作品は1850年に発表されたものだが、舞台はさらに200年も遡ったアメリカのニューイングランド。
そこはピューリタンの町で、当然ながら厳格な信仰が守られているコミュニティだ。
タイトルの緋文字とは、そこで姦通の罪を犯した女性への罰として、その衣服の胸のところに常に着けるように定められた緋色のAの文字
...続きを読むのこと。
その女性は、町で尊敬を集めている牧師と関係を持ち子をなしてしまうが、彼女には夫がいたため、罪とされた。一方牧師の方はその関係がバレずにいた。
後から町にやってきた夫は、医師に身をやつし町の中で一定の位置に居座るようになるが、二人に執拗に復讐をしようとしていく。
キリスト教をベースにしているため、罪とか罰という観念が、現代から見ると大きく異なっている気もする。正直、そこまで苦しまなくとも、とさえ。
しかしそれが当時の空気感であり、それがいわゆる「世間」であったということを思えば、一概に昔話にしてしまうこともできない。
よくも悪くも、一定の規律やルールを定めずにはおれない、そしてそれに縛られることを自ら望むのが人間ということか。
また、物語の後半でも描かれるのだが、罰を受けるがゆえに聖性を帯びてくるという展開も、キリスト教的なものと言えまいか。
しかしこの論理は極めて危険なものであるということは、歴史が示しているとおり。それをあえて19世紀半ばに描くという点は、もう少し深掘りできることかもしれない。