西川靖二のレビュー一覧
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末世の低級な王の無理解や家臣の専横を批判することの危険を膚に感じながら、己の主張を展開した韓非の姿や思想を、原典に触れつつわかりやすく描いている。法家思想といえば、一般の人々を法に厳しく従わせるようなイメージが強いが、実はその厳しさの矛先は、まずは君主に近い家臣たちが君主の権力を私物化しようとすることに向けられていたという。そしてまた法治主義は、聖人でない普通の君主が普通の人々をうまく治めるにはどうしたらよいか、という現実的な問いに答えるものとして説かれているという。人間の性質を善悪でなく功利でとらえる立場に立つ韓非子の思想は、思っていたより単純ではなかった。
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誰もが知る「矛盾」、「守株」、「逆鱗に触れる」。
それはいずれも、韓非子による。
韓非の生涯と、思想について、コンパクトにまとめた本。
儒者と異なり、理念ではなく「利」に基づく人間観を持っている。
つまり、人間は本来善でも悪でもなく、その場の利益に基づいて動くものだ、ということ。
それゆえに、君主は、法と術にのっとって臣下をコントロールしなければならなく、臣下や家族に気を許してはいけない。
臣下は君主の利害関心がどこにあるかを冷静に見極めて、何を伝え、どう接するかを考えねばならない。
寵臣の中へ入り、まず喜ばれない立場にいるにもかかわらず、君主に自説を聞き入れさせるのは難しい。
こういった場 -
Posted by ブクログ
20/5/1
英明な君主が臣下を養う場合、臣下は官職の職域を越えて業績を得ることが許されず、言葉を陳べて業績がその言葉に合致しないことも許されない。
七術
1>いろいろな人の言行を照らし合わせてみる
2>必罰をもって威厳を明らかにする
3>信賞をもって能力を尽くさせる
4>いちいち臣下の言を聴き、その結果が言に一致することを求める
5>故意に疑わしい命令を出したり、逆の命令を出したりして臣下を惑わせる
6>知っていることを知らないふりをして臣下に尋ねてみる
7>誉めるべきものを反対に謗ったり、憎む相手を可愛がったりする
平均的人間のための支配の術>それが法家韓非の関心
【利」こそが道徳や -
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卒論が無事終わり久しぶりの更新
今回は韓非子です。
一言でいうならドライ
でもそのドライは単に冷たいという意味ではなく、次から次へと覇権が変わる時代において生き残るための術とも言える。たとえ、妻子であっても隙を見せてはいけない。
また王に使える者として、どのように進言をすべきか、その仕方によっては自らの命を失うこともある。
孔子のように徳による政治ではなく法と術による政治を説いた韓非子には好き嫌いがあるかもしれないが、心得ておくべきと思うことが多々あった。
これは自分の勝手な解釈だが、日本人(内資)に受けるのが、孔子なら外国(外資)に受けるのは韓非子かもしれない。
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君主による「法」「術」によって国家を統治しようとする「法家思想」の書『韓非子』を、原典から引用しながら分かりやすく解説してくれる入門書。原文の書き下し文で雰囲気を味わいつつ、現代語訳と解説で『韓非子』のエッセンスを掴むことができる。
三章構成になっていて、第一章では、法家思想を唱える「法術の士」とはいかなる人間かがまとめられる。思想の内容ではなく、その思想家の立場の説明から入るというのが面白かった。
厳格な法による統治を目指す法家思想は、その立場上、大きな政治改革の必要性を説く必要がある。そのため、あらゆる国の君主に、その思想を説くにあたっても、その身に危険が及ぶ可能性がある。
戦国時代とい -
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ネタバレ中国のマキャベリとも言われる韓非子
戦国時代の思想だけに、厳格な法治と冷徹な権謀術数による君主権力の強化こそが民を混乱した世の中から救い出し、儒家のいう「仁」にも叶うのだという。現代の感覚からするとやや姑息なニュアンスが強い内容になっているが、こういう時代背景では仕方ないのかもしれない
君主は「術」すなわり、臣下を操るため密かに用いる技術(他人に悟られてはいけない)と「法」として公開した上で厳しく思考する制度の二つを運用すべし。戦争に勝った時、君主でなく臣下が尊敬され、勝ち取った領土が臣下個人の領地になってしまうのは、君主に臣下の悪事を知るための術がないからだ。いくら法を整備しても臣下たちは