島田昌和のレビュー一覧
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渋沢栄一 社会企業家の先駆者
著:島田 昌和
渋沢栄一は、驚くべき学習能力の高さを示して、農民の子から武士身分を獲得し、明治新政府にあっても経済官僚として高い能力を発揮する。しかし、権力闘争の渦巻く中、政官界よりも、「官尊民卑」の打破を掲げて「民」にあって自立できる民間経済社会の建設を我が仕事として選択していった。
日本の近代化に必要不可欠な多様な会社を立ち上げ、必要とされる局面では誰よりも責任を背負って会社の立ち上げ、運営を主導した。
本書の構成は以下の5章から成る。
①農民の子から幕臣へ
②明治実業界のリーダー
③渋沢栄一をめぐる人的ネットワーク
④「民」のための政治を目指して
⑤ -
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個人的には、渋沢の伝記的な部分はおおよそ押えているので、第1・2章は飛ばし読みをしていました。渋沢が500の会社、600の社会事業に関わったなら、一人で全部できるわけがないので、周囲の人との関係の中で進めていったのは容易に想像がつきます。その意味で、第3章が僕はいちばん興味深かったです。知っている名前も多いですが、知ってはいても渋沢と関係していたことを知らない人もいたり、関係があるのは知っていたけどそこまで深い関係とは知らなかった、という人もいて、明治時代の財界人物相関図を整理しないとわけがわからなるな、と思いました。
第4・5章は、渋沢の思想を渋沢の行動から読み解く部分があり、興味を持てる部 -
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渋沢というと合本主義(株式会社)。当然、関わった会社ももっぱら株式会社組織にこだわったように思うが、意外にも合資会社や合名会社、そして匿名組合とさまざまな会社組織を事業の目的や規模等々によって使い分け、柔軟に対応していたことが指摘されており、興味深い(76-78ページ)。また第3章で詳述されている渋沢をめぐる人的ネットワークについて、龍門社や同族の役割を明らかにしたことも著者のオリジナルな貢献として特筆すべき点であろう。
自分自身の関心からいえば、第4章の渋沢の政策に関わりに関する部分が面白かった。通常、日清戦後期の外資導入政策については著者も指摘するように日露戦後期の本格的な外資導入時代に -
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近代経営学の専門家による渋沢栄一が行った施策について書かれた本。渋沢を取り巻く人的ネットワークや教育・社会事業など、取り上げられている項目については、詳細な調査に基づいており内容が濃い。ただし、渋沢の全体像は捉えにくく、枝葉は詳しいが幹が見えない感がある。
また、近代の欧米を中心とした国際関係論や安全保障政策についての知識が欠如しているように思え、記述に違和感がある箇所があった。印象的な記述を記す。
「渋沢は、「物質的な喪失はいくらでも再建できる、いま大切なのは、物的な豊かさに目を奪われて、失いかけていた公共心や利他心を今ここで再度呼び戻すことができるかだ」と人々に訴え続けた」p217 -
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日本の資本主義経済の開祖、農民から政府高官を経て経済界の第一人者となった渋沢栄一の本。
幕末、徳川慶喜に仕え、渡欧しヨーロッパを視察
新政府では井上馨のもとで大蔵省の役人として日本の経済界の基盤をつくり、野に下っては日本銀行設立、またあらゆる企業を育成した。
なかなか一言では語れないほど、多くの事業を発展させてきた御仁です。経済文化あらゆる分野に着手しておられる。。。。純粋に、寝る暇とかあったのかな?本当に精力的に働いてらっしゃいます。普通の人間ではないのはその経歴を鑑みれば一目瞭然。
ただ、ほかの政府高官と異なるのは、出世欲や権力への執着がまるで無く、ただ国に対する親切心があるのみ。なん -
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ネタバレ内容の深さは、鹿島茂著の渋沢栄一氏の伝記、「算盤篇」「論語篇」の方が充実している。本書は、その内容を短縮したものであるため、具体的な渋沢の動向は省略されている。
その分、渋沢がどのように日本経済界に貢献してきたかに着目し、その点に比重を置いて説明している。例えば、渋沢がどのように企業と関係したかを1.社長として、2.取締役や監査役などとして、3.大口投資家としてなどという風にその関わり方から分析している。実際、約170社の企業経営に携わった渋沢だが、全てを経営した訳じゃなく、渋沢の大きな役目は、①株主と経営側との仲介役と、②役員の選定に大きな役割を果たしたと本書では述べられている。明治初期