岡谷公二のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ルソーは圧倒的に変おじさん!
この本はルソーの生涯をたどっている伝記的な本で、ルソーの奇妙な絵の秘密に一歩迫れる研究書でもある。そして分かりやすい。
いわゆる芸術家って感じの奇行や言動によってではなく、むしろ善良さや、税関に勤めていた経歴やきっちりした絵から連想されるように真面目さが目立つ人柄だけど、すべてのエピソードがちょっとずつおかしい。
先達の微妙な(チープな)モチーフを使って奇跡的な絵を描く「眠れるジプシー女」。植物園で書いたのに密林体験を偽る一連の密林絵画群。写真を使って書いてもルソーの世界「ジェニエ親父の二輪馬車」。ルソーはどんなものでもルソーの絵にしてしまう。恋に全力で、その絵は -
Posted by ブクログ
ルーセルは20世紀初頭のフランスの作家さんで、本人は大衆に愛される作家になりたかったのに、一部の芸術家(シュールレアリストとか)以外には全く認められず、最期は失意のうちに自殺してしまったのだそうです。でもその後ミシェル・フーコーはじめ、そうそうたる面々に影響を与えたとか。
この小説、前半は、架空のアフリカの王国を舞台に、ある式典の様子が、170数ページに渡って一切の感情を交えずに、ひたすら描写されます。王国の歴史も、出し物の背景にある物語も、最初は全くわからないまま、見たことも聞いたこともない出し物について延々と読まされます。
正直最初はちょっとつらいのですが、情景を頭の中で映像化する -
Posted by ブクログ
小学生の頃からルソーとダリとモジリアニとベンシャーンが大好きだったのですが、中でもルソーは特別な存在でした。
いま思うと、彼を薄々自分自身の分身であるかのように感じていたのかも知れません。実は私も、世間的には絵が上手な方ではありませんでした。それで、抜群に上手い二人の友達の描いた絵をいつも模写・デフォルメするのを得意としていて、その真似した絵が市長賞や知事賞などを何度も受賞しました。
自分の方がはるかにうまいのに、と彼らは悔しがったものです。この体験の後にルソーと出会います。その時は何も知らずに、ただすぐ好きになりました。
今度はじめて絵以外のルソーについて知ることになって驚きました。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ昨日の昼過ぎから読み始めて、今日の夕方まで。
新書一冊にどれだけ時間がかかるんだ!っていうくらい苦戦した。
伊勢について、本当に何も知らない自分に愕然。
そもそもこの本、初心者向けじゃなかったわ。
伊勢の内宮の禰宜(ねぎ)荒木田一門について書いてあるのを、私は「荒木田」一門と読んでいたのだけど、読み進むと荒木田二門が出てきた。
つまり、「荒木田一門」と「荒木田二門」というのがあるらしいのだ。
そもそも伊勢といえば、伊勢神宮。
伊勢神宮といえば皇室の氏神が祀(まつ)られていて、皇室の未婚女性が斎宮になるなど、皇室に縁の深い場所。
その伊勢に、それ以前より朝鮮半島からの渡来人が住んでいて、宗教 -
Posted by ブクログ
古い資料を文語のまま引用しているところや難しい漢字が使われている部分が散見され、読みやすい本とは言えない。ただし、最初は難しかったものの、慣れてくると、著者のほのぼのとした神社巡りの状況が浮かんできて、だんだん楽しくなってくる。古事記や日本書紀に関連する文献を読んだことがある人であれば、読みこなせるだろう。なお、私は三重県出身であるので、本書に登場する地名に馴染みがあった。地元の人ではないと知らない地名も登場し、友人宅の近くにこんな遺跡や謂われがあったのかと驚いた。また、伊勢と出雲の関係や朝鮮との関わりの深さには驚かされる。古代のロマンに浸りながら本書を楽しんだ。
-
Posted by ブクログ
原田マハさん「楽園のカンヴァス 」からの掘り下げ。私的に一言で言うならば、アンリ・ルソーは孤独に強い人間ではないだろうか。
40歳までは税官吏として働いた。妻も子もいた。独学で絵を描き、当時の公募展に出品する。が世間からの酷評を浴びる。子どもの描く絵と罵られ笑われ馬鹿にされた。され続けた。それでも平然と淡々と絵を描き続け、描き続け、描き続けた画家。けれど、後にこの画家から「僕がこれまで受けてきた侮辱」と言うセリフが度々出てくる。この画家はどんな気持ちで絵を描き出品し、嘲笑や罵詈に絶え、それでも描き続けたのか。また情熱的に恋をして2度結婚もするが、なんとなく孤独感が否めない。彼の心は本当はどこに -
Posted by ブクログ
謎の多い、画家ルソーの評伝。
「楽園のカンヴァス」を読み、ルソーについて知りたかったので読んだ。
ルソーという人は、捉えどころのない不思議な人物である。
また、とてもお人好しで純粋である。
その純粋さは、常人には理解し難いほどである。
そして、物事に対してだけでなく女性に対してもとても情熱的である。
純粋で情熱的なその彼が、片思いの恋人に宛てた手紙はなんだかとても切なかった。
ルソーが描く子供は、笑っておらず、大人たちが可愛いと思うような表情はしていない。
子供を可愛いと思うのは、著者の言うように「子供に対する優越感から生まれた大人の偏見」かもしれない。
ルソーはその点において、「子供に対し -
Posted by ブクログ
夢の世界と言われるルソーの楽園の絵。いくつかあるその絵の根源は何であろうか?その問いに、ルソーの生い立ちから整理して、考察する。楽園のカンバスを読んでみると、スローのヤドヴィガに対する恋心が大きなエネルギーとなっていることがテーマになっている。本書では、その彼女の見ている夢を、ルソーが見ているという二重の夢という仮説が面白い。ルソーの絵が持つ、正面性はへたくそではない。密林の絵は夢の中の世界である。その迫りくるリアリズムと、あり得ない構図に、当時は嘲笑の対象であったというのも、絵を見ていると納得できる。確かにのっぺり平面で下手だ。そこから迫りくる感情こそが、ルソーの絵に力を与えているのだという
-
Posted by ブクログ
ルソーの絵が好きなので、彼がどういう人間だったかも知りたくなって読んでみたが、著者が自由に書いており、時系列がときどきおかしかったり、ルソーの周りの人のコメントを難しい表現のまま引用していたり、知っていて当たり前なのか解説がなく当たり前のように使われるわからない言葉があったりして、私にはわかりにくかった。
あと、ルソーが描いた絵の解説の際、その絵がなかったりあったとしても違うページにあったりして見にくかった。
もっとレイアウトを工夫してほしいと思う。
ただ、ルソーがとても純粋無垢で、恋愛にまっすぐで、人がよかったことと、それを周りの人間も著者も愛していることが強く伝わってきて、それを知るこ -
Posted by ブクログ
アンリ・ルソーの描く葉っぱと漆黒が大好きなので。
自分が所有したい、あるいはその中で生きたいと望んだ世界を、誰にも影響されることなくまっすぐに孤独に描き続けた画家。だいぶ変わった人だったんだなぁ。でも、なんだかその「変さ」を支える情熱は、応援したくなる。
描く対象に呪縛された彼を、彼が生きた時代に置いて知ることで、絵を見る際の眼差しがまた一つ豊かになりました。仕上げに当たって、一度に一つの色彩しか使わなかったというのは驚き。
うちの親なんかは「夜中に絵の中から蛇が出てきそうだから家に飾りたいとは思わない」と言ってますが、私はこの、見ていると奥へ奥へと引き込まれそうな絵に、引き続き魅了されます