高谷清のレビュー一覧
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とても優しい視点を感じる本。
ただ優しいだけではなくて息を飲むような重い障害に、毅然と対処しようとする優しさ。
重障害を抱え、自らの身体能力ではただ生存することさえ難しい人たち。神経や筋肉が発達しないために動くことはおろか姿勢を保持することもできず、呼吸をすることですら体力を消耗する。思考や感覚が朧ろで外界を捉えられず、すべての刺激に混乱と恐怖をきたす。
そういう人たちにとって、生きているとはどういうことなのか。彼らを生かしているとはどういうことなのかを静かに、真摯に考えている。
障害とは、人類が脈々と子孫を残し進化したりしなかったり無数の取捨選択の上での試作品なのだ、と著者は言っています -
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重い障害を生きるということ 高谷清 岩波新書
障害の問題に関係なく皆に読んでもらいたい
内容の濃い素晴らしい本だし咀嚼されていて分り易い
医者である前に人間として活きている人が
この殺伐とした競争原理至上主義の現代社会にもいたのだ
特に感銘するのは管理による強圧的な恐怖で
人間をつなげて社会を育てようとすることへの疑問視である
強度の不快を避け快の部分で自分を認識していくべきだとし
2次元3次元という空間的問題や
機械的時間と意識上の時間の問題にからんで
過去・現在・未来に付いての具体的な考察
過去が過去にあるのではなく現在にある過去
今にある今・今に存在する未来と時間を捉える
記憶も、今 -
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重い身体障害と重い精神発達遅滞を併せ持った重症心身障害児(者)の施設で働く医師が、障害者と接しながら人間や社会、生きるということの意味について思索する。脳も感覚器官も機能していなくても、筋肉の硬直や分泌など動きうる体のあらゆる反応で、重症心身障害者たちがよりよく生きようとする姿を通し、障害者も健常者と同じく自ら輝きたいと願う人格をもっており、互いにその人格を認め合うことが、あるべき人間や社会のあり方であるという。こういう世界があることを知らなければ、想像のしようもない人間についての思念であった。そういった著者の思索、また、重症心身障害者への社会の対応の歴史、障害者の症状や療育の実態などもわかり
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重要な本だと思う。偉い。
うーん、現場の医者であるということはたいへんなのだな、とか。とにかく貴重な現場の声。特におそらく「超重症児」とかのデータは重要なのだろうと思う。最後の5章の4の部分、もっと書きたかったけど書けなかったか、書くことがなかったのかどうなんだろう。夏に出した「パーソン論」批判の論文なんか見た印象ではもっと書くべきことをもっている方のような気がするけどな。
80年代のNICUの普及とその影響に対する評価とかもう少しお聞きしたかったところ。ていうかもっと高谷先生本人の視点に近づけた方がよい。タイトルは『重い障害を診るということ』の方が適切だったのではないか。ここ -
購入済み
昔から
この本が発売されて、間もない頃に紙面で買いました。折り目がつくほどに…。この本を見て自分の障害と重ね合わせ、色々参考になることばかりでした。
そして、電子でも読めることを知り、本でなく、電子に切り替えたくなり、再購入。これで綺麗な状態で、読みやすくなりました。今後も愛読書です -
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重度障害者への医療福祉に長年従事し、施設設立にも携わった医師による手記。
以下、本書の「はじめに」より。
びわこ学園では、心身ともに重い障害のある子や成人が生活し、必要な医療と介護を受けている。
障害の程度は、身体的には「ねたきり」の人が多く、知能的には「ほとんどなにもわからない」と言ってもよい状態の人も多い。
見学に来られる方は、あまりの障害の重さに息を詰め、言葉なく立ち尽くされていることがある。
それは、その人たちの人生で、出会ったことも想像したこともない姿ではないかと思うのである。
こころに立ち現れてくる気持ちを自分でもつかめず、その気持ちをどう表現したらよいかわからず、感想や意見を -
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重症心身障害児施設に勤務している医師によって執筆された、タイトル通り重い障害をもった子が生きるとはどういうことなのかを論じた本。
ネットでこの本のレビューを見ると、某知事が物議を醸す発言をしたこととこの本の内容を結びつけ、知事を批判している方が多いが、私も正直なところ、本書に記されている子達の症状を読み始めたところ「知事がそう思ってしまうのも無理も無いのではないか」と感じていた。読み終えた今も、「命は大切な物」という倫理を分かってはいるのだが、これが正しいあり方なのか、自分がこのような子を授かったときにはどうするだろうかと、心のそこから納得できないでいる。
とはいえ、患者とその家族と密接 -
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「障害」の話である。
別の本で読んだときに「障害」とは何かを調べたのだが「病気」との違いは、持続性にあるという。障害は長期的または生涯にわたることが多いのに対し、病気は一時的なものも多く、病気は治療によって回復することが期待されるが、障害はそうではない。そのため、障害では、治療よりも支援が重視される。
本書に登場するのは寝起きもできないような重度障害の方で、生まれて数年で亡くなってしまう人もいる。そうした障害者を介護する家族や、施設の人たちの現場のルポが本書。不思議と暗い気持ちにはならないが、相当な苦労が想像される。
― 福祉は、社会復帰に役立ち、社会への見返りが得られる人が対象であり、 -
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重い障害を生きることはどういうことなのか。
また彼らをとりまく環境の変化など、福祉の歴史についても書かれている。
近江学園の創設者である糸賀一雄の「どのように重い障害があろうと、人間は同じである」という言葉は一見当たり前のことのようだが、本当にこの言葉の意味を理解できているのか私自身、自信が持てない。
頭で分かっていても体験的にはゼロであるがゆえ、実際に障害者と接した時に本当の意味で理解できるのではないかと思う。
糸賀氏は障害者であれ人間は同じということを、体験的に嫌というほど感じさせられたのではないかと思う。
それゆえ、この言葉には言葉以上の重みを感じた。
障害者にたいする理解がもっとも -
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ネタバレ私も小児科医として、マイノリティの中のマイノリティが、いろいろな事情で(医学的ハイケアの必要性、家族の問題、高齢化など)自宅で過ごすことが出来ない人たちと、その子達のために奮闘する療育センターのスタッフをを知っているので、この領域の医師が、「岩波新書」に書を著したことに敬意を表する。(多いのは、マイナー出版社からの自費出版が多いので)
重心と呼ばれる子達にも宿る感情や感覚を医師として鋭く観察し、さらに全国の療育施設の成り立ちの歴史をわかりやすく説明している。
障害のある子を守るとする、わりとありきたりのお涙頂戴的文体とは一線を画した良著である。