「現役にして伝説のライダー」と呼ばれ、2009年までにWGP全クラス通算9度のチャンピオンを獲得しているバレンティーノ・ロッシ。
そのロッシが2004~2010年までヤマハに在籍していた時のストーリーを、ロッシの視点は勿論、ロッシと共に戦ったメカニックやマネージャー、そして当時チームを取り纏めていた
...続きを読むヤマハ・古沢政生氏の視点から主に描かれている。
とにかく読みごたえがあり、当時、WGPという華やかな舞台の裏で何が起こっていたのか?という裏事情は非常に興味深く読める。
ライダーとチーム、メーカー同士の駆け引き、そして政治的な話もあり、グランプリという舞台が複雑な人間関係の上に成り立っていることがとてもよくわかる。(余談にはなるが、こういった点が「天才ライダー」と称されたケーシー・ストーナーのあまりにも早い引退に繋がったのだろうか、とも考えさせられた部分もあった。)
だが、そんな中でもこの”ドリームチーム”の、特にロッシと古沢氏の信頼関係は素晴らしく、個人的にも(分野は全く違うが)一社会人として仕事をする上での相手との信頼関係の重要性をひしひしと感じさせられた。
また、作者はエンリコ・ボルギ氏という海外のジャーナリストであるが、ヤマハ発動機というメーカーの生い立ち、ひいては日本人の精神的な部分にも作中にて触れており、その智見には感嘆せざるを得ない。ロッシやバイクレースに興味がない人でも、日本人でものづくりに携わっている人であれば一読の価値が十分にある一冊となっている。
☆1つ減らしているのは、ストーリーの時間軸が飛躍しすぎる点と、時折「誰のコメントなのか?」が分かりにくかった点を少し辛口に評価させていただいた。
ロッシは今年、2013年より再度ヤマハに復帰を果たしている。
本著に記載されている2004年の電撃移籍とは事情も背景も全く異なるものの、10度目の世界チャンピオンを期待してしまうのは、彼がそれだけのことを成し遂げてきたライダーであるからに他ならない。