松本利秋のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
冷戦構造が終焉して30年がたった今、ポスト冷戦期のグローバル化した世界を支えたアメリカによる平和(パックス・アメリカーナ)と自由主義経済秩序が揺らぎ、中国の台頭を始めとする混乱。アジアで力の空白が懸念される中で、これから数十年後のアジアで日本の生き残りの可能性を探ることが本書の目的、と冒頭で著者は述べている。
現在の日本周辺の状況をかなり詳しく紹介しながら、日本の外交・防衛政策の今後の方向性を示しています。日本の政治のことでありながら、知らない情報も多く、地政学の基礎知識とともに、かなり詳細、具体的な内容であり、非常に本格的です。
地政学というものに最近興味が出てきたのですが、歴史や地理などを学ぶ理由は、それを活かして将来に備えるためだと思います。今後とも引き続き学んでいきたい内容であると感じます。
▼「地政学」という言葉は地理学と政治学を合わせた造語で、その内容は地理と政治の知識を駆使して、過去における人類の壮大な歴史の動態を分析・研究して論ずるもの
▼人間集団が生き残る基本原則・侵略とそれに対する防衛・環境に自分自身を会わせて変化していく能力
▼さまざまな要因を繋げて出来上がるストーリーを、地理学では「景観」と呼ぶ。地図などで地表の形態を分析し、その構造や変化を読み取っていく。国土の性格を表す。「景観」とは当然のことながら、その地に住む人間生態を読み解く基本となるものである。「立地」と「景観」の地理学的概念は、地政学を知るための根幹ともいうべき要素
▼日本の立ち位置
・海洋を通じて世界と繋がり、海洋貿易が日本を支える大きな要素であり、豊富な魚介類がとれる実に豊かな海に囲まれている。・日本近海の海底にはメタンハイドレードやレアアース、天然ガス、石油までもが存在。海の資源に恵まれた海洋国家であることは地図を見れば実感できる・このような条件から地政学的に言えば、当然、シーパワー国家と位置付けられるが、逆に見れば島国国家の日本人は狭い国土の中で暮らすしかなく、大陸の住民のように徒歩で異郷に移れるわけではない。逃げ場がなく、争えば互いに滅びるしかない。そのような諦観が日本文化の基礎をなしている
・伝統的に日本人は、外からの文化を直接受け入れる寛容さがなく、視野狭窄な部分もある。
・悪く言えば島国根性と表現されているが、基本的には「和」を尊び大陸国家に比較すれば、争いごとを好まない気質があることは歴史が証明している。
▼日本はあくまでも海洋国家らしく大陸には直接関与することなしに、オフショア・バランシングに勤しみ、その一環としてリムランドである朝鮮半島をバックアップすることで、大陸からの膨張圧力を殺いでヒンターランドの役割に徹底していくことが、今後の戦略の在り方であろう。
▼日本の戦略的思考の根幹をなすのは、地政学に基づいた基本的な歴史の流れを明確に把握して対話を成立させ、案件を解決していくための選択肢をできるだけ広げ、戦略的な対話の方法を考えるということに尽きるだろう。
<目次>
はじめに
第1章 マクロな視点でコロナ後の世界の動向を分析する地政学の基本
第2章 中国経済に依存した悲劇
第3章 地政学から見た朝鮮半島ー日本の戦略的視点とは
第4章 海から見た日本の生き残り戦略
第5章 新段階に入った日本ー地政学的立ち位置とクアッドの舞台 -
Posted by ブクログ
2021年に出されたものであるも、まだまだ学ぶべきものがある本であった。
そもそも日本は勿論自由で法の下による民主主義国家であるのだか、どこか国家戦略的な話しとなると、何処かアメリカ追従で、独自路線が出せていないところが未だ感じられる。
変動のそう起こらない地理的要因から、政治外交を分析していくという地政学という研究は今日によく聴かれることになるが、果たして日本の政治家は日本の重要な位置を理解して、長期的視点に立ち、本来の国益を理解しているのであろうか。
本書にとっては安倍元首相が理解していたところが垣間見えるが、それよりこれからもランドパワーとして海洋進出してくる中国や、ウクライナ侵攻を続けるロシアは、明らかに自身の立ち位置をある意味よく理解していよう。
また北極の氷が溶けることから、そこに産まれる新たな北極海における新たな地政学的地殻変動も予想しており、日本は果たしてその重要性を認識して、主導権を取れるのであろうか。 -
Posted by ブクログ
日本では終戦記念日を8月15日としており、同日を含め原子爆弾が投下された8月6日や9日に黙祷を捧げている。日本人の中にこの8月15日を終戦と位置付けた決定的な出来事は昭和天皇による玉音放送であり、誰もが一度は耳にしたことがあるであろう「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」がラジオから全国民に向けて放送された日である。アジア諸国から太平洋までを広く戦禍に陥れたこの戦争では、中国をはじめとして、現在のフィリピン、マレーシア、インドネシア、ミャンマーなど多くの国々・地域に日本軍が展開し既存の西洋諸国による植民支配を終了させると共に、日本が新たにこれら地域の支配者として君臨しようとした。結果的には東南アジアへの勢力拡大を狙うアメリカの反感を買ったことに端を発し、真珠湾攻撃に至る過程において、日米両国の外交交渉はハルノートに代表されるアメリカの巧みな外交戦略によりまんまと失敗に終わってしまう。この辺りの歴史の読み方には、日本の立場から見た「やむを得ない」論調や、「西欧諸国に代わり利益を得ようとする思惑」、「中国進出を狙うアメリカとの衝突」など様々な見方ができるものの、戦争に至った事実と日本が敗戦した結果は変わらない。
本書はこの敗戦からなる日本人の意識、特に諸外国の8月15日に対する受け止め方の違いからスタートする。大きな事件としては、同盟を組んでいたソ連(現在のロシア)が同盟を破棄し、この15日を目前に日本へ侵攻してきた事である。当然満州には日本軍および日本国民はこの時点でおり戦闘になるが、既に大勢の決していた日本に国境から流れ込んでくるロシア軍を押し戻す力など残っていない。ソ連は日本が敗戦してしまうと、対日本戦で影響力を及ぼすことができず最終的に戦後の日本を支配することができないのを恐れて、攻め込んできたのである。また東南アジア諸外国にとっての真の意味での終戦は、日本軍撤退後に西欧諸国の支配下から脱却するために一部日本の残勢力と共に戦い独立を勝ち取るまでの時間が含まれると言って良い。韓国北朝鮮は日本から独立を勝ち取った日は日本の終戦と同じタイミング。アメリカやイギリスの視点からは戦艦ミズーリ上で日本が調印した日。この様に世界が見る終戦とは各々の事情により異なるのは当然だ。これら日付と出来事の違いを、その背景を踏まえて解説していくのが本書の内容である。
更に加えて、現在の憲法改正議論にまで至る、戦後のGHQ支配の構造やアメリカの思惑などを含め、太平洋戦争全体を俯瞰する意味では分かりやすくまとめられている本である。 -
Posted by ブクログ
今人気の「サクッとわかる ビジネス教養 地政学」と同じような内容です。
この本は、タイトルのとおり『逆さ地図』がポイントです。
各国の位置関係に新たな発見がありました。
中国が下で日本が上にくるようにして中国から見ると、日本列島やフィリピンが覆いかぶさっていて、なんとも邪魔な存在だということが良く分かります。
ヨーロッパでは、ヨーロッパを制したナポレオンもヒトラーもロシアに攻め込んでいます。
ロシアを征服すれば肥沃な土地が得られ、陸路でアジアに通じることができる経済的メリットが見込めるからです。
これを防ぐために防波堤として、チェコ、ポーランド、ハンガリー、さらに東ドイツまでがソビエト連邦の勢力下に置かれていました。
隣国が強く干渉してくるのですから、なかなか民主化ができなかったのも仕方ないですね。
今でもウクライナが欧州とロシアの双方にとって重要な位置にあり、各国の思惑によって政治的混乱がしばらく続きそうです。
パソコンで「逆さ地図」を検索して、日本列島を別角度から眺めると、きっと何か新しい発見がありますよ♪ -
Posted by ブクログ
目からウロコとは、この本を読んで感じることでしょうか。私が外国と関係するニュースに接する場合、昔から見慣れている日本を中心とした世界地図を頭に思い浮かべて捉えてしまいます。
日本中心の地図を見ていると、なぜ、中国や韓国が尖閣諸島や魚釣島のことを話題にしているのかが見えてきません。せいぜい、海底油田の資源を欲しいからだろう、という誰かの解説が印象に残ってしまいます。
ところが、中国を中心とした地図(この本のタイトルである逆さ地図)で見てみると、沖縄や尖閣諸島の重要性が理解できるような気がします。同様の考え方で、現在、ロシアで起きている問題も、彼らの地域を中心にした「逆さ地図」で見ると、違って見えてくるのが私にとっての発見でした。
特に、p29にあったロシア側から見た中国、韓国、日本の地図を見て、日清戦争後に三国干渉で返却することになった「遼東半島」の戦略的重要性がよくわかりました。
地図が好きで昔から何度も見てきましたが、いつも見慣れた地図ばかりで、それを反対から見たことがなかった私にとっては、この本は地図の新たな見方を示してくれた、記念すべき本でした。この本の著者である松本氏には、この考え方を更に深めて、続編を書いてほしいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・中国が地図を逆さまに見るようになれば、自国の本当の姿が良く見えるようになる、周辺国はその動きに対抗しようと躍起になる(p15)
・アラスカはかつてロシア領、クリミア半島を巡る戦争で経済的に疲弊し、1867年に720万ドルでアメリカに売却した(p19)
・中国の海軍は、地図上に日本列島から台湾、フィリピン、南シナ海にいたる線を引き、「第一列島線」とした、さらに、日本の本州、小笠原諸島、グアム、ニューギニアを結んだ線を、第二列島線とした(p25)
・行詰ったウクライナ政府に対して、ロシア政府が財政改革なしの財政支援と天然ガス等のエネルギー値下げを提示したので、2010年のウクライナ大統領選では、親ロシア派のヤヌコビッチが復活当選した(p40)
・旧ソ連の、バルト三国を含む、東欧7カ国のNATO加盟が2004年に実現した、なのでウクライナ問題はロシアとしては絶対に譲れない(p50)
・現在では、ロシアの輸出の75%は、石油と天然ガスで占められている。一方で、ロシア工業は高い労働コストと低い生産性のために国際競争力がない(p55)
・仏領インドシナとよばれた、ベトナム、ラオス、カンボジアは、日本が敗退した後にフランスから独立を宣言したが、フランスは再度植民地化を図った(p69)
・第二次安倍内閣発足直後の2012年12月27日付で発表された「アジアの民主主義防護のダイアモンド」という論文は、中国を名指しで批判した。日本のメディアはほとんど紹介していない(p82)
・日本のANZUKグループへの参加が実現されれば、安倍論文の言う「ダイヤモンド」が事実上結成される(p95)
・第一次世界大戦でオスマン帝国が敗退した戦後処理は、「サイクス・ピコ協定」という密約(フランス、イギリス、ロシア)によって、国境線が引かれ、シリア、レバノン、イラク、ヨルダンに分割された。(p118)
・現在のイスラム国は、シリアとイラクの国境をなくし、サイクス・ピコ条約を事実上、反故した形となっている。イスラム法による中東の新秩序成立を目指してい
るからだろう(p125)
・モスルに居座った武装集団は、2014年6月29日に、「イラク・シリアのイスラム国」から、「イスラム国」へと名称をかえて、国家樹立を宣言した、7月3日にはシリア最大のオマール油田を占拠した(p125)
・15-29歳の男性人口が全男性人口の30%を超えた時、既存の社会では能力を発揮できる場が極端に少なくなるので、若者に残された道は、海外移住、対外侵略、革命、テロ、内戦となる(p139)
・ベトナムとラオス、カンボジアの国境線に、安南山脈が走っている、この両者で文化が異なる。箸食と手食のように(p145)
・20世紀初頭には、イギリス領は、ビルマ、マレー(含むシンガポール)、フランス領のインドシナ(ベトナム、ラオス、カンボジア)、アメリカ領フィリピン、オランダ領東インド(インドネシア)であり、4分割されていて、独立国はタイのみ(p149)
・エリート達は自分達の主張を宗主国に伝えるために宗主国の言語を利用した、こうしてインドネシア語にはオランダ語、マレー語・ビルマ語には英語、ラオス語にはフランス語が入り込んだ(p150)
・タイは、1867-1909年まで6回にわたって、イギリスとフランスに領土を割譲して、領土はほぼ半減している(p164)
・2003年時点でアメリカ陸軍には、155の戦闘大隊があるが、実戦従事しているのは、2001年10月以前は17だったが、2003年9月には、98(p201)
2015年7月19日作成