人は誰しもストレスを抱えている。ストレスは生きていくために必要な防衛機能であり、適度なストレスであれば、行動意欲や活動の活性化に繋がる。ストレスを引き起こす要因をストレッサーと呼ぶが、生活する上では常に社会に家庭に職場にこの要因に囲まれながら生きていると言える。よって誰もがストレスに立ち向かっている
...続きを読むのだが、暑がりだったり、寒がりだったりするように、その立ち向かう強さには強弱がある。極度のストレスに晒され耐えられる限界点を超えると、体のあちこちに不調を来す。その場所も人によって異なるのは、ストレスが体の最も弱い部分をターゲットにするからだそう。胃腸に不安を抱えた人はお腹が痛くなったり、皮膚が敏感な人には麻疹がでたりする。この様な状態が長期にわたるとうつ病やストレス障害という状態になる。
本書は自衛隊の海外派遣に同行した精神科医がストレスの原因や対処法まで、ベトナム戦争のPTSDや日常的に見掛けられるような事例を用いてわかりやすく解説している。
前述のストレス障害もうつ病も一括りにされることが多いが、前者は会社の上司からの叱責や家族の死、転勤や人事異動などの外的なストレス要因(ローリスクストレッサー)の積み重ね(ボディーブロー)=外的な要因であるのに対して、後者はそれらの原因を内なるものに求めてしまう傾向と示す。例えば上司に怒られた際に自分の仕事のやり方に原因があるとか、家族との対話においても上手くいかない理由を自分に求めてしまう結果と説明する。確かに結果的には似た様な症状でも、原因が異なるから解決方法も違う。正しく原因かを見極めた適切な対処が必要だ。
いずれにしてもその様な状態になる前に手を打てるのが良いのであって、人にはその防御力も備わっている。
本書後半はその様な防御方法と対処法中心に説明していく。人は仕事もするし学生なら勉強もする。皆同じことをしていても外部環境は異なるから一概には言えないが、前述の鬱が内的要因であるように受ける自分側で一定の回避策が取れる。一つはモチベーション。苦しいことも辛いことも自分がああしたいこうなりたいと強く思う事で一定のテンション(緊張状態)を維持できる。これがプツリと切れる前に、遊びや休息、別の行動に切り替えるなどする事でテンションに緩急をつけて維持できる。好きなことを仕事にする、という人がいるが、好きなことほど仕事にしない方が良いかもしれない。何故ならそれを仕事にしてしまえば、人生の多くの時間を仕事に費やすのだから、万が一上手くいかない状況に陥ると逃げ場が失われてしまう。仕事だから好きなままやっていけるという余程の自信がない限りリスクは大きい。無給のボランティアでいつでも辞められるなら別だが、仕事なら話は違う。ノルマやこなさなければならないタスクや目標や人間関係や、逃げられない多くのストレッサーを「楽しみ」に持ち込むのはお勧めしない。大切な逃げ場はテンション維持の緩める場として取っておきたい。
後半のこの様な対処に関する記述は非常にためになる。すぐにでも実践できるものばかりで、面倒なら後半のみ読むのも良いだろう。だが原因やプロセス、分類をしっかり追って理解することで、より一層自分に合った対処ができるという点で、頭から読むことをおすすめする。
私も会社のストレスチェックで90%(基準は判らない)の診断を受けて産業医面談を何度か受けたが、会話の後に「大丈夫!あなたは強いから問題なし」と言われた時は、何を根拠に、と感じたが、今日も元気に1日のやる事を想像してるからきっと大丈夫なんだろう…。毎月80時間近い残業を続けながら会社の洗面台で鏡に映るややボサボサの頭、ハンカチを忘れた事に気付くと少し不安だ。