくわかる。
似たような書籍は他にもあるが、本書の特徴は「自殺が悪いことなのか」について議論している点ではないかと思う。ここでは、ヒト以外の動物の自殺行為を例に挙げて説明しており、種の存続のためのメカニズムとして自殺が選択肢にあることが知れて興味深い。一方で、人間の自殺に種の存続としての機能があるのかと言われると、それは違う気もする。自殺の対人関係論の中では「負担感の知覚」がリスク要因として挙げられているが、本人