中津文彦のレビュー一覧
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NHK大河ドラマ「平清盛」でも登場してきた源義経。
一ノ谷・屋島・壇ノ浦と連勝し、平家を滅亡に追い込んだ立役者ながら、兄・頼朝との確執から奥州藤原氏の平泉に落ち、そこで自害に追い込まれた「悲劇の英雄」として語り継がれています。
でも、『吾妻鏡』をはじめとする史料には、本当にそこで死んだのか、疑わしい記述が散見されます。
義経は生きて平泉を脱出したのではないか?
だとすれば、かれはどこへ行き、何をしようとしていたのか?
本書は、東北各地に残る「義経北行伝説」などを踏まえつつ、推理作家ならではの想像力で義経の「不死伝説」を長年検証してきた著者による決定版。
第一部で史実として語られる -
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これはもう昭和!な正統派推理小説というか、江戸川乱歩賞を取ったと書いてあるけど、まさに乱歩っぽいのよ。殺人事件からいつの間にか岩手の山奥に眠る財宝を求めて、、てな展開で。いやこういうお話って最近はなかなか無いよね。って知らんけど。
その他、時刻表を見ながらのトリックもあったり、個人情報保護法とかないわ、っていうルーズさも昭和。
そういう限定された世界観ではあるけど楽しくはあって。ただね、いちいち歴史の講釈を垂れるのがちょっとうざったいというか、いやその話さっきも聞いたがな、っていう、大事なことなんでもう一回言います、どころか3回でも言いますみたいな、年寄の話を聞かされている感もあるけど、まぁ勉 -
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「歴史に消された」というタイトルはそぐわないのではないか。俎上に上がった18人のうち、半数は大河ドラマの主役になっている。
三野村利左衛門を採り上げてくれたのは、『青天を衝け』でイッセー尾形が怪演していたところだから有難い。
伊達政宗、藤田東湖、河田小龍の章は勉強になった。
ひとつ疑問がある。兵力のそろわない信長を京都におびき寄せた三大名物の一つ「楢柴」について、『歴史ミステリー講座』では「当時、楢柴を持っていたのは博多の商人島井宗室なんですね」と発言している。本書では「宗室が所持していたのだが、筑前秋月の城主、秋月種実に強奪されるという悔しい目に遭っていた」とある。新史料が見つかった -
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直刀から湾刀へ。この一戦が源氏を武家の棟梁へと押し上げた。面白い切り口だ。大和の直刀が奥州の安部氏の湾刀に勝つことが出来ずに朝廷の威信は無いものとなっている状態の奥州へ源氏の若殿源義家が若き刀工に秘密を探らせる。
この時代の作品をほとんど読んだことがなく…いや記憶にないということはこの時代の作品に挑んだ作家さんがいないということだと思います。しかも神話の時代から続いた直刀の文化が、湾刀へと変わる大和に伝わることがなく、奥州へとそれが伝わったというのは少し眉唾物だが…とにかくこの時代の武家の頂点へ昇り詰めるとは非常に大変なことで暗殺の歴史の方が強く感じる。
の割には集中して読めた。その後、頼 -
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地元では、今を盛んと田植えが行われている。
仕事で車を走らせながら、黙々と農作業をする姿を見ながら考えた。
彼らの強さを。人に使われる会社員との違いを。
ビジネスマンとして、日ごろからそのスキルを上げること、社内での立ち位置を確保すること、そんなことに腐心している自分。上司が変わればそれに合わせ、ルールが変更になれば右往左往する。それは勤めてお金をもらう立場なら当たり前のことだが、そこに同時に本人の成長がなければ空しい空論を振り回す輩と変わらない。
時代小説を読むと時折覚えるのと似た感覚。
この国を支えるのは武士なのか、農民なのか。
権謀術策を繰り広げる為政者。技を鍛え -
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ネタバレ今から30年くらい前の乱歩賞受賞作品。いわゆる、謎解き及び暗号解読物ミステリーであるが、けっこう、面白く読めた。さらに、奥州藤原氏と義経伝説を絡めた作品だから、歴史に興味のある方々にはたまらないかもしれない。
私は歴史より、暗号解読派ではあるが、ただ、「阿比留草文字」だとか、「魔方陣」だとかが出てきたらちょっと訳がわからなくなってしまった。それも、金色堂がキーとなるなどとは思いもよらず・・・。
さらに、アリバイのトリックもあった。ただ、これは飛行機を使う単純な時間合わせ的なトリックなので、そう複雑ではない。ただ、最初はダラダラと義経北紀行の話でつまらなかったが、後半の暗号解読場面から勢い最後の -
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文庫に付された帯やカバーには「傑作歴史小説」と書いている。解説に歴史ミステリーとあったのだが、どこがミステリーだったのか、どうもしっくりこなかった。
読み終わったときに、少々すかされたように感じたのは、まず、ミステリーの件。
それから、田沼意次について、ステレオタイプというか、どうなんだろう?と思ったこと。
「小説菅江真澄」とカバーにあるが、「菅江真澄」となってからの部分がとても少ないこと。
松平定信と菅江真澄と、記述のバランスがどうも……ということ。
ということでしょうか。
さすが、中津さんと思わせる、膨大な史料をもとにした小説とは思います。上中下三冊で書いてもよいくらいのものを、一冊で書い -
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「もしも…だったら」と想像するのは楽しい。 歴史上の出来事を、別な可能性を紡いで。
あるいは期待や希望を込めて。
信長が本能寺でその生涯を閉じなかったら。
義経が平泉で命を落とさなかったら。
そんなことを想像するのも、雑談程度ならともかく、
作品を作り上げるとなると、
その根拠や、説得力など、
難しいこともあるのだろう。
「そうでも良かったかも」と「荒唐無稽」の間には大きな開きがある。
本書は奥州藤原秀衝が歴史とは異なる決断をしたことから開く、
新たな歴史シュミレーションとのことだが。
歴史的事実自体が、それほどカチッと固定されたものではなく、終始揺