浅倉久志・他のレビュー一覧
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ネタバレ[記憶屋ジョニィ]
[ガーンズバック連続体]
流行雑誌のカメラマンが、30年代のアメリカが求めていた未来風の建築物を撮っているうちに、本当にそれを見てしまうというギブスンとしてはちょっと変わった話。登場人物の一人にそんなものは記号論的亡霊にすぎない、大衆潜在意識の一部を感じ取っただけ、と言わせたり、現実のアメリカの抱える問題とのずれを指摘したりして、SFの無邪気な部分をあっさりと切り捨てているようにも読める。下手をすると小難しいこと言ってる反SFの作家みたい。こんなの書いたあとによく電脳シリーズを書いたよなあ。でもサイバーパンクの批判性ってこういうことなのかも。
雰囲気的には「カウント・ -
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ネタバレ「ニューロマンサー」を読んで、目くるめくSF仕掛けに翻弄されて、元になったこの作品を読もうと思った。面白かった感で言うと、こちらの方が上。完成度は「ニューロマンサー」が上かな。
麻薬よりも強力に脳内に作用するソフトウェア、高度に進化した整形というか人体改造、マトリックス世界への侵入、千葉シティ・・・といった「ニューロマンサー」で使われた仕掛けを描いた作品も勿論面白いのだが、一方で宇宙ものの2編もなかなか良かった。宇宙開発はソ連が優勢になるのは、人の命より国家が大事だからなんだろうね。
もう歳で長編を一気に読む気力が無いのもあるが、SFは短編の方が好きなのかもしれない。 -
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1980年代を席巻したサイバーパンク・ムーヴメントの代表格、ウィリアム・ギブスンの短編集。かの有名な「ニューロマンサー」と同一の世界観に基づく「スプロール」シリーズをはじめとする、当時最高に尖りまくっていた作品を収録しています。
そう、サイバーパンクなんですよ。90年代に入るとあっという間に消えていった、あのムーヴメント。
不肖鴨、「ニューロマンサー」は読んだことがありません。同じくサイバーパンクの代名詞とも言えるブルース・スターリングの作品を読んだことがありますが、正直ピンと来ませんでした。この「クローム襲撃」も、音楽で言えば「懐メロ」的な、SF史の勉強がてら読んでおこうかなー、という軽い -
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サイバーパンクといえばこの人、ウィリアム・ギブスンの第一短篇集がこちら。ハヤカワ文庫補完計画のおかげで手に取ることに。ありがとう、早川書房。ただし、装画は確実に旧版の方がかっちょいい。「ニューロマンサー」もまた然り。
そんな自身初のギブスンは、なかなか刺激的でした。
初っ端の「記憶屋ジョニイ」に感じたギラギラした読み応えは、途中の「ガーンズバック連続体」と「ホログラム薔薇のかけら」こそ肌に合いませんでしたが、「辺境」、「ドッグファイト」ときて、トドメの「クローム襲撃」まで終始変わらず。個人的には「辺境」の世界観がたまらなく好きなのですが、サイバーパンクを味わうという意味では、やっぱり表題作。 -
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ネタバレ全10作品の短篇集。新版。サイバーパンクっぽくないものも。
初ギブスンにして読むのに数ヶ月かかった「ニューロマンサー」から2年近く経ち。SF読解力(サイバーパンクと括る勇気は無い……)が少しは向上していることを願いながらギブスン再挑戦。
通して読んでみて、黒丸 尚氏の訳は独特で格好良いんだけれども、私にはやはり難しいという感じ。シーンが想像し難く、読み進めるのに非常に時間がかかる。そんなわかりづらさこそがギブスンなのだろうと今までずっと思っていたが、収録作「辺境(浅倉久志訳)」、「赤い星、冬の軌道(小川 隆訳)」がスイスイと読め、「ニュー・ローズ・ホテル(浅倉久志訳)」は格好良さに身悶えし -
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ウイリアム・ギブソンという作家は、発想や世界観が素晴らしくうまくハマるととても魅力的なのだと思う。
でもなんというか私にはどうも文章が読みづらく、理解するためにどうしても読み直さなければならなくなり、結果的に面白さは頭では理解できるのだが感覚的に「いい!」と思いづらい。
これがとても歯がゆい。
訳の問題なのかな(多くの人が黒丸尚氏の訳には疑問を呈している)。
設定は本当にかっこよくて、かつての、日本が世界の経済を引っ張っていた時代からそのまま進んだ世界線上の近未来。それがおそらくサイバーパンク感を増している。
本作品は短編集で、『ニューロマンサー』に時々置いてけぼりにされた私も比較的ついて -
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ウィリアム・ギブスンは、彼の頭の中の情景をどれだけ自分の脳内に再現できるかというその独特のセンスにかかっていると思う。
私はSFは好きだけれども、残念ながらそのセンスを持ち合わせていないのでとにかく彼の世界を断片的にしか理解できない。
若いときはそれでも、語感の良さだけで受け入れられていた部分があり「なんかよくわかんないけどかっこいいぜ!」というところだけで満足できていたと思うのだけれども、年をとり随分と偏屈になってしまってからは一定の理解がないと満たされなくなってしまっている。
そんな悲しい現実に改めて直面させられた短編集。
「ニューロマンサー」はまだ理解できたんだけどなあ。