今野元のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書は、「知的巨人」マックス・ヴェーバーの「人格形成物語」を描く試みであり、ヴェーバーの個別作品の解説ではなく、「伝記論的転回」として、それらの作品が生み出された人格的・歴史的文脈を描いている。
本書により、主体性を追求しつつ、攻撃的で、熱心なドイツナショナリストであり、自分及び自分側中心(プロテスタンティズム・ドイツ・西洋など)の状況認識をしがちであったといったヴェーバーの様々な側面が理解できた。
正直、これまでウェーバーは「学問の価値中立」を提唱した知的に謙抑的な人物だと思い込んでいたが、ヴェーバーは決して「世事を超越して知的に精進した求道者」ではなく、ポーランドへの蔑視をはじめ、バイアス -
Posted by ブクログ
著者が云うところの、ヴェーバー研究の"伝記論的転回"を踏まえて著された評伝である。評伝、特に思想家や学者についてのそれは、代表作を中心に、その内容や受容のされ方、後代への影響を論じるというものが多いが、本書は、ドイツ「マックス・ヴェーバー全集」に依拠して書簡や講義その他の資料を駆使し、ヴェーバーの人物像を浮き彫りにしている。
学生時代に「プロ倫」や「支配の社会学」、「職業としての政治」などは必読書とされていたので読んだが、どちらかと言うと、近代主義的評価からヴェーバーのイメージを持っていたし、書斎で沈思黙考する学者という印象を持っていた。本書では論争、論難、決闘をも厭わな -
Posted by ブクログ
副題に「主体的人間の悲喜劇」とある本書は、著者が提唱するヴェーバーの「伝記的論的転回」によって、新たなヴェーバー像を描き、「人間の「主体性」(ドイツ語ではSouveräntiät)の追求こそ、ヴェーバーの人生を貫くテーマだった」(p.230)ことを示している。もともとこの「主体性」なる用語・概念は戦前期日本の西欧からの自立、戦後は国家や集団からの自立という意味で安藤英治(1921-88)が使用した用語であり、その意味で本書もヴェーバーの伝記的研究の先駆者としての安藤へのオマージュであると述べられている。
では、主体性を追求していったヴェーバーは、立派な人間であったのか。答えは否であろう。良く