アンディ・ウォーホルのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ初めから暖かい雰囲気で始まって、『ツバキ文具店』や『今宵も喫茶ドードーのキッチンで』みたいな柔らかさと安心感を感じた。登場するどの家族も暖かさがあるし、ハラハラするような事件は起きないから安心して読み進められる。
でも暖かさが胸に沁みて涙が出てくるから注意!
いっこおばちゃんが旅行中の怪我で歩けなくなって真っ暗なトンネルに入ってしまった時、晴日の結婚報告がきっかけでリハビリを頑張るようになる。家族が暗闇から救ってくれる存在になっているって理想的だなぁと思う。
初出に、阪急不動産株式会社ホームページって書いてあって調べたら、阪急不動産の「阪急宝塚山手台」とコラボした書き下ろし小説らしい。
そして一般公募した家族や住まいにまつわるエピソードが脚色されて物語の中に落とし込まれているとのこと。
本当にこんな暖かい家族があるんだと思うと、羨ましいし、なんだか安心する。
理想の家族がギュギュッと詰まった暖かい連作短編集だった。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ大阪・梅田から電車やバスを乗り継いで、いくつかの角を曲がると、赤い屋根、クリーム色の壁、チョコレート色のドアのそばに大きな金木犀が目印の小さな小さな洋菓子店、その名も、「スイートホーム」。
そこで過ごす家族の物語やその家族に関わっている人達の物語だった。
パティシエの父、看板娘の母と姉妹の4人家族。
毎年秋になると、スイートホームの前で家族写真を撮ることが恒例となっていた。
月日が過ぎていき、姉が結婚し、義理の母が同居し、姉の家族に子供が生まれ、妹が結婚し、妹の家族にも子供ができた。
そんなこんなで家族写真のメンバーが増えていく。
それだけでも ほっこりするのに、そのスイートホームの人達に関わっている近所の人や義理の母の友達、姉が通う料理教室の先生たちも日常生活がだんだん良い方向に向かっていき、生き生きとしていく。
登場人物みんな、ハッピーエンドで本当に良かったと思った。 -
Posted by ブクログ
アンディ・ウォーホル氏の著作『ぼくの哲学(The Philosophy of Andy Warhol: From A to B and Back Again)』は、単なる自伝でも、芸術論でもなく、彼自身の存在そのものを一つのアート作品として提示するようなテキストである。ポップアートの旗手として知られるウォーホル氏は、1950年代の商業イラストレーターとしての活動を経て、60年代には、スープ缶やマリリン・モンローといった大量生産されたイメージを作品化することで芸術の領域を根底から揺さぶった。彼の作品は、「何を描くか」よりも「どのようにそれを複製し、流通させるか」という点に焦点を当てることで、アートにおける「創造する主体」の存在意義を相対化した。これにより、芸術における「個性」や「創造性」は内面的衝動ではなく、社会的・メディア的な文脈のなかで再定義されることになった。
本書においてウォーホル氏は、恋愛や時間、お金、美といった様々なテーマについて語るが、いずれの語りにも深刻さや観念的な理屈はほとんど存在しない。彼は軽薄さをあえて演じながら、「本物の自分」や「真実の芸術」という概念を解体していく。たとえば、「1番魅惑的なアートは商売に長けていることだと思う(本文のエッセイ6「働く」から引用)」といった発言には、資本主義社会のなかで芸術と消費がもはや切り離せない現実を、アイロニカルに肯定する姿勢が見られる。彼にとって、作品制作は市場やメディアとの相互作用のなかでしか成立しえず、芸術家の役割は「世界を映す鏡」であるよりも、「世界の回路そのもの」になることだったのだ。
また、本書は彼の「ファクトリー」時代の総括と位置付けることができる。多くの人々と共同し、シルクスクリーンによる複製を量産した彼の制作現場は、芸術の神話を解体し、アーティストを一人の天才から社会的な装置へと変換した。本書においても、彼は「ぼく」という一人称を使いながら、どこかでその自我を消し去っている。語っているのは確かにウォーホル氏自身だが、その語り口は無限に再生可能で、彼の肖像画のように「誰でもありうる」存在として響く。
本書『ぼくの哲学』は、ウォーホル氏が作り上げた「ポップアートの世界」を言葉のレベルで再演した書物である。彼の冷笑的な明るさや人工的な平坦さのなかには、人間存在の空虚さと、それでもなお生きていく軽やかさが共存している。「芸術作品を作る」ことと「生きる」ことを同義に語った本書は、ウォーホル氏の人生そのものがアートであったことの最も率直な証左といえるだろう。
「新しいものというのはわからないものなんだ。何なのかさえわからない。10年くらい経たないと新しくならないものだ、そしたら新しく見える」
ー本書エッセイ12「芸術」 -
Posted by ブクログ
ネタバレどの話も甘くて幸せな雰囲気が漂っている。
ケーキ屋さんのスイーツが食べたくなる。
ただ、普段からイヤミスなど人間の隠したい部分が全面に出てる作品が好みの私には登場人物がみんな善人すぎて、どこか夢物語感が否めなかった。ごめんなさい。
そんな中でもお気に入りは『希望のギフト』。いっこおばちゃんが怪我によって諦めモードになるところの描写は少し共感できた。
私自身も心労が重なってセルフネグレクト気味だった時に、姉の結婚報告を受けて、式への参列を目標に少しずつ心のリハビリをした事を思い出した。自分のためには頑張れないけど、他の誰かの幸せのためなら頑張れることもあるんだと思った。