易占+本格ミステリーという面白い設定。
探偵役は京都の細い路地裏にある古い法衣店(法衣や袈裟などを扱う)を営む六角聡明26歳。
最初の依頼者で、その後は友人として助手として側にいる同い年のカメラマン・安見直行と共に様々な事件のなぞ解きに挑む。
犯人はどうやって被害者が歩いている場所にピンポイントで
...続きを読むコンクリートブロックを落とし死なせることが出来たのか。
犯人はどうやって襖一枚隔てた先で起きていた直行たちに気付かれずに殺人を実行出来たのか。
犯人は映画館内でどうやって周囲に気付かれずに被害者の首を折ることが出来たのか。
犯人はどうやって込み合ったライブハウスの中で被害者を刺し消え去ることが出来たのか。
様々なハウダニットが展開されて楽しいが、映画館の話のように他の話も出来れば図解が欲しかったものもあった。
六角は名探偵キャラらしく不愛想で言葉遣いにも容赦ない。出会い頭にいきなり予言めいたことを言うのも占い師らしく、それが実際の事件だったり出来事ときちんとリンクしているのも面白い。事件と関わっていることもあれば小さな出来事である場合もあるけれど。できればすべての話で占いを絡めて欲しかった。途中作家さんが面倒になったのか、ただの探偵ものになってしまった話もある。
ただ他の方のレビューにもあるが、ここまで凝った方法を取らなければならかったかと言われると少々疑問。もっとシンプルな方法でも良かったとは思う。ただ読み物としては楽しめた。
最終話は十四年前の、六角の母親が入院中の病室から消えた事件。以来、神隠しの病室と呼ばれるその因縁の病室に六角自身が盲腸で入院することになる。
非常に苦い事件ではあったが、六角自身かなり前にそういう覚悟はしていたようで受け入れている。
代わりに安見が走り回って頑張っている。
安見がとにかくお人好しで、六角曰く『安見カモ行』に名前を変えろと言われるくらい人を信じやすい。だがその分六角が冷静に物事を見ているのでちょうど良いバランスだろう。
ちょっと残念だったのはユーフラテスという、『写真にたまに映り込む』のだが『誰も実際には姿を見かけへん』猫が、安見が撮った写真に写っていただけでその後は触れられなかったこと。たぶん表紙に描かれているのはユーフラテスだと思うのだが、何か事件の解明のきっかけを作るとか、六角・安見コンビを手助けするために現れるとか、そういう設定だと面白かったのだが。
シリーズ化を睨んでいるのなら、猫好きとしては続編ではぜひ登場させてもらいたい。