エドワード・フレンケルのレビュー一覧
-
-
-
Posted by ブクログ
現代数学は現在、多岐にわたり同じ分野の専門家同士でさえ、互いの研究内容を理解することが困難であることが多々あるという。
数学の本質はその自由性にある、という言葉は有名であるがその自由性とはどこから来るのであろうか。
実は、この問題亜は数学だけの問題ではない、正確にいうならば数学だけの問題ではなかった。
20世紀の物理学も同様の問題に直面していた。
この世界を記述できそうなモデルがたくさんあるように見えたからだ。
ある物理現象を記述する方程式は、うまくその現象を予測したが、まったく別のように見える方程式もまた、その現象を正確に予想することができた。ただし、どちらも正しくないことは明らかだった。 -
Posted by ブクログ
青木薫さん翻訳による先端数学に関するサイエンス・ノンフィクション。青木さんは、ワイルズによるフェルマーの最終定理の証明を描いたサイモン・シン『フェルマーの最終定理』、ペレルマンによるポアンカレ予想の証明を描いたマーシャ・ガッセン『完全なる証明』といった最先端の数学者の物語を描いたサイエンス・ノンフィクションの名著を訳してきた。今回も期待大である。
今回の主人公はエドワード・フレンケル、著者でもある。といってもほんとんどの人はその人が誰だか知らないだろう。自分も知らなかった。フレンケル氏は、十分すぎる数学能力がありながら、ペレストロイカ前のソ連においてユダヤ人であるがゆえにモスクワ大学の入学を -
-
Posted by ブクログ
数学の系統を統一するラングランス・プログラムを牽引してきた数学者の半自伝のような数学本。
全問正解したのにMGUに入学させてもらえない(口頭試問で数時間に渡り拷問に近い質問を繰り返され、入学願いの取り下げを余儀なくされる。)旧ソ連でユダヤ人が受けていた迫害のひとつ。15,6で数学への夢を一度粉々にされた少年がバークレー大の教授になるまでのノンフィクションがひとつの軸。数学の系統を統一するラングランスプログラムと物理学への架け橋がもうひとつの軸。
数1で挫折したわたしには後者はほとんどSFだったけど、「難しいけどがまんして」とか「専門家でもわかっている人は少ないから安心して」など、笑える章題 -
-
Posted by ブクログ
古くは朝永振一郎の「物理学とは何だろうか」等、第一線の研究者が記した一般向けの学術解説書は数多あるが、物体を対象としない純粋抽象的理論の体系である数学の現在進行中の研究内容をかみ砕いた言葉でわかりやすく説明したものは、そう多くはないだろう。
量子論や超ひも理論といった物理学の理論が、元を質せば数学における成果(のある意味簡略版)であることは余り知られていないと思われる。
純粋理論を突き詰めた数学と宇宙の成り立ちを示す物理学とが同じ理論に行き着くことは、大きな驚異でもあるが、至極納得的でもある。我々が暮らす宇宙は、極めて合理的な存在基盤に立つということだ。加えて、人間の思考が(極く選ばれた人 -
Posted by ブクログ
数学の様々な最先端分野の知見を橋渡しして研究しようとするラングランズプログラムに関わっている著者が、自分の研究者としての生い立ちと、そのプロジェクトの概要を伝える本。正直なところ、数学の先端分野を理解するには専門書を何冊も読んでも一般読者には厳しいです。著者もそこは割り切っていて、相当かみ砕いて解説していますが、それでも何のことかチンプンカンプンなページはいっぱいありました。ただ全く異なる分野を突き詰めると、何故か共通する概念に辿り着くという体験を何とか伝えようとする著者の熱意や、「もしかしたら数学のすべての分野を律する概念があるんじゃないか。細分化された先端分野を統一して記述できるのではない
-
-
Posted by ブクログ
数学好きに言わせると数式とはとてもエレガントで美しいものらしい。そんな筋金入りの数学好き、エドワード・フレンケル氏の著書、数学界の一大事業といわれるラングランズ・プログラムにおいて、中心的な役割を果たしているメンバーの一人である。
もともと物理に興味があった少年時代のフレンケル氏が、数学者を目指すようになったきっかけや、大学入試の際に受けた人種差別、ソ連からアメリカに移り住むこととなった経緯、そして現在取り組んでいるラングランズ・プログラムについてなど、特に数学に興味がある人には盛りだくさんな内容となっている。
今まで何冊か数学に関するノンフィクションは読んだが、それらに比べて本作は現役の