管賀江留郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
2021-05-09
力作。人を殴り殺せるほど厚い文庫本だが、読み出したら止まらない。一見関係のなさそうな寄り道ばかりに見えて、それが1つに集約していくのには感動すら覚える。
そしてその集約先が、そのように読んでしまうことこそが問題であるという、冷徹な事実。考えさせられる。
あとがきにある、「読者たれ消費者になるな」という提言もなかなかに重い。
戦後の、国警と自治警の指揮系統の違いははじめて知ったし、司法省と内務省のせめぎあいもあらためて知ることが出来た。
そしてそれが今現在も明らかに影響を残していることにも思い至る。(本書では現在への影響についてはほぼ触れていない)
進化の無目的性を強調 -
Posted by ブクログ
ネタバレ人間の脳は、目の前の対象をそのまま受け入れるのではなく、あらかじめ用意しているパターンに沿って物事を認識しようとする。あるいは、その場で簡単な因果関係をでっち上げ、それに固執する。対象を図式化して捉えようとして、却って真実から遠ざかってしまうことがあるのはこのためである。
元々、人類は生存競争に有利なように、このような認識能力を発達させてきた。五感から入ってくるすべての情報を受け入れてしまうと脳が処理しきれなくなるので、情報を絞って取り入れ、記憶などによってあらかじめ用意したパターンに沿って処理する。そうすることによって、瞬時に判断して危険を避けたりできるのである。特に狩猟採集時代は正確 -
Posted by ブクログ
冤罪がなぜ発生するのか、その原因は道徳感情にあったというのが本書の結論である。人間は進化の過程で互恵性に基づく集団を組成することで生き延びてきた。その過程では、互恵性のルールから逸脱する者が排除される。結果、逸脱者を排除するために人間の思考には、”我々の社会とはこうあるべき”という道徳感情が次第に形成され、排除されるものへの敵視とつながる。この道徳感情が暴走した結果、”あいつが犯罪を起こしたに違いない”というイメージが肥大化し、冤罪が生まれるーこれが本書で著者が主張する冤罪発生のメカニズムである。
とはいいながら、本書の面白さはこの結論の妥当性にあるのではなく、冤罪の原因を巡る過程において、