ツイッターやフェイスブックなどが社会にもたらした影響の本質的な要素を生物学の観点から分析するとともに、社会自体を有機的な生命体と考えることで、ソーシャルメディアと社会のより良い関係構築に向けた課題と解決策を提示した一冊。
著者は、細胞から構成される生物が、必要な栄養素を吸収・代謝しながら外部環境の
...続きを読む変化に適応・進化するのと同様に、我々の社会も個人の脳を最小構成単位として、必要なアイディアやミームを含む情報コンテンツを作成・取捨選択・共有しながら社会全体として成長しており、この営みを爆発的に加速化したのがインターネットとソーシャルメディアであると分析する。その過程で社会構造は階層型・集中管理型から水平・分散型へと移行しつつあり、コンテンツの作り手と受け手の境界が曖昧となった結果、社会は基本的により良い方向に進む一方、一部で悪意のあるヘイトやデマ、炎上といった弊害も生まれているが、それらはむしろ生命体が細菌やウィルスに対する免疫力を高める機会と考え、検閲という抗生物質のような手段に頼るよりも、人々の共感や思いやりから生まれるポジティブなコンテンツによって自律的に平衡状態を維持すべきであり、中央集権に代わるテクノロジーとしてのブロックチェーンやゲーミフィケーションにその実現可能性があると主張する。
社会を生命体と捉える視点自体はそれほど新しいものではないが、ここまで突き詰めて分析した論考は初めて目にした。著者のスタンスはあくまでポジティブな性善説に基づくものであり、”情報リバタリアニズム”とも言えるような、ある意味で「振り切った極論」にも思えるが、フェイスブックのような巨大プラットフォーマーとの今後の付き合い方も含め、納得感の高い示唆が数多く得られる良書。